見出し画像

3Dプリント面を仕上げる

推しの表情差分お面たくさん作りたい。
9年もお面作りやってるのでそれなりに作業は慣れてますが、やはり削ったり盛ったりを繰り返すのは手間がかかる。
この仕事が好きなのでそれほど苦痛には感じませんが、世間でいうところの3K仕事です。

私だってできるだけ楽にお面作りたい…。

ということで最近よく聞く「3Dプリンタで簡単にお面作れるよ!」というのを本当なのか試してみます。

まずは出来たものがこちら。

反省点はいろいろありますが、3Dプリント面を初めて作ったにしては良い出来なのではないでしょうか。

めちゃくちゃ頑張って作ったので、作業途中の記録があまりありませんが頑張って思い出していきます…。


◆データ作り

↓モデリングソフトの導入~出力の詳細は前回の記事をご覧ください。

今回は仕上げまでを想定したデータを新たに作ります。
ちょうどサンプル提出を求められていた案件があったのでアニメ面を製作します。(めちゃくちゃお待たせしてました…申し訳ありません…。)

blenderのスカルプトで捏ねます。

……。
……。
……。

アニメ面作るの難しくない?

そして掲載順逆では?と思うじゃん?
正しいんだなこれが…。

アホなので負荷がかかる処理を間違えてやって、毎データ吹っ飛ばしてるんですよ。悲しいなぁ。

ここから何かやるごとに新規保存することを覚えます…。

なんとかそれっぽくなってきました。

先に眼球や口のパーツを置いておいた方がイメージをつかみやすくて造形しやすいことに気づきました。
眼球はそのままの球を使っていますが、口はX方向を縮小してます。

メイクアップ時のバランス確認。

細かい顔のアタリは頂点ペイント機能で確認するのが楽です。
ctrlキーを押しながらだと色が強制的に黒になるので、メインの色を白にすると簡単に書き換えができます。
(消しゴムのような機能が見当たらないので不要な黒を白で打ち消してます。)

テスト印刷。

高さ80mmくらいならアナログで書き込みもできます。
何か所か修正。

顔面は完成。

最初に完成品を見ていただいたのでお分かりいただけたかと思いますが、後頭部の結髪をしたくなかったので、髪モデリングの練習を兼ねて硬質髪にします。

参考にした動画はこちら。

3番目に紹介されてる四角柱の変形で作っていきます。

難しすぎて何もわからないですが、私は将来的に推しのMMDも作りたいので髪モデリングは
死んでも習得しなければなりません。
なんもわからん…。
残機を1減らして何とか理解しました。
髪の筋が内側まで影響すると嫌なので内側は普通の後頭部を作って接合してます。(伏線①)

モデリングを始めた当初は「頂点一個一個動かすのとか無理だわ~w」とか思ってましたが嫌でもそうなります。
というかきちんと理解すれば頂点動かす方が楽まである。

次に髪束を作ります。

パイナップルではありません。後頭部の毛束です。

必死すぎてモデリング中のスクショがありませんでした。
このテスト印刷も結局気に入らずにデータ修正して印刷しなおしてます。
毛先のカーブ修正などは先ほどの動画で紹介されている「プロポーショナル編集」を使うことで楽にできました。(28:45あたり)

スクショが全くなかったので、耳の作り方イラストです。

これで全パーツできました。
あとは差分切り取りを駆使して、印刷後に組み立てられるようにします。

今回、前後分割の全頭面になるので蝶番とパッチン錠で固定します。
部品の採寸して装着部を整えます。
ネジ穴も一緒に開けておけばよかった気もしますが、面倒だったので後ほどドリルで開けました。

全パーツ印刷(伏線②)

細かく分割してしまったせいか前回の出力とは違い、印刷トラブルがあったので設定を変更したりしましたが、何とか出力することに成功しました。
とりあえず今回もPLAです。


◆表面処理

次は塗装をするために表面処理をしていきます。
天面底面など、パテでの表面処理が大変そうなところはハンダで均します。

塗装面を綺麗にするためにパテ盛り。(伏線③)
作業効率を考えるとポリパテなのですが、個人的に食いつきを信用してないので1層目はラッカーパテです。

追記:後日「表面処理に適切なパテは何か」を簡単に検証した結果、ポリパテが一番よさそうでした。(↓ツイート参照)

他の方の製作記で「積層の隙間から結露がしみて塗膜がダメになった」というのを見かけたので、裏面は薄くFRPを積層しました。

あと下唇の厚みが薄かったので、裏側をエポパテで埋めました。

その後はポリパテ。

パテを盛る→水研ぎ→サフ吹き→パテ………を繰り返す。

!!!ここで伏線①②③の回収です!!!


私の慢心でトラブルが発生し、当初予定していた期日に間に合わず提出先にご迷惑をおかけする事態になりました。(本当に申し訳ありませんでした。)

①後頭部パーツを筋あり(外側)と筋なし(内側)で接合した。
重さを気にして中身を強度ギリギリの密度にしました。
何が問題だったか…それは水研ぎです。
想定より水がしみる&軽量のためにあけた空間に水が留まるということが起きて、時間をかけてゆっくりお漏らしするようになりました…。

解決法→空研ぎにする。他のパーツからのお漏らしは見かけなかったのでとりあえずは後頭部のみ。

②印刷解像度が粗い。
以前に無駄に頂点数を増やしすぎたせいでPCが固まりまくったのがトラウマになり必要以上に頂点数を減らしてしまいました。

解決法→頂点数を増やす。そもそも以前にPCが重くなった原因が多大な頂点数でスカルプト編集をしたからであり、適切な頂点数での頂点編集は全く重くない。印刷前に頂点数を増やすだけなら余裕すぎるので、このあたりをきちんと理解しよう。
(後日、2作目を設計してる過程で感じましたが、これは頂点数を増やしたのが原因というよりも、何らかのモディファイヤを実行しないまま設計しようとした結果な気がしてきました。後から戻すのが難しいのでついつい実行せずに保留のままにしてしまいますが、超高性能なPCなどを使ってないのなら元データを保存しておいて実行してから作業というのがよさそうです。)

③パテの常温硬化を甘く見ていた。
普段のFRP作業ではパテを盛ってすぐに乾燥機に入れていたので、正確な時間が分かりませんでした…。(乾燥機にPLAを入れると溶けます)
また、気温が安定していない時期で予想より寒かったこともあります。

解決法→パテの硬化は余裕を見て作業しよう。

お許しいただいたので作業を再開します。(ありがとうございます。)


◆小物作り

髪飾りをFusion360で作ります。

押し出すときに面倒だからといろいろな線を消してますね…。
大きさを変えて組み合わせ。微妙に積層後消えてないけど許してください…。
バレッタに貼り付けて完成。

次は舌パーツを作ります。
いつもは削り出したサンペルカに合皮を貼っていましたが、塗装が思ったような感じにならなかったのでこれも3Dプリントで製作してみます。

舌の製作工程。あとから描くのきついからスクショ残してくれマジで頼む。
印刷。お面のFRP裏打ちは薄く均等になっていたのでそれほど問題なく合いました。
塗装。えっちですね…。

最後にリボンの製作。
裁縫は得意分野ではないので何とかしたいですね…。

ほしい柄が見つからなかったので組み合わせて縫い付け。
ボンドで貼る方がよかったのかな…。裁縫も要勉強。

細かいパーツは完成です。


◆仕上げ

いつもの作業と同じです。
同時進行でやっているので写真の内容が少し前後したりしますがご了承ください。

肌塗装。いつものごとくツヤ絶対殺すマン仕様です。
舌パーツはえっちなので半ツヤです。
虹彩データの作成。クリスタで初めて描きましたが、アイビスで十分です。
機能がシンプルな分、アイビスの方が楽まであります…。
前髪のベースは5mmサンペルカで磁石留め。
まつ毛は0.5mmゴムシート切り出し。この後に茶色に塗装してます。

硬質髪は初めて作ったのでここが最大の難関です。
悩んでもどうにもならんので何とかなってくれと祈ります。

ベースカラー単色塗です。

色は光の反射で認識できるのですが素材によって反射加減が違うので、液状の塗料が毛束と同じ色だからといって塗装したものが同じになるわけではないです。
なので複数の色の塗料を吹き付けて、実際に乾燥した塗膜と見比べるのがよいです。(といっても環境光によっても変わったりします…私はカメラにわかなのでこのへんは✝強い人✝に聞いて下さい。)

完全に同じとは言えませんが同系統にはなったのではないでしょうか…。

DCMカーマブランドのラッカースプレー4色(ライトブラウン/ブラウン/レッド/イエロー)で塗装しました。
ライトブラウンとかいう珍しい色のおかげでだいぶ助かりました。
しかも大容量。ありがたい…。

そして実は…

結髪したら耳の長さ短くね…?


提出直前に耳サイズ変更して印刷し直し!!!!!

3Dプリントのいいところですよね…即座にサイズ変更して印刷できるの…。
以前の低解像度の失敗を踏まえて頂点数を増やして低ピッチで印刷したので表面処理に時間はかかりませんでした。


◆完成

何とか完成しました。
気長に待って下さってありがとうございました…最初はアナログ造形で製作するとか言ってたのに…。


◆反省点等

製作過程での反省点は伏線のあたりで判明しているので、こちらは主に完成後の話になります。

①鼻の位置が高いデザインに慣れてないので要練習。
最近流行ってるものが面長気味な輪郭な上に鼻の位置が高い傾向にあるように感じます。
現実的な形状ではないので、簡単に解決するなら鼻の位置を下げるか輪郭を丸めるかなのですが、できるだけ見栄えのいいものを作れるように解決策を探り努力したいです。

②塗装結髪は難しい。
毛束での製作だと耐久面が気になったりするので劣化しやすい部分などは硬質パーツで何とかならないかと思ったのですが、色を合わせるのがかなり大変なので、異なる素材で作るのはやめた方がいいです。
すべて同一素材ならいいかも。(今回、前髪まで硬質にするのは重量的に厳しいと判断してこのような結果になりました。総重量2kgくらいです。)
これから耳キャラの依頼が増えるのかな…と震えてるので、ベストな製作方法を考えます。

③広角気味に完成してしまった感がある。
想定より後頭部が小さく、顔面部分が大きくなってしまいました。
といっても、顔面の大きさは数値で計っていたので単純な大小の話ではないのですが…。

このあたりはPCでの物の見え方と、現実での物の見え方の違いが原因です。
カメラの話が絡んでくるのですが人間の肉眼に近いのが焦点距離50mmらしく、モデリングソフト上のデフォルト焦点距離も50mmになっています。
オブジェクトが消えるなどの対処法を調べているときに「モデリングソフトの焦点距離は150mmくらいがいい」という意見を見つけ、嘘だろ…と思いスルーしたのですが今思えば正しいアドバイスだったかもしれません…。
(後日、2作目を設計して印刷した感触だと70mmくらいがいいかもしれません。150mmというのは戦艦を設計していた方の意見だったので、スケールの違いからくるものかと思います。実際の出力サイズと画面内のモデルサイズの差異で変わるかはわかりませんが、私は10%のサイズで設計して、印刷時に1000%に直してお面のサイズにしています。)

といっても、私がもともと製作してたアナログ面がどちらかというと望遠気味な作りだった気もするので、その対比で気になるというのもあるかもしれません。
あとは、人物メインの撮影は望遠気味なことが多いそうなので、ちょっと広角気味の方がなんか…こう…ちょうどいい感じになるんじゃないでしょうか…。
(このあたりのバランスを探る必要があるので撮影の勉強もしなきゃいけないなと古より感じております…。)

今回は前髪が毛束の結髪だったことにより最終的な調整ができましたが、この部分も3Dパーツだったら印刷し直しだったかもしれません…。
色々と奥が深いです…。


…ということで「3Dプリンタお面を仕上げる」は以上です。
アニメ面データの作成から仕上げまで6週間でした。
感想としては

3Dプリンタでお面製作って楽すぎない?????


もう私も3Dプリンタでお面作るわ、そうするわという感じです。
とはいえ、問題はまだまだあるので色々勉強していきたいと思います。
ただ楽だから3Dにするということではなく、アナログだと手間のかかる細かい設計作業を比較的簡単に行うことができるようになり、表現の幅が広がるというのが大きなメリットです。

個人製作で導入を検討されている方についてはモデリングデータを作成できるかと、プリント設定をできるかが判断の基準になってきますが得意不得意もありますので、簡単におすすめできないなと思いました。
データだけ作成して出力は依頼するというのも可能ですが、本印刷3回ほどで安価な大型プリンタが買えますし、コストを気にしてテスト印刷をしないというのはかなりの博打かと思います。
最近はホームセンターでも3Dプリンタを置いているところがあったりするので、どうしても気になるのであればそういったところで借りてみるのもいいのではないでしょうか。
(700円/1hというところがあったので高さ50mmのテスト印刷をするなら、1400円程度かと思います。)

長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。
今回は硬質結髪など特殊なものを作って自分の首を絞めてしまった感じがあるので、次回はもう少しライトなものを作りたいと思います。
あ、あとは撮影者さんによく言われる印刷の黒は黒じゃない問題があるので、眼球パーツを造形物で作って塗装するのもチャレンジしたいですね…。
ご期待があるかはわかりませんが、これからも精進していきますのでよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?