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佐藤先生に教わったこと-#18

このnoteは、星功基が2003年〜2007年に慶應義塾大学佐藤雅彦研究室に在籍していたころに佐藤先生に教わったことを思い出しながら書いているものです。

先生は、タレント広告が苦手というか、あまり好んでいなかったそうです。
80年代から90年代、記号的なタレント+海外ロケの広告がたくさんあったこともそうでしょうし、先生自身がタレント広告の方法論を見出せていなかったということもあったみたいです。
でもあるときタレント広告の方法論を見つけ、野村宏伸さんでと先にタレントが決まっていたCMで、その方法論を使ったそうです。


「あるとき、オードリー・ヘップバーン主演の昼下がりの情事というビリー・ワイルダー監督の映画をみていたんですね。」
「恋模様を描くコメディです。」
「もうそこで展開されることのなんと都合のよいこと。ああ、そこの四つ角で曲がったら鉢合わせちゃう〜っていうギリギリのところで呼びとめられたり、一方がホテルのドアを閉めた途端、もう一方のホテルのドアが開いたり。もうそんなことの連続なんですよ。」
「でも、映画をみているとき、実は僕も含め多くの観客は、そんな都合の良さは本筋では全く気にすることはなく、展開していく画面に没入していったんです。」
「不思議だなぁ、普通なら都合良すぎるだろってシラけたりツッコミたくなる展開なんですが、なぜそれが成立するかというと。」
「それがタレントの力なのではないかと思いました。オードリー・ヘップバーンの力ですね。」
「もうオードリーがこれをするからああそうでしょう、これをするからうんそうだろう、とみんな納得して楽しめる。」
「そういう力のある人が、それがタレントだと。」
「僕はこの現象を「昼下がりの情事」と名付け、タレントCMに応用していきました。」
「野村宏伸さんに先生に扮してもらったこのCMもその方法論でつくりました。」
「では、一度、そのCMをみてください。」


野村宏伸さんのCMではもう1つ重要な話(映像編集の方法論)があります。

それは、「まばたきの編集」。
小学校の先生に扮する野村宏伸さんが、学校にいるシーンから文豪ミニを売っているお店に一気に転じるシーンにて。24分の1か2のフレーム分、つまりほんの一瞬、真っ暗な画面をいれて「カシャ」っというSEを小さくいれる。するとそれは、視聴者に強制的にまばたきをしてもらうのとほぼ同じ効果が発生し、急激な場面転換を受け入れやすくなる、というものです。15秒や30秒しかないテレビCMでは、急激な場面展開にも方法論が必要。このような人間の認知構造への透徹したまなざしも佐藤先生からたくさん教わったことです。(先生レベルにははるかに及びませんが。。)

▼「まばたき」については、こちらの記事も合わせて読んでいただければと思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/415591.html

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