見出し画像

雑草の輝き

「盛者必衰」という言葉のように、栄えていたものもいつかは衰退する時が来る。

わたしの暮らすアパートの庭に生えている雑草も今年、同じ運命を辿ることになった。

それは今年の春に生えてきた。とても小さな雑草だった。特に思い入れもなかった。

しかしそいつは梅雨にたくさん水を吸い,夏の強い日差しに恵まれてぐんぐん育っていった。布団を干そうとベランダにつながる窓を開けると、そいつはでーんと視界に入ってきた。
あんなに小さかった雑草が少しの期間でこんなに大きくなるなんて、、思いもよらない成長ぶりに圧倒された。しかもそいつは布団を干すのを邪魔してくるようになった。
わたしは正直切り倒してしまいたかったが、同居人は大きいその雑草を気に入り、見守るようになった。

「あのでかい草、枯れちゃった…」
9月になって同居人が悲しそうに言った。
窓を開けてみると、あの高く大きな草が折れ曲がって萎れている。
布団を干す時に邪魔だった大きな葉は茶色く枯れて垂れ下がっていた。

栄養をたくさん吸って、大きくなりすぎたせいで、重力に耐えられなくなったんだろう。「平家物語」の冒頭の文が頭をよぎった。

しかしこの草は最後に輝きを見せた。
窓を閉めたとき、枯れて垂れ下がった大きな茶色い葉に光が当たって、窓越しに茶トラの猫のようなあたたかい色が見えたのだ。
まだ周りに生えている緑の中に、そのあたたかくて大きな茶色はよく目立っていた。

わたしはその時に初めて、その草を美しいと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?