マガジンのカバー画像

短文学集

25
筋も思想も体系も、全部気にせず楽しむことを短文学と称して日々の感傷を綴る。
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

雨宿り

雨宿り

眠りの底から覚醒へと、ゆっくり浮上していくのがわかる。瞼の内側、波の無い水がわずかに白んで、私は朝が来たことを知る。

一息、天井に向けて深く息を吐く。昇っていく泡のように静かなその音を、戸外の雨音が次々破っていく。遮光カーテンを閉め切ったままの室内、そこに留まる柔らかな暗闇が、私の身体を慈しむ。

闇の膜の向こうで、雨がしきりに地を打つ音がする。屋根を、窓を、様々な音階で鳴らす。私は布団を頭まで

もっとみる