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待ってくれない

何か受け入れ難いことに直面すると

「ちょっと待って」

という言葉が口をついて出てくる。

あまり気にかけていなかったけれども、止めることにした。

なぜ止めることにしたか、ちょっと聞いて行ってよ。

私は―いきなり自分語りで申し訳ない―いろいろ考えることが好き。
いろんな想像の世界を生きることが好き。

でも人に伝えることが下手っぴ。

そんな人間、だと思う。

だから人におもいを伝えるなんて夢のまた夢。

小学生だったとき
中学生だったとき
そして高校生

私がにぎりしめたおもいはいつも擦り切れて日の目を見ることはない。

そんな調子だったから失恋もする。

そのたびに、あまり思い出せないけど、胸がプチッとつぶれるような思いをしてきた。そんな気がする。

高校3年生のある日

―プチッ―

苦しかった。眠れなかった。
考えることがキツくなった。

つらいよ。思春期だもの。
そりゃよくわかってないガキンチョがはじけるよりも生々しいリアリティを連れて失恋は私の顔を覗く。

ちょっと待って。

時間よ
思考よ
いるなら神様
すべてのことよ

ちょっと待って。

…ょっと…って。

…と…て。

…。

誰も待ってはくれなかった。
自分自身でさえ。

明け方、ふと思った。

気持ちがいいわけじゃないけど、生ぬるい湯船から抜け出せないように、

私たちは生ぬるい湯船に浸かっているのかもしれない。しかも気づかぬうちに。

そうだったとしたら私は湯船の中から「ちょっと待って」と呼びかけるより

湯船を飛び出してしまいたい。

だからその一歩として

ちょっと待って

を私は言わない。

私が私であるために。


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