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短編小説 夢語 雨宿り

こんな夢を見た


店から出ると

いつの間にか

どしゃ降りの雨だった

「まじかぁ・・・」

携帯で雨雲レーダーを見ると

10分程で止みそうだ

「雨宿りするかな」

そう思うと

店の出入口横に移動し

外を眺めていた


雨粒がアスファルトを跳び跳ね

雨の匂いが優しく

身体を包んでいた


携帯で雨雲が見れるようになってから

雨宿りが好きになった


時の流れを静かに待つ時間が

何故か非日常空間に感じて


「昔だったら雨宿りしないだろうな」

若い頃は時間の無駄が

嫌いだった

待つなら傘を買う

傘が売ってなければ

濡れても進む

立ち止まるのが

嫌いだった


考えたら俺の人生も同じ

豪雨だろうが立ち止まらずに

走っていった

何度風邪を引いただろう

何度転んだだろう

風邪が長引く事もあった

いまだに傷跡もある


「何やって来たんだろう・・・俺は」


心の中に豪雨が振りだした時

眩しい光が入ってきた


「いつの間にか止んだのか」


外は先程の雨が嘘のように

綺麗な夏空になっていた


「さて帰るか・・・」


暑い日差しの中へ歩き出した


「今の俺にも雨宿り必要なんだなぁ」


雨が降ったら立ち止まり

晴れるのを待とう

静かに雨音を

匂いを楽しもう


雨は必ず止むのだから




「もう雨宿りしても良いかなぁ」





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