短編小説 夢語 八夕🎋
こんな夢を見た
(次のニュースです)
「んっ
もう朝か・・
いつの間にか
寝てたんだなぁ
そうか・・・
昨日仕事から帰って
テレビ見てたら
寝落ちしたのか・・・」
(七夕だった昨日
各地でお祭りが行われ
沢山の人で賑わってました)
「昨日は七夕か・・・
忙しすぎて忘れてた
あっ
やべぇ仕事遅れる」
そう思うと
HIDEYOSIは
慌てて支度して
駅へ向かった
通勤途中の車窓からは
水田と家が
交互に流れて見える
「あれから4年も経つのか・・・」
HIDEYOSIは
昔の好きだった
IZUMIを思い出していた
IZUMIとは
4年前の七夕以来
声を聞いてない
お互い
好きとは言わなかったが
お互いに
好きだと感じていた
しかし
仕事が忙しくなり
お互いに連絡しても
返信がない日々が
増えた
好きと言わなかった事が
逆に
不安を増長させていった
いつしか
連絡は無くなった
半年後
風の便りで
IZUMIは結婚したと
聞いた
IZUMIが
幸せになって
良かった
と思った
同時に
自分に自信がなくて
ネガティブに考えてしまい
自分に向き合えず
IZUMIにも向き合えなかった事が
情けなく
傷が残った
「なんか朝から調子くるなぁ。」
無意識に右手で頭を掻く
残り香を
不快に香る自分が居た
「今日も忙しいから忘れよう」
そう言い聞かせると
HIDEYOSIは
今日の仕事手順を
頭の中で再確認した
車窓はいつの間にか
オフィス街に変わっていた
「あー疲れた」
HIDEYOSIは
自宅のソファーに倒れ込んだ
朝の残り香をわすれる程
忙しく疲れきっていた
携帯を見ると
LINEが15件入っていた
「面倒だなぁ」
と思いつつ開いてみる
同僚からの愚痴
冗談言い合う友達のグループライン
母親からのいつ帰るかの確認
新しい飲料水の広告
「どうでも良いのばっかりだ」
ため息つく
適当に流すように
ボタンを押していった
(お元気ですか)
絵文字もなく
ただ一言書かれた文章に
目を止めた
「なんだこりゃ?」
見慣れないプロフィール画像
良く見ると
IZUMIからだった
「なんだろう・・・」
緊張する
「今さらなぜ?」
緊張は徐々に
混乱に変わった
「どうすれば良いんだ・・・」
「何故今さら」
「あっ既読にしちゃってるじゃん」
元々
既読スルーは好きじゃない
既読スルーされるのが嫌いだからだ
性格的に
返信しない理由を何十通りも
考えてしまい
疲れてしまうからだ
それに
そもそもLINE自体好きじゃない
それでもIZUMIとは
LINE続けた
続けて行きたかった
でも既読スルーが増えていくうちに
楽しさよりも
不安や自信が無くなり
考えるほど
疲れて行った
そして
連絡を辞めた
IZUMIからも
連絡はなくなった
返信しても
また既読スルーだろう
俺が既読スルーのままだったら
傷つかなくて済む
もうあんな思いは
したくない
4年経っても
傷は癒えていなかった
(ポッ)
コメント入った
(電話しても良い?)
混乱は思考停止に変わった
無意識に指を動かし
「大丈夫だよ」
と絵文字も入れず
返信した
10分経った
連絡はない
既読はついている
「何かあったのか」
「旦那居ても電話出来るのか」
「また既読スルーなのか」
「間違いだったのか」
あらゆる不安が
頭をよぎる
「あーもうイライラする」
頭を掻きむしると
勢いのまま
電話を掛けた
コール音が鳴る
コール音が鳴り響く
「何電話しているんだよ俺」
半分後悔している
コール音がする度に
後悔が増えていく
「電話しなきゃ良かった」
と切ろうした瞬間
(もしもし・・)
その声は
4年前と変わらない
緊張している
IZUMIの声だった
「お久しぶり」
(お久しぶりです)
「元気だった」
(はい・・・
元気でした)
敬語を使うIZUMIに
4年間の長さを感じた
でも同時に
4年前の懐かしさを
感じていた
無言が続いた
どうしよう
冷静になろう
当たり障りのない
会話を始めてみよう
「どうしたの?急に」
(昨日
七夕だったから
何となく
思い出して)
「そうか・・・
4年前の七夕が
最後の電話
だったけ?」
(うん)
「もう4年も経つのか」
(うん)
「長いな」
(うん)
「聞いたよ
結婚したんだって
おめでとう
でも電話してて
旦那さん平気なの」
(う うん)
明らかに
無理している自分を感じた
朝
不快に感じた残り香は
優しく穏やかで
4年前
好きだった香りを
漂わせていた
(別れたの)
「えっ」
(旦那と・・・)
突然の発言に
何を言ってるのか
分からなかった
同時に
自分の気持ちを
見透かれている
気もした
「そうか
なんかあったのか?」
(合わなくて・・・)
それからIZUMIは
離婚までの流れを
静かに話し出した
俺は一言一言
受け止めるように
話を聞いた
切なかった
自分なら
幸せにしたのに
その想いを胸にしまいながら
その後も
話を聞き続けた
(ありがとう
そう言えば
私ばっかり話している
(笑)
HIDEYOSIはどうなの)
意外な返答だった
4年前のIZUMIは
自分の話はするが
俺の事は聞かない人だった
「あっ
変わらないよ
仕事をする毎日」
(変わらないね
その感じ)
少し寂しげに話す
IZUMIが居た
昔から
自分の話をするのが
得意では無かった
甘えベタと言えば
それまでだが
相談事を乗る事が多いから
愚痴を聞く疲れを
知っていた
IZUMIには
疲れさせたくない気持ちもあったが
相手の心が何となく分かるから
愚痴を話しても
IZUMIが
面倒な雰囲気を出すと
それ以上は
話す事はしなかった
それが
良くなかったと
思っていた
少し
弱さを見せれば
良かった
「少し愚痴っても
良いかなぁ」
(うん)
明るくIZUMIが声で頷た
IZUMIは
嫌な雰囲気も出さずに
静かに愚痴を聞いてくれた
意見する事もなく
受け入れてくると
時折
励ましたてくれてたり
誉めてくれたり
否定せずに聞いてくれた
話す事で
こんなにも癒されるなんて
知らなかった
4年前には知らない
IZUMIが居た
「明日は仕事?」
(うん
HIDEYOSIも)
「そうだよ
お互い仕事だから
そろそろ電話切るか」
(うん)
名残惜しそうに
返事する
IZUMI
「来月仕事落ち着くから
逢わないか」
(う うん)
驚きながらも
明るい声で返答した
「いつなら平気?」
(8日は空いてるよ)
「8日なら大丈夫だよ
8月8日だから
八夕かな(笑)」
(なにそれ(笑)
八夕
面白いね
でも良いね)
「では8日に」
(8日ね
あっ
LINE返信返せなかったら
ゴメン
つい忘れちゃうだ
私
LINE苦手で
何回か入れれば
返答するから)
「面倒だから大事な用件は
電話するよ
声も聞きたいから」
(ありがとう
電話してくれたら
嬉しい)
「分かったよ
おやすみ」
(おやすみなさい
明日も頑張ってね)
「お互いにね」
(うん)
「じゃ」
(うん)
そう言うと電話が切れた
何が起きているのだろう
良く分からない
本当に七夕みないな事も
あるんだな
今度はちゃんと向き合おう
自分とも
IZUMIとも
出来るはずさ
織姫と彦星のように
一ヶ月遅れの七夕
八夕に
逢えるのだから
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