小川町日記【6/13〜6/14の日記】

<6/13>
朝、10時ごろ家を出て小川町へ向かう。友人のみさっきこと田中美咲と、彼女の友人であるたけちゃんのもとを訪ねることになってるのだ。

池袋で東武東上線に乗り換えて、終点の小川町駅まで一時間ほど。深谷出身のおれとしてはほとんど地元に戻る気分。ホームに降りると、甘い草木の香りがした。地元の香りだ。

みさっきーと合流してたけちゃんの事務所へ。もともとたけちゃんのインタビュー記事を読んで、「畑に本屋にクリエイティブな仕事に、この人のやってること、自分のやりたいことと違いかも!」と感激し、そのことを次の日たまたま会ったみさっきーに話したら「まって、その人わたしの友達だよ?!」となってびっくり。なんとかつてシェアハウスの同居人だったとのことで、じゃあ一緒に小川町に会いに行こう!となったのだ。ご縁すごい。

みさっきーから聞いていたけどたけちゃんは本当に素敵な人だった。くるくるのきれいなパーマ(あとで聞いたら天パとのことで驚いた)がすごく似合っていて、穏やかなのに芯がある。コピーライターとしての仕事もまちでの場づくりの仕事も、センスがあってかっこいい。

そんなたけちゃんがまちをいろいろ案内してくれた。コシの強い麺が美味なうどん屋に、1週間に10冊は読むという読書狂のおじちゃんがやってる本屋、蔵を改装したコワーキングスペース…小川町には何度も来たことがあったけど、まさかこんなに面白いことになってるとは。のんでも近年では移住者が増えて転入が転出を上回る年もあるほどで、古くから営業してる店と移住者が始めた店が駅から徒歩県内に混在してる。

仕事柄、いろんな地方都市をめぐってるけど、ここまでいきいきとしてる土地もなかなかない。作業するスペースもあるし、デザイナーやフォトグラファー、ライター、マーケター、食関連の仕事をしてる方など多種多様な方がいて、クリエイティブな雰囲気もある。おまけに有機農業がさかんで野菜がべらぼうに美味いらしい。

実は少し前から2拠点居住先を探してたのだけど、埼玉は地元であるだけに「もう飽きたしなぁ」と選択肢から外してた。けど、今回の滞在で考えが変わった。少なくとも小川町はアリだ。おもしろい人、おもしろい店、美味しい食があって、アクセスもいい。

夜、銭湯の風呂に入りながら「ここで本屋ひらくのもありだなぁ」と、わりと真剣に考えた。小さな空き家を借りて、いろんな生き方を知れる本を並べて、ゆったり話ができるスペースもつくって。都内で人生に悩んだ人が、1時間くらい電車に揺られて自分を見つめ直すために訪れ、ついでにまち歩きしてたらおもしろい人に出会って「この人みたいな人生もありかもな」なんて思えるような本屋。

でも、落ち着け自分。旅っていう非日常にうかされてるだけかもしれない。もうちょっとアイデアを寝かせてみよう。

<6/14>
7時くらいに起きようと思ってたんだけど、慣れないドミトリーのベッドのせいか眠りが浅く、8時くらいに起床。急いで歯を磨いて顔を洗い、みさっきと駅前の団子屋へ。高菜おにぎりとカップの味噌汁を買って朝食とする。まだ朝なのに超暑い。日中は真夏日になりそう。うへぇ。

おにぎり屋でもらった割り箸の袋には「FIRST FOOD」と書いてあった。ファストフードを間違って書いちゃったんだろうか。でも朝ご飯で食べてるから、ファーストフードであながちまちがってない。というかむしろ好きですらある。


9時過ぎにNESToへ。たまにしゃべりつつ、作業。家よりだいぶはかどった。打ち合わせがあるというみさっきを残し、16時くらいの電車に乗って東京へ帰る。

小川町からの帰り道、池上線で洗足池を通りかかった。ちょうど6時で、満員の車内のなかつり革につかまり、ふとスマホから目を上げると、窓の外では陽が沈むところだった。池を囲む木々の向こうに陽が沈み、まちの輪郭をふんわりとぼかしている。きれいだなと思った。

何気ない風景をきれいだと思う、この感覚は10代や20代の頃に恋をしたときに似ている。世界がモノクロからカラーになる感じ。あの感覚は恋をしたときならではだと思っていたけど、どうやら違うらしい。朝にしとしと降る雨も、カンカンの日照りも、灰色の雪も、こんなふうにきれいだと思えるといい。

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