2024年5月16日-5月20日

<5/15>

家で作業と打ち合わせをしてから、夕方渋谷ヒカリエへ。友人である田中美咲(みさっきー)が取り組んでいる「SOLIT!」の展示会兼、バンクーバーファッションコレクションの報告会だったのだ。

SOLIT!は、自然や生物、そして人間が誰もどれも取り残さない、オール・インクルーシブな社会の実現を目指しているプロジェクト。そのきっかけとして、大量生産・大量消費だったり労働力の搾取だったり、障害やセクシュアリティー、信仰上の理由で着る服が限られてしまったりと、ある意味“諸悪の根源”であるファッションの領域から切り込んできた。既存の衣服では着ることができない体型や障害を持つ方でも着用できる「セミオーダー」のファッションサービスを提供してきたのだ。

2024年4月には、バンクーバー・ファッション・ウィークで、初のコレクションを発表。オール・インクルーシブを目指すSOLIT!らしく、モデルも公募。車椅子ユーザーや難民、聴覚障害がある方など、いろんなバックグラウンドを持つ6人のモデルがショーの舞台に立った。

実は僕も、モデルの皆さんの講習でちょっと講師として関わらせていただいたのだけど、youtubeの本番のショーの様子をみたら、みんなのすごい成長していて「すげー!」と感動してしまった。6人以外のモデルも参加していたけど(おそらくプロのモデルなんだろう)、いかにもモデル!というウォーキングをする彼ら・彼女らに対し、6人は本当に「他ならぬその人」として舞台に立っている感じ。一般的なファッションショーのことはよくわからないが、贔屓目なしに6人の佇まいの方が圧倒的に胸を打った。みんなすごい。

報告会であるモデルの方が「多様性って大変なんだって気づきました」と言っていた。ショーは運営側もモデルも、垣根を超えて話し合いながらつくってきたそうだけど、異なるバックグラウンドや身体的特性を持つ他者と協力しながらなにかをつくりあげる営みは、生半可なことじゃないんだろう。

たとえば車椅子ユーザーでも、ある方にとっては乗り越えられる段差も別の方は乗り越えられなかったりする。簡単に「車椅子ユーザーならこう」とカテゴライズすることはできない。オール・インクルーシブな社会、誰も取り残さない社会は、カテゴライズやルールや仕組み化と相性がよくない部分があるのだと思う(仕組み化したら誰かしら取り残される人がでてくる)。だから、「取り残されている人はいないか」という想像力と、自分と誰かのちがいを知り、尊重しあうためのコミュニケーションの手間がいつも求められるんだろう。

つまり、本当に多様性を大切にしようとしたら、めっちゃめんどくさい。おれも「多様性、大事!」と思ってるし、言ってるけど、そのめんどくささにそこまで直面したら、どうふるまうのおれ?と問われてる気がする。

田中美咲はじめSOLIT!のメンバーやモデルたちは、打ち上げ花火のように瞬間的に消費されるわかりやすい記号が求められるようなファッションの世界の中で、あえて手間がかかる、多様性っていうめんどくさのなかに踏みとどまった。だからこそみんなのパフォーマンスがあんなに胸を打ったし、「大変だった」と言いながらみんなの表情は晴れやかだったんじゃないか。

ひるがえっておれは、多様性っていうめんどくささのなかに踏みとどまれるんだろうか? 今後の宿題にしたい。

<5/16>
平日だけど休みにして(フリーランスばんざい!)、友達と三島にドライブへ。柿田川湧水群、めちゃくちゃ綺麗だった。3,4年前にも三島には行ったけど、こんなに綺麗だったっけ?天気によって水の色も変わるのかしらね。とにかく水が青く澄んでいて、モネの絵画のようだった。

やっぱ散歩も好きだけどドライブ好きだ。目的地なんてなくたっていい。好きな音楽を聴いて、くだらない話やら真面目やらをして、ときどき無言で物思いにふけって。なんでかわからないけど、音楽も、雑談も、沈黙も、ドライブっていう舞台だとその味わいがちがうような気がする。

『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダーのシーンも、何気ない会話なんだけどすげー聴き入っちゃうかんじあったしなぁ。そのうち山中散歩から山中ドライブに改名するのかもしれないし、しないのかもしれない。たぶんしない。

<5/17>
「木曜に休む」っていうことの弊害をナメていた。木曜にオフっちゃった気持ちを金曜に入れ直すのがめちゃむずい。やる気出そうにも、もう週末の気配がそこはかとなくただよってるんだもの。デザート食べたあとに茶碗蒸し出てきた、みたいな感じである。なんとか流し込むしかねぇ。

ということで午前の原稿書きはぜんぜん進まず、あーなにやってんだおれ、という自己嫌悪を抱えながら昼過ぎ六本木へ向かう。恵比寿駅でビッグイシューを買い、日比谷線に乗り換えると、インド帰りだというスキンヘッド&白髭のおっちゃんに席を譲ると、にこにこの話しかけてきたのでちょっとおしゃべりする。

向かったのは何度か記事を書いているwebメディア『こここ』の周年パーティ。大人数の会合は苦手だけど、福祉領域のことを真摯かつクリエイティブに伝えてる好きなメディアなので参加することにしたのだった。会場についてみると、あかしゆかさん、編集の垣花つや子さん、川島彩水さんなど、会いたかったひとたちがたくさんいて安心&嬉しくなる。

福祉領域のメディアのあり方についてのトークが行われていたのだけど、これがまぁ刺さる、刺さる。クローズドイベントなのでここでは書けないけど、福祉のような人間の生をあつかう領域のことを僕らメディアはどう伝えるのか?という問いを突きつけられた。本来複雑でドロドロしたものである人間の生を、きれいにまとめて漂白してないか?きれいごとにしてないか?と。どうしたらいいんだろうな。「ちょうどいい塩梅で記事にドロドロをいれる」がいまのところの僕の考え。まだ答えはでない。

<5/18>
泥。身体が泥のように重い。そんなに疲れたことをした覚えはないのだけどなぁ。気温差と気圧だろうか。

ぐで〜っと寝たあと、平和台にある青豆ハウスのフリマへ。だいぶ腰が重かったけど、いちおう取材も兼ねているので。行ったら行ったで、けっこう楽しかった。小皿を200円で購入。

どうしたら疲れがとれるんだろう?とググったら、豚肉やらカツオやら、とにかくビタミンB類がいいらしい。前の自分なら「足りない栄養素を補う」という発想すら湧かなかったと思うが、今なら沸くのだ。成長だ。

スーパーで豚肉を大量に買って、夏野菜とマリネ風にあえて食う。食いながら、見ねばと思ってたサカナクション山口一郎さんのうつ病についてのドキュメンタリーを視聴。日本では約15人に1人が生涯にうつ病を経験するらしい。

<5/19>
この週末でなんとか回復したいぜ!ということでユンケルをぐびっとやって、昼飯はカツオをキムチと和えて食う。これ、ふつうにうまい。今後の自炊メニューに加えようかしら。

夜、グリーンズの植原正太郎、ポルトの嶋田匠くんと品川で飲む。「さいきんメンタル食らってて。何者にもなれないつらさがわいてきたのよ」って話をしたら、「何者にもなれないって、いまの山中さんのポジションが超うらやましい人いっぱいいますよ」といわれた。そうなのか。いや、そうなんだろうな。

この「他人と比べて何者かになる」っていうゲームは、参戦してしまうと一生終わらないラットレースだ。勝つ人はたぶんいない。だから楽になるにはそのゲームから降りることしかなくて、僕もふだんべつにそんなゲームもういいわ、って気持ちなのだけど、なにかのきっかけでそういうゲームに放り込まれることがあり、気づいたらまたレースに参加しちゃってるのだなぁ。漫才じゃないが、その度に「もうええわ!」って言いたい。もうええわ。

飲みの流れで野球チームが発足した。東京ラブファントムズ。ださくて最高だ!いらないなにも捨ててしまおう!!

<5/20>
月曜日はコワーキングスペース行って仕事スイッチ入れる日!ということにしたつもりだったが、外は雨。気圧も下がってる、ときたら出かける気力もなし。家で作業することに。

しかし、週末銭湯で目標の見直しをしたからか、ちょっとやる気が復活してた。ゼロだったのが30%くらいになったかんじ。豚肉とカツオとユンケル効果か?8時過ぎからすこし本を読み、9時半くらいからずずいっと原稿進める。うれしい。さいきんあんまりなかった進み具合。

なんというか、べつに「これを達成してやろう!」みたいに無理せず、でも9時から12時にしっかり制作をすすめる、っていうことをルーティンにしてこつ日々やっていくのがいいのかもしれない。その方が持続可能な気がするし。

さいきん「あいつに比べて、おれは…」と凹み、焦る気持ちがあったけど、おれにはおれのペースというものがある。焦らず、できることをしっかりやる。それがなかなかできねんだなぁ、みつを。


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