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クリスマスブーツ

 

 クリスマスプレゼントを買うために、お父さんにデパートへ連れて行ってもらった。

「あった。お父さん。これ欲しい」

 おもちゃ売り場に駆け込んだ僕は、大きな箱を両手で抱えた。それは最新のゲーム機だ。
 お父さんはゲーム機の値段を確認すると真顔で僕の顔を見た。

「春樹、買ってあげるからちゃんと勉強するんだぞ」

「わーやったーお父さんありがとう。勉強頑張るよ」

 レジを通し、サンタの包装紙に包まれたゲームを手にした僕はすっかりご満悦だった。

「春樹、お父さん、お酒を買いに行きたいんだけどいいかい?」

 おもちゃ売り場を出るとお父さんが言った。きっとパーティーの時に飲むシャンパンを買うのだと僕は思った。

「うん。じゃあ僕はお菓子売り場に行く。あっそうだ、サンタさんの靴のお菓子買ってもいい?」

「ああいいぞ。じゃあ、お父さんがゲームを持ってるよ。重いだろ」

 お父さんは僕が抱えているゲーム機を指さした。

「いや、いいや。僕が持ってる」

 僕はそう言うと、ゲーム機を抱えたままお菓子売り場へ走った。

 デパートを走りながら、どこかに同級生がいないか探した。このゲーム機は発売したばかりだし、とても高いから持っているのはきっと僕だけだ。誰でもいいから自慢したくて仕方がなかった。

 お菓子売り場に付くと、願った通り、そこには同級生の健くんがいて、お菓子を真剣な顔で選んでいる。どうやら僕と同じでサンタの靴のお菓子を買おうとしているようだ。手には何も持っていないところを見ると、きっとこれからオモチャを買いに行くのだと思った。一体何を買ってもらうのだろう。でもどうせ僕の最新ゲーム機ではないだろうな。
 僕は声を掛けようと健君に近づいた。すると、

「ねえ、お父さん。これ買ってよ」

 健君がサンタの靴のお菓子を手に持ち、近くにいたお父さんらしき人に尋ねた。

「ああ、いいよ。その代わりちゃんと勉強するんだぞ、あとお母さんの手伝いもな」

 健君のお父さんはどこか誇らしげに言った。

「やったー。ありがとうお父さん。勉強もお手伝いも頑張るね」

 健君は弾けるような笑顔でガッツポーズをした。
 それを見た時、僕は自分の勘違いに気づいた。

 健君にとってはサンタの靴のお菓子がクリスマスプレゼントなんだ。僕は何故だか胸が苦しくなって、健君に声を掛けずにその場を離れた。

「あれっ、春樹。サンタの靴はいいのか?」

 お酒売り場で合流するとお父さんが僕に聞いた。

「うん。いいや」

 うつむくと包装紙のサンタがクシャっとしていた。(了)



https://adventar.org/calendars/634

せっかくのクリスマス前にこんな物語ですみません。

お次はetsucoさんです。(ウチの母と同じ名前だあ)大掃除のイラストとエッセイだそうです。

#アドベントカレンダー2021 #クリスマス  #ショートストーリー

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