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湘南フェイク scene#1

2kmちょっとあるサーファー通りは普通に歩いて20分と少しかかる。彼女と落ち合うグリーンスタンプスというカフェはその真ん中より海に近い大学会館からさらに少し海に向かって歩いたところにある。ここで会ってコーヒーやら少しの会話やらを楽しんでそして店を出るとき10回に8回は左、つまり駅に向かって歩くのだけれどごくたまに右を選ぶと浜へ出るというわけなのだ。

今日はコーヒーではない。冷たいレモネードをのどに流し込みながら「美味しい」と彼女はささやく。私はといえば一緒に頼んだレモネードのブランデーグラスが並んだシーンを写真におさめる。その様子を彼女は見ている。
「こういうふうな写真を撮ることを世間ではデートポトレとか言うらしいよ。確かに、関係性を匂わせるいやらしい絵柄かもしれない」
「どんな関係性ですか」
彼女は笑う。
「君と僕では年齢差があるからパパ活?」
「迷惑ですよね。カメラマンとモデルでしかないのに」
2人で笑う。
「でね。こういう写真は高尚な人たちからは軽蔑されたりするの。でも僕はこの歳まで恋愛カルチャーに毒されて生きてきた軽薄なやつだし死ぬまで直らない。それに写真って美しい誤解で成り立っている。写るものなんて本当はどうだっていいことばかり。しょせんフェイクなんだから」
「どうでもよくはないです」
「なんで?」
「写り」
「は?」
「どうせ写すなら私という人間をちゃんと写してくれないと私は嫌です」
楽しそうに彼女は続ける。
「決めました。今日は海へ行きましょう」

model:古城美唯 Kojyo Miyu
古城さんは半端ない経歴のテニスを愛するファミリーに生まれ感受性豊かで知性的なお嬢さんです。物心ついたときにはラケットを握っていたそう。ずっとテニス一本で生きてきたのでこれからは他にやりたいことがあるそうです。私は公私共にさまざまな人を撮りますが男女を問わずスポーツをやっている人とはモデルとカメラマンとしてなぜか波長が合うことが多いです。


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