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テイルズオブジアビスに学ぶ人物評価/ホロライブ・大空スバル

現在大空スバルちゃんのRPG実況でテイルズオブジアビスがプレイされています。僕は先日の土曜日のアーカイブで♯5までを見ています。元々色々な意見があるRPGなのですが、後半はあまり考慮に入れないものとして中盤(ルークが断髪して少し経過したくらい迄のところ)までに漂う不快感やストレスについて分析してみたいと思います。
元々プレイする人の価値観やこれまでの人生経験によって見方が変わりやすく、リアル世界とリンクする部分も多いこの作品なのであくまで僕個人の考えという事で見て頂ければ幸いです。


■差別構造と視点

分析と言いつついきなり結論から書くのですが、プレイしていて感じる不快感の正体は、殆どの主要キャラクターが主人公のルークを下に見ている所に尽きるかと思います。

通常のRPGのパーティーや仲間は基本的に優劣関係がなく対等ですが、テイルズオブジアビスの構造はレプリカであるルークを下にしてその上にパーティーメンバーが位置するという構造です。

このレプリカですが現実世界でのクローンとリンクする形で描かれていてテロメア的な遺伝子劣化の部分も反映されています。
テイルズオブジアビスは例えば人のクローンが確率された世界で、クローンが劣化人間としてオリジナルよりも下に見られ、差別されている世界で作品自体はクローン側の視点で描かれている感じです。

■自分だけに向けられる理不尽

また、途中でルークの無知により多くの人間が被害を受けるシーンの後に象徴されていますが、幾つもの要因が重なって悲劇的に起きてしまった災厄の責任は全て主人公であるルークに向けられます。
例えるならこういった形で。

運悪くコロナに罹患し。1カ月間小学校に来れなかったA君。A君が不在の間に学校では文化祭の準備が行われていました。A君のクラスでは演劇を行います。文化祭までにはA君も来れるだろうという事でA君に村人Cの役を配役しました。しかしA君にはA君が村人Cに選ばれたという事を伝える人は居ません。A君は文化祭で演劇を行う事も知らず、文化祭の3日前から登校を再開しました。そして文化祭当日に何も知らないA君にクラスメートの皆と先生が「A君、君は村人Cの役だからこの衣装を着てステージに立って」と伝えます。何も知らないA君は戸惑いながらも皆に押されるままぶっつけ本番で台本もセリフも知らずにステージに上がります。
ステージに上がり、当然の様にどうすれば良いのかもわからずA君の出番のシーンでセリフが出てこず演劇は一時微妙な空気になりました。演劇が終わった後、何がなんだかわからないA君にクラスメート達が口々に
「なにやってんのA君ちゃんとやってよ」
A君:そんな、僕なにも知らなかったから
「はぁ、、、演劇をダメにしておいてこれ以上言い訳する気?」
A君:そんな僕は悪くない、、、、、先生?
先生「もう黙っていなさい。これ以上幻滅させるなイライラする」

雑な例えですが起きている事は凡そ上記の様な感じかと思います。
大空スバルさんの配信上でもこのシーンはコメントも飛び交い、大空スバルさん自身もその理不尽に感情をかき乱されている様子でした。

この流れはその後もしばらく続く形でルーク=大罪人という描かれ方をしつつ、レプリカという事で更に叩かれる様子が描かれていきます。
そしてルークは禊の様な形で断髪し、そこから人格を強制されたかの様な謙遜を超えた卑屈で怯えた態度であたかもメンバーのご機嫌を損ねない様にといった言動が続きます。

たとえ話ばかりで恐縮ですが、これも例えると以下の様な感じです。

・7歳の小学生A君には生まれつき障害があった
・体の成長が早く他の人の2倍以上の速度で成長する
・周囲の大人達は子供ではなく体だけを見て大人と同じ結果と責任を求める
・大人達に舐められない様に不遜な態度をA君は取ってしまう
・何とか求められる結果を出そうと四苦八苦するが大きなミスを起こす
・周囲から一斉に責め立てられるA君
・何かにつけて障害をネタに馬鹿にされるA君
・思いつめたA君は反省の印として丸坊主にして周囲に許してもらおうとする
・A君は自分らしさを出さずに周囲の大人の気に入る行動を取る様に心がける、間違いを起こさない様に

こんな感じでしょうか。
見ていて痛々しい、苦しくなってくるのはテイルズオブジアビスの中でルークが7歳のクローン人間だからです。本来ならば小学二年生くらいの男の子と同じ様な年代です。
もしルークが子供の容姿で描かれていたら、こんな非人道的なストーリーはあり得ないと批判されまくっていた事でしょう。序盤にやんちゃな少し生意気だけど優しげのある子供が、大人たちによってたかった責め立てられるシーンはゲームとは言え目を覆いたくなります。
ですが立派な青年の容姿で描かれています。


■人が人を判断、評価するという事を考える

物語が後半に向けて進んでいくと、他のキャラクターも様々な過去や背景が明るみになってきます。それと共に例えばジェイド等への評価も変わる事がある人は多いと思います。

人が人を評価、判断する歳の本質的な問題として我々はその瞬間だけを切り取ってその人をわかった気になるというミスを犯しがちです。

たまに見せるいい面、悪い面というのは正にその通りで所謂不良やヤクザがたまに見せる優しい面を見て「この人は本当は良い人」と判断してしまう事や、普段優しく温厚な人がたまたま怒ったのを見て「実はとても怖い人」という判断をしてしまうのと同じです。

これに翻弄されてはいけないと個人的には思います。
人は断片的に見るのではなく、色々な面を見て総合的に評価していかないと実態と乖離した評価をしてしまう事になります。

前述してきたテイルズオブジアビスの中盤までのルークを取り囲むキャラクターへの評価、判断というのは中盤までの時点で見えているそのキャラクターの印象です。アビスの中では意図的かどうかは不明ですが、各キャラクターの背景は秘匿的な描かれ方をしています。加えて物語は基本的にルークの視点で描かれていきますので、あくまでもルークから見える周囲の人たちがどんな風に見えているかという感じです。
意図的に行っていれば天才的な演出ですが、スキットも含めて子供であるルークの目線で見た周りの大人達の自分への接し方という描かれ方をしている様に感じます。そのせいでより一層プレイヤーは「そんなのってないじゃん」という思いを抱きやすくなります。


■終わりに

賛否両論ある要素のひとつとしてアビスは非常に精神的な表現に寄ったストーリーというのもあるのかもしれません。
戦時下に必要とされる価値観は現代を生きる僕たちには中々縁遠く感じますが厳しい世界であれば厳しい教育が必要なのも配信中で大空スバルさんが語っていた通りだと思います。

このゲームはこの人はどういう人なんだろう、という生きる上で人をどうやって判断していくのかという重要な事を疑似体験できる希有なゲームでもあると改めて感じました。ここから♯6以降のアーカイブの視聴も非常に楽しみです。
また、配信を見ていてテイルズシリーズと大空スバルさんの相性はとても良い様にも思いました。RPGをじっくり腰を据えてプレイするスタイル、人物関係に思いを馳せる性格、感情移入するプレイ、非常に見ごたえがあり、飽きさせません。
配信のチャット欄を見るとホロライブとは思えない程白コメ(メンバー以外)も目立つのでテイルズとスバルちゃんのプレイするテイルズに興味を持って入ってきている新規の人もかなり居るように感じます。

個人的には大空スバルさんにはヴェスペリアやグレイセスもプレイして欲しいなと思います。BGMも素晴らしいですし、アビスの後だからこそ感じられる良さも多くありますので。


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