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【レビュー】Final / ZE8000 /ワイヤレス Bluetoothイヤホン

FinalのZE8000を購入したのでそのレビュー記事になります。

■最初に


まず書いておくとイヤホンやオーディオのレビューは主観がメインになります。絶対評価は無く、あくまでも僕であれば僕個人のこれまでのオーディオ体験の中での相対評価という感じです。つまり人それぞれ好みという事ですが、それで片づけてしまうと元も子もないですし、人の聴覚上の構造は当然みんな共通する器官として近しいものを持っているので、ある程度は参考にはなるという事かなと捉えています。


■ZE8000を知ったのはこの年末年始休み

夏にこちらのbang & olufsen Beplay EXのレビューを書いて、正直ワイヤレスイヤホンについてはこれでしばらくはもういいかなという程満足して使用していました。Beplay EXでワイヤレスイヤホンの音質もいよいよ有線イヤホンに迫る形になってきたなと思っていました。
ですが正月休みにTWITTERを見ていたらたまたま、本当に偶然何かのいいねが巡ってきてFinalのZE8000というワイヤレスイヤホンが賛否両論になっているというツイートが目に入りました。

Finalのイヤホンは型番の数字にかなり拘りがあり、8000番台というのはいわゆる肝いりのフラッグシップモデルに付く型番の数字です。これまでもD8000、A8000と数多くあるラインナップの中で8000が付くものは特別なモデルでした。ワイヤレスではZE型番に2000と3000が出ていました。8000がつくモデルという事で興味を持ち、ネットでのレビューやツイッターでの感想等を漁ってみました。
例えばこんな感じですね。

ネットでのブログレビュー等は下記の様な感じです。


大変興味を持ち、bang & olufsen Beplay EXでしばらくは良いかなと思っていましたが早速ヨドバシカメラに行って購入してきました。


■話題の音質について

まず最初に付属のイヤーピースが自分にピッタリ合っていないと低域がスカスカだったりするのが他のイヤホンより顕著なので、最初についているMサイズだけでなく他のサイズも試すのがベストです。僕の場合最初のMでも大丈夫かなと思ったのですが、ワンサイズダウンしたイヤーピースがジャストサイズでした。

音質で言うと確かにこのZE8000は今までのワイヤレスイヤホンとはそもそも音の種類が違うというのを聴いていく内に実感します。

TWITTERやネットの感想等でも最も多く見かけたのが「音場の広さ」ですがこれが出てくるのも頷けました。ですが本質的には聴覚体験としては下図の様な違いがあるのかなと思います。


これまでのワイヤレスイヤホンの音像


ZE8000の音像

言い換えるとこんなイメージです。

・ZE8000は広いスタジオで音楽を演奏している
・その他のワイヤレスイヤホンは狭い部屋で音楽を演奏している

これはこのレビューを書く為に保有しているワイヤレスイヤホンやDAP&有線イヤホンとそれぞれ聴き比べをしていて感じた印象です。

僕の場合今はもうしていませんが、学生時代にバンド活動、その後10年以上音楽制作を行ってきて、例えば作った楽曲を複数のスピーカーと複数のイヤホンで聴いて確認しながら最終的なMIXをしてきました。目的はどの環境下で聴いても音のバランスが破綻していないかを確認する為です。

もうひとつ例えると以下の例えが納得しやすいかもしれません。

・その他のワイヤレスイヤホンは小さめのBluetoothスピーカーで音楽を聴いている感じ

・ZE8000はちゃんとしたスピーカーで音楽を聴いている感じ

Bluetoothスピーカー
ZE8000


これが僕が感じたZE8000が他のイヤホンと大きく違うと思う点です。

勿論、小型のBluetoothスピーカーでも高音質のものはあります。僕の場合オーディオマニアでもあるのでそういったものも集めていた時期があり、例えば下記の様なものとかですね。


聴き比べをしているとZE8000からBEOPLAY EXに付け替えると小型のBluetoothスピーカーで音楽を聴いている時の感じに近い印象を受けました。敢えて悪く言えばBEOPLAY EXがスカスカな音に聴こえました。ZE8000では聞こえていた帯域の音がEXやNobleaudioのTWSでは感じられなくなる部分が出て、急に狭い部屋に入れ替えられた様な感覚です。
これは上で書いた様に各楽器の音が広いスタジオで演奏している時の様な楽器同士の音が鑑賞して消しあわない効果なのかなと感じます。

曲作りをしている時に、イコライザで楽器の周波数と、PANで定位を調整します。この調整のイメージは下図の様な感じです。

イコライザで周波数を
PANでステレオ等の定位を

こんな感じで各楽器の周波数と定位を調整します。

上図の様に左右に配置したモニタースピーカーで実際に耳で聴きながら整理していくのですが、これを例えばオープン型のAIRPODSとかで聴くとまさに上図で書いた比較の様な聴覚上の変化があります。

ZE8000の持つ優位性というのはこの点が一番大きい様に思います。
つまりZE8000の場合はかなり余裕のある広い空間の中に各楽器を配置できるので、適切な位置から音が聞こえる様に綺麗に整理できます。
これまでのワイヤレスイヤホンでは余裕のない空間に窮屈に各楽器を詰め込んでいた感が、ZE8000から付け替えると顕著に感じられます。

これが音質にも与える影響は大きい様に思います。繰り返しになりますが、音同士は干渉して聴覚上聞こえなくなるケースというのがあります。例えばベースはソロだと聞き取りやすいですが、ギターやボーカルが乗ると聞こえにくくなる等はわかりやすいと思います。
これは各楽器の距離が近い程干渉しやすくなり、例えば各楽器の録音が分かれている場合は音源のMIXをする際はステレオの設定で0から127の間で配置します。0が左端で64が中央で127が右端です。これを分ける事でよく言う「音の分離」がしっかりして空間表現に広がりが出ます。

これまでのワイヤレスイヤホンはこれが
30〜97で
ZE8000は
0〜127で表現出来ている、
そんなイメージです。
その為各楽器が干渉しない事でこれまで聞こえなかった楽器の音がより聞き取りやすくなったり、干渉しない事でより広い帯域で音が鳴っている様に聞こえる事で音楽表現そのもののクオリティが上がった、という事なのかなと。


これをワイヤレスイヤホンでやってのけた技術的な進化がこのZE8000がFinal社にとって8000番台をつけさせるに足る部分なのかなという事と、音楽鑑賞ツールとしてのイヤホンのステージを一つ繰り上げたくらいの驚きがあります。

これはゲームで言えばこれまでの2Dから3Dに変わったくらいの革新かもしれません。というのもこのスピーカーでの聴覚体験に近い音作りというのは音質が有利とされている有線イヤホンでも中々できなかった事なので。

もちろん「じゃあ高級スピーカーよりZE8000の方がいいの?」と言われればそこはまだまだかもしれません。
ゲーム機で言えばスーパーファミコンからプレステに遷移した様な感じです。まだまだプレステ5のレベルまでは行っていません。


後は音のチューニング等は各メーカーの方向性とかもあるので、そこはFinalらしい派手さを持つものではなく、どちらかと言えば柔らかめです。ですが聴いてみると高音から低音まで綺麗に鳴らして解像感も高いと言えると思います。

既存のワイヤレスイヤホンで慣れているので最初はZE8000に対してはイヤーピースが適正でも籠ったように聴こえるというのはあり得ると思いますが、慣れると徐々に印象は変わってくるのかなと思います。


■終わりに

個人的にはもうBEOPLAY EXをメインで使用する事は無いと思います。それくらいZE8000の聴覚体験は高いレベルのものでした。
変な例えですが、カップ麺と店のラーメンくらいの違いがあると思います。勿論僕もカップ麺は食べる事はありますが、出かけた帰りに「晩ごはんはラーメン食べようよ」と言われて「じゃあ家でカップ麺にしよう」と有り得ない答えをする様な感じです。あくまで現状の僕個人の印象ですが。


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