ダメだとわかっていても…

遺品整理のバイトをしています。私のバイトは、亡くなった方のお部屋を掃除するだけではなく、普通の引越しやゴミ部屋清掃もやったりします。ここ最近、『団地の取り壊し』が各地で立て続けに行われてまして…。どうやらバブル時に建てられた団地が老朽化するタイミングが被っている様です。
ある夏の暑い日…近々取り壊しの決まっている団地のゴミ収集場を片付けて欲しいとの依頼。どゆこと?と思ったのですが…。ここで言う『ゴミ収集場』とは、ゴミの日に団地の住人がゴミを捨てる場所です。本来だと自治体のゴミ収集の方が回収に来る場所なのですが、なぜ民間の回収業社に依頼があったのでしょうか?
現場に着いてその理由がわかりました。収集場に異常な程に積み上げられた大量のゴミ。更にそれらは分別されてなかったり、回収車では回収出来ない家電までも捨てられていたり…とやりたい放題な捨て方。聞けば、一度はゴミ回収の方が来てくださったのですが、こんなに分別してない状態のゴミは回収出来ないと言われ、こちらに依頼する運びになったそうです。
確か一家庭で回収してもらえるゴミは一度に3〜4袋と量が制限されてるはず。しかし引越しの日程が重なり大量にゴミが出され、怒られようが迷惑掛けようが、自分達は引越して居なくなっちゃうから関係ないっ!といった所だと思われます。
収集場に積み上げられた、自分の身長を優に越す団地の元住人達が置いていったエゴの塊、ゴミの山。それを目の当たりにした時、私はこの暑さの中、朝からこんなラスボスと戦わされるのかと戦意喪失してしまいました。
……えっ?何これ?ゴミ?ん?これ、誰が片付けるの?私が?今から?これを?誰が?私が!どれを?コレを!なんで?!
…もうパニックですわ。
で、とりあえず一袋ずつ開けてゴミを分別…。食品ゴミと電池、スプレー缶とノート…
『なんで可燃と危険物を同じ袋に入れるかなー!』
ゴミの袋をひとつ開けては文句を垂れイライラを発散させたり、虫がわんさか出てくる度にギャーギャー大騒ぎしたりでしたが、そんな足掻きも序盤で終わり、中盤からは感情皆無モードに切り替え、無表情で黙々と作業。時間が経つにつれ、虫が足から這い上がっていても黙って手で払ってまた黙々と作業を続ける…この繰り返しになっておりました。ぎゃーぎゃー言ってた頃が懐かしい…。
この捨て方は本当に非常識極まりない!しかし…自分が捨てる側だったらどうしてるだろ…。引越し日に、もう二度と訪れないであろう場所で出たゴミの心配まで出来るだろうか…。例えばこの曜日には出せないゴミが引越しで出たとしても、収集場に来てあんなに積み上がってる大量のゴミの山を見たら、自分のゴミなんてカワイイもんだから、アレもコレも捨てて行こ!だって家電とか捨ててる人が居るんだよ!となんだかんだ言い訳しながら捨てていてもおかしくない。みんなやってるから、私1人くらい…これをここの住人全員が思っていたと思うと、恐るべし集団心理。
結局この日中には終わらず、ゴミをそのままトラックに積め会社に持ち帰り、後日みんなで分別するという地獄現場でした。勿論時間が経てばゴミは今より臭いを放ち、虫もわくのです。
ゴミを捨てる際、処理してくれる知らない人の苦労まで心配する事って結構難しい事かもしれません。しかしゴミ袋を一つずつ開け、そこからボタン電池や電気シェーバーを分別したり、大量の家電をトラックに運んだり、汗なのか虫が這ってるのかもはやどうでもよくなりながら黙々と作業をしたり…そんな過酷な作業を、仕事とは言え40代の独身女がしていた事実を皆様の胸に刻んでいただきたい。あの時、この団地のみんながキチンと分別を守ってさえいてくれたら、私はこの日バイトに出る事はなく婚活の一つでも出来たかもしれない。そしたら今頃私は嫁に行き、苗字も変わって今よりも広い家に住み、幸せに暮らしていたかもしれない…。そして新しくできた家族と共に正しいゴミの分別をし、またそのゴミを回収してくださる方のお手間を省く事が出来たのかもしれない。あなたのゴミの捨て方ひとつで、誰かの人生が変わるかもしれない事を肝に銘じていただきたいものです。

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