(8)人の価値観

     現場:都内某所
部屋形態:6畳1K(一人暮らし)
 依頼者:家主の娘

ある冬の寒い日…こちらの現場に行ってきました。一人暮らしの70代女性のお宅です。家主はご健在で、何年か振りに娘さんが訪ねて来られた際、かなりのゴミ部屋になっていた為、最初は一緒に片付けていたらしいのですが、これは素人の手に負えないとの事で、依頼された模様です。
確かに、久々親に会いに行って、玄関開けて…

この調子だとびっくりするのも無理ありません。
しかも更に恐ろしいのがこちらのご自宅、電気・ガス・水道、全てのライフラインが止められて丸1年以上経っていたとの事。この大量のゴミ状態で生活できるのも凄いのですが、夜の真っ暗な状況や、夏の暑さ、冬の極寒を冷暖房無しで乗り切っているという逞しさ!トイレは近所の公園を利用。お風呂も使えない為、風呂トイレ共々ゴミで埋まっておりました。ゴミで埋まってるから使えなくなったのか、ライフラインを止められて使えなくなったからゴミが埋まってしまったのか…。卵が先かニワトリが先か…その辺は未だ謎のままです。
玄関から台所へと片付けていき、やっと部屋まで到達!

てか、どこで寝てたのー?一応部屋にエアコンも照明器具もありましたが、これらはずっと使用してないとの事。どうやってこの部屋で過ごしていたかは本当に謎です。これくらいゴミを溜めてる人はだいたい、動線とか寝床などがわかりやすくヘコんでたりするもんですが、生活動線も全く見当たりません。
…で、1番謎なのがこの方…公共料金を払わず全て止められていたにも関わらず、いろんな企業の株主をやっており決して貧乏という訳ではなかったという事。それを証拠に玄関に、『株主優待券在中』だの『ご招待』だのの類いの郵便物がわんさか届いており、それらが開けられる事なく期限が過ぎゴミとなっていました。

で、頑張ってみんなでここまで片付けて…。だいぶスッキリしました。これだけゴミが溜まっている現場あるあるで、床の素材が確認出来ると、作業の目処が立ち、俄然ヤル気が出てきます。
で、あともう少しでベッドの上やベランダの前辺りもキレイさっぱり、片付きそうな状況になったも関わらず、
『あっ!これはゴミじゃないから捨てないで』
と立て続けに家主の声。
何年も前の開けてないカレンダー、先程から何個も見つかっている爪切り、ビニール袋に入った衣類、埃の被ったぬいぐるみ…。
絶対にある事すら忘れていたであろう物をせっかくのこの機会に捨てようとしません。こちら的には、『この機会に全部捨ててしまえばいいのに…』と思う所ですが、本人が捨てないでと言うなら従うしかありません。

そういえば昔観たテレビ番組で、タレントさんがゴミ屋敷をキレイに片付けるという企画がありました。家主と何度も衝突しつつも部屋を綺麗に片付け『ありがとう』と熱い握手を交わし、感動で終わりそうだったのに、1週間後そこにスタッフさんが訪れると、家主が全く関係ない所からわざわざゴミを持ち帰り、それを片付いた自分の家に置いてた…という衝撃の最後を迎えたのです。もう理解ができませんでした。せっかく片付けて貰ったのに…。しかしこういう方は、スッキリした空間が多いと不安になるらしく、それをゴミで埋め尽くそうとする傾向があるとの事。多分一気に捨てられてスッキリし過ぎて、不安を感じてしまったのかもしれません。
今回の家主にもこちらから何度も『せっかくですからこの機会に捨てた方がいいですよ』
とか、
『もうずーっと使ってないですから、今後も使わないと思いますよ』
などと色々声掛けしてみましたが、頑なに捨てようとはしませんでした。
結局、ベッドの上のゴミは溜まったまま、作業終了となってしまいました。
最後、お会計の際…、
『あれ?私がここに置いてた20万円知らない?』
と言い始め、従業員全員、真っ青になりました。
作業を始める前に…

ここの一角は触らないで欲しいと言われていたので一切触らなかったのですが…
この辺にどうやらお金を置いていたそうで、なくなったと大騒ぎし始めたのです。
この場合…最悪トラックに積んだゴミを全部開けて探す事になります。バイトのメンバーに緊張が走ります。頼む!見つかってくれー!
5分程部屋の中を探し、見つからなかったのか、諦めてトラックから積んだゴミを降ろす指示が社員から下され、何個かゴミをおろした所で、
『あったー!あったよー!見つかった!』
神の声でした…。結局あの一角から見つかったとの事。一安心でした。なんならこの時、トラック1台では収まらず、2台に分けてゴミを積んだのですが、1台目はゴミを処理場に捨てに行った後だったので、一応処理場に向かうトラックを一旦その場で待機させ、2台目のトラックになかった場合はゴミを積んだまま現場に戻りゴミの中きら探す予定でした。考えただけでもゾッとします。
業社に廃棄を頼む際は、要る物、要らない物を明確に要る物は何かの間違いで捨てられない様、避けておく、養生テープや貼り紙をして捨てられない様に置いておきましょうね。勢いが乗ってきたら、目についた物はどんどん捨てていってしまいますので…。

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