祓魔師とシガナイくん②

大学の講義を雨が受講しているシーンから始まる。

教諭
「皆さんも知っての通り、12年前から謎の怪病〝怪人症候群〟が広まった」
「それまで普通に暮らしていた人がある日、突然、異形の者〝怪人〟へと姿を変え」
「そして、人間を襲う」
「当初、ウィルス性のモノと思われていた」
「しかし、実際には、怪人は人間を苗床にして成長し、羽化するという生態を持っている」
「今でもはっきりとした起源はわかっていないが、今から7年前」
「天使を名乗る者が現れ、自身らが怪人症候群を広めていると宣言した」
「天使の目的は〝新平等主義〟悪弱の淘汰であると」
「悪弱とはつまり悪い者、弱い者を指し……」

雨はつまらなそうに講義を聞いている。

と、突然、

???「流石に天使概論は聞き飽きましたかね?」

雨「……!」

話し掛けてきたのは、いつの間にか隣に座っていた男。
体格の良い男だが、特徴的な点として、顔面が金属で覆われている。

雨「し、シガナイ君!?」

それは、雨の新しい補佐人に就任したアンドロイドらしき男であった。
(補佐人は名前を教えてはいけないので、雨は〝シガナイ君〟と呼んでいる。本人が〝しがない補佐人〟と名乗っているので)

雨「ちょ、ちょ! その、えーと……!」

雨は色々と焦る。

シガナイ「あ、すみません、この顔はまずいですね」

そう言うと、シガナイは顔に手の平を当てる。
すると、シガナイの顔がみるみるうちに人間らしいものに変わっていく。
眼鏡をかけた地味な男だ。

雨(……そんなことできるんだ)

シガナイ「あ、ちなみにこんな顔もできますが……」

シガナイはいくつかの顔に切り替えて見せる。

シガナイ「どの顔がいいでしょうか?」

雨「な、なんでもいい……」

シガナイ「そうですか」

そう言うと、シガナイは最初の眼鏡をかけた地味な男に戻る。

雨「って、それだけじゃなくて、今は任務外でしょ!? 任務外は別に一緒にいなくても……」

シガナイ「え? 任務外は確かにそうですが、自分は普通に講義を受けているだけですけど?」

雨「え……?」

シガナイ「自分、この大学の1年生なので。よろしくお願いします、先輩」

シガナイはニコリと微笑む。

【シガナイ君(仮名)(18)大学1年 ※現役合格】

雨「え? えぇえ……!? な、な、なんで!?」

シガナイ「なんでって、大学の自由課目って学年横断で、受講可能じゃないですか?」

雨「い、いや……そういうことじゃなくて……」

雨(最近のアンドロイドって大学にも通うの!?)

教諭「そこ、ちょっと静かに!」

雨「……! す、すみません……」

教諭に注意され、雨は焦った様子で謝罪する。

がり勉ぼっちだが、美人の雨が珍しく注意されたことと、隣に男がいたことで、周囲は少しだけざわざわした空気となる。
※1話で出てきたギャル風の女の子と男子学生のカットを差し込む
 ギャル風の女の子は無表情、男子学生は少し怪訝そうな表情

雨は恥ずかしそうに俯く。

教諭「それじゃあ、今日の講義はここまで。次週までに〝天使の主張の問題点〟について自分なりの主張も交えレポートにまとめてください」

シーン変わる。
場所を変えて、食堂のテラスのテーブル席。
雨とシガナイが対面で座っている。

雨「ま、まさか……君が同じ大学に通っているとは思わなかった」

シガナイ「そうですよね。全く偶然って怖いですね!」

雨「……」

雨は「本当に偶然か?」とでも言いたげな訝しげな視線をシガナイに向ける。

シガナイ(ははは……雨さんの絶対零度の視線、沁みるぜ。もちろん偶然なんかじゃないんだけどね……)

シガナイ「ところで雨さん、天使概論の講義、なかなかえぐいレポートが出てましたね」

雨「え……? あ、うん……」

レポートの課題……〝天使の主張の問題点〟について。

シガナイ「問題点は置いておいて、雨さんは……どうして怪人や天使なんかと戦ってるんですか?」

シガナイは急に真面目な様子で尋ねる。

雨「……! それは……せ、責務かな……」

シガナイ「祓魔師の家庭として生まれた責務ってやつですかね……」

雨「う、うん……」

雨(本当の理由は……気安く他言できない)

フラッシュバックするような回想。

へたり込んでいる雨。(中3)

視線の先に、老人の後ろ姿。
さらにその先に、壮年の男女が不敵に微笑んでいる。
(壮年の男女は頭にリング、触手の集合体のような翼が生えている。)
老人は雨を守るように、壮年の男女の前に立ちふさがっている。

そして、壮年の男がつぶやく。

壮年の男「雨……お前は〝天使の子〟だ……」

雨(多くの人が知らない天使の真実……祓魔師の責務は計り知れない)

シガナイ「……」

深刻そうな表情の雨をシガナイは見つめている。

雨「と、ところで、そう言うシガナイ君はどうして補佐人に……?」


(そもそもアンドロイドに動機とかあるのだろうか? 正直、全くわからない)
(ってか、どうやっておじいちゃんに認めてもらったのだろうか……)

シガナイ「ははは……雨さんとは正反対で極めて個人的な理由ですよ」

シガナイは苦笑いする。

雨は不思議そうな顔をする。

回想

和風の道場のような場所(雨の家の道場)。
二人の男が対面で正座している。
一人は眼鏡地味男子姿のシガナイ。
もう一人は雨のおじいちゃんの凪助である。

凪助「どうしてもと言うから話だけは聞いてやるが……」

凪助は最初から威圧的な態度である。

凪助「弓堂のぼんぼんがなぜ補佐人を希望する?」

【弓堂 械(きゅうどう かい)(18) 弓堂財閥御曹司】

シガナイは真剣な顔つきで凪助に対峙する。
そして、質問に答える。

シガナイ「単刀直入に申し上げまして、お孫さんが大変好みです」

ぶちっ!
凪助の額に怒りマーク。

凪助
「他の奴らと大差ねえな。ぶっちゃけてるだけマシだが」
「どこの奴だ? 中学か? 高校か?」

シガナイ「自分が小学生の時、雨さんは中学生でした」

凪助
「……!? ませてんな、君……」
「いやしかし……確かに雨はかわいい。どうしてこんなに可愛いのか? と思える程、可愛い」

シガナイ「わかります。では採用ということでよろしいでしょうか?」

凪助「よろしくねえわ!」

シガナイ「……!?」

凪助「なんで、〝なんですと!?〟 みたいな顔してんだよ! 面接ってのは建前も必要なんだよ! これだから何言っても許されてきたおぼっちゃんは……!」

シガナイ「お言葉ですが、古宮様。私はこの面接を受けることを家庭から許されていませんよ?」

凪助「……!? な、なるほど……」

凪助は少し虚を突かれたような表情になる。

凪助「だがな……雨は傷ついている。祓魔師である以上、つきものであるが、度重なる補佐人の死。そして複雑な家庭事情……」

シガナイ(複雑な家庭事情って……自分で言いますか……)

凪助「残念だが、不採用だ」

シガナイ「……! な、なぜですか!?」

凪助「君が雨を大事に思っているからだ」

シガナイ「……!」

凪助「そうであるほど、君が死んだときに雨が悲しむ」

シガナイ「そういう意味では、私は死にません」

凪助「あん? 何を根拠に……」

シガナイ「……」

シガナイは、凪助に自身の本当の姿(金属の顔)を披露する。

凪助「な……!?」

シガナイ「私は機械兵アンドロイドですから。雨さんを守るなら、人間辞めるくらいの覚悟が必要かなと思いまして!」

シガナイは機械の顔で、にかっとする。

シーン変わる。
食堂のテラスのテーブル席。
雨とシガナイが対面で座っている。

シガナイ(これだけのことやって、正体を明かせないのが辛いぜ……)

シガナイは独り、悔しそうに唇を噛みしめる。

雨「……?」

それを雨は不思議そうに見ている。

すると……

雨のデバイスに通知がある。

デバイスには、「東館4Fの多目的室に来て」という呼び出しであった。

雨「シガナイ君、ごめん、ちょっと用事ができた」

シガナイ「あ、はい……承知です。自分も次、必修科目なので」

雨「うん、わかった。また今度ね」

シガナイ「はい……!」

また今度と言われてシガナイは嬉しそうであった。

雨はひとけの少ない多目的室へと足を運ぶ。

そこには、女の後ろ姿があった。
※一話で雨からノートを借りたギャル


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