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第8の毛色:がんばれ!ホッカイドウ競馬のコラム(第209回)より

[ご注意]このコラムはあえて2007年当時に執筆したままの状態で掲載しています。

1991年、財団法人日本軽種馬登録協会はサラブレッドの毛色である、栗毛、栃栗毛、鹿毛、黒鹿毛、青鹿毛、青毛、芦毛という従来の7種類に、新しく白毛を加えて8種類とすることを決めました。
同協会が発行している「馬の毛色及び特徴記載要領」によると、それぞれの毛色の特徴は、次のようになっています。

■栗毛(くりげ:Chestnut)
被毛が黄褐色で、長毛(たてがみや尾のこと)は被毛より濃いものから淡く白色に近いものまである。
■栃栗毛(とちくりげ:Dark Chestnut)
被毛が黒味がかった黄褐色から黒味の非常に濃いものまでありますが、黒色にはならない。長毛は被毛より濃いものから、白色に近いものまである。
■鹿毛(かげ:Bay)
被毛が明るい赤褐色から暗い赤褐色までありますが、長毛と四肢の下部は黒色となっている。
■黒鹿毛(くろかげ:Dark Bay)
被毛の色合いが黒味がかった赤褐色で、黒味の程度により相当黒く見えるものまでありますが、眼の周辺、腋、下腹及び内股は褐色で、長毛と四肢の下部の色は被毛の色の濃淡にかかわらず黒色になっている。
■青鹿毛(あおかげ:Brown)
全身がほとんど黒色で、眼及び鼻の周辺、腋、等がわずかに褐色になっている。
■青毛(あおげ:Black)
被毛、長毛ともに黒色である。
■芦毛(あしげ:Grey)
原毛色が栗毛、鹿毛又は青毛等であるが、被毛全体に白色毛が混在し、年齢が進むにつれて白色の度合いが強くなるが、その進度は個体によりまちまちで、その色合いも純白になるものからほとんど原毛色を残したものまである。生時は原毛色にわずかに白色毛を混生する程度である。
■白毛(しろげ:White)
被毛は全体がほとんど白色であり、わずかに有色の斑紋及び長毛を有するものもある。眼が青色のものもある。皮膚はピンクで、一部に色素を有するものがある。芦毛との著しい違いは,生時にすでに全体が白色を呈していることである。

細かい毛色の違いは難しいかもしれませんが、実際のレースの馬柱を見てもらえば分かる通り、サラブレッドで最も多い毛色は鹿毛とされています。おそらく馬柱に記載されている毛色のほとんどが鹿毛ですよね。統計上では馬の毛色は約5割を鹿毛が占めていて、続いて栗毛が約24%、黒鹿毛が約14%、そして少ないと思われがちな芦毛が約7%、さらに青鹿毛が2~3%、そして青毛と栃栗毛が1%以下と言われています。さらに白毛の馬が生まれる確立は青毛や栃栗毛以下ということで、本当に極めてまれな存在だというわけです。
体系的にまとめられたものとしては最古のサラブレッド血統書である、ジェネラルスタッドブックが発行された1971年以来、サラブレッドには厳格な血統登録が行われるようになったわけですが、このジェネラルスタッドブックに白毛の馬が登場したのは意外にも遅く、1896年にアメリカで生まれたホワイトクロスという馬が初めてのことでした。この馬の両親は栗毛と青毛で、葦毛のように両親のどちらかからの遺伝ではなく、いわば突然変異で生まれた馬だということがわかります。
数少ない白毛の馬ですが、これまでに日本でも16頭の白毛馬が登録されています。しかしその中で勝ち星を挙げたのはハクホウクン、ホワイトワンダー、ホワイトペガサスのわずかに3頭なのです。そんな中、つい先日デビュー戦に臨んだのが父:ハクホウクン参駒のハクバノデンセツです。2007年2月2日に行われた川崎競馬の3歳戦に出走したハクバノデンセツは、単勝2.5倍の一番人気に推されましたが、残念ながら9着に敗れています。
日本で登録されている現役の白毛馬は、このハクバノデンセツを含めても3頭しかいません。すべて3歳馬で、中央競馬所属のホワイトベッセル(安田隆行厩舎)と、もう1頭はホッカイドウ競馬所属のマルマツライブ(楠克美厩舎)なんですね(話題になったシロクンはいつの間にか登録抹消されて、乗馬に転向していました)。
さて、この3頭のうち、白毛馬の4勝目を挙げるのはどの馬なのでしょうか? それともこの馬達以外の馬なんでしょうか?
いや、4勝目だなんて小さいことを言わず、5勝、6勝、そして初重賞勝ちと、もっともっと活躍して欲しい、そう願うのは僕だけじゃないはずです。ガンバレ! 白毛馬たち!

【現代でのあとがき】
たぶん、このコラムをお読みになった方は、いったい何いってるの? と思ったことでしょう。ただね、2007年時点での白毛馬って、こうだったんですよと。ソダシはもちろんのこと、ハヤヤッコシロニイもこの世に生まれていません。そもそもソダシの母のブチコも生まれていませんからね(苦笑)。かろうじてユキチャンが競走年齢に達したところで、この歳の終わりに初勝利を挙げていたくらいといったところですから。
そう、このコラムを書いたあたりから、白毛馬の勝利を目にするようになりました。まずはコラムにも登場したホワイトベッセルが中央競馬所属馬として初の勝利を挙げ、続いて前述のようにブチコがと、後を続く馬たちが現れます。
翌2008年、ユキチャンが「白毛馬による芝競走の勝利」を上げます。さらに、関東オークスを勝利したことで、「白毛馬による重賞競走の勝利」をも達成しました。そして2020年……と、それはまあもうよくご存じですよね。
白毛馬は弱い、勝てない、そういわれている時代がありました。2007年当時はそんな風潮がありました。でも、今はもう違いますよね。シラユキヒメの血をひく馬たちがあっさりとひっくり返してくれました。
さて、だからこそまたゲン担ぎの意味を込めて、もう一度同じ言葉で締めたいと思います。
初重賞制覇はユキチャンが、そして史上初のG1勝利はソダシがとりました。さて、次のG1勝利はどの馬が獲るのでしょうか? もっともっと活躍して欲しいと願うのは僕だけじゃないはずです。ガンバレ! 白毛馬たち!


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