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ビジネス文書以上内容証明未満なレターの起案


■ 内容証明の起案は大丈夫なんだけど…

「内容証明や準備書面の起案は大丈夫なんだけど、そこまでいかないようなソフトだけど法律的要素の絡むレターの起案がいまいち苦手…」

例えば、以下のようなケースで、ソフトな法律文書を起案する必要があるけどどうにも筆が進まない。そんな悩みを持っている弁護士や法務の方は意外と多いのではないでしょうか。

● 契約上トラブルが発生したけど紛争化はさせずビジネス的に解決したい
● 権利侵害の警告を受けたけど敵対的な対応をしたくない
● 知的財産権等の権利の売却オファー・交渉

このようなお悩み解消のヒントの1つとなれば思い、本noteでは、私が個人的に考える「ビジネス文書以上内容証明未満なレター」への苦手意識を解消するための基本的な考え方と、起案時の具体的な対策をご紹介したいと思います。

※ 今回のご説明はあくまでも、レターのうちの本質部分=法律論部分ではなく、レター独特の言い回しレベルで躓かないようにすることを目的としたものです。
法律論部分に関しては、今回ご紹介するテクニックではなく、法的知識・分析力が最も重要&腕の見せ所であることは言うまでもありません(念のため)。

■ 苦手の原因:ビジネス文書に不慣れなこと

そもそも、なぜ内容証明や準備書面といった世間一般的には読みにくい&書きにくいザ・リーガルな書面を作成できるのに、それをソフトにしたレターになると手が止まってしまうのでしょうか。
私は、文章力ではなく、「社外向けのビジネス文書に不慣れなこと」がその答えであると考えています。

どういうことかというと、「ビジネス(要素)」←→「リーガル(要素)」という評価軸でみると、一般的な社外向けのビジネス文書と内容証明等の法律文書とは、全くの別軸ではなく、下図のように一つの軸にあるものと整理できます。

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ここにいう「ビジネス(要素)」と「リーガル(要素)」は、以下のようにそれぞれに特有な内容・ワードチョイス・言い回しを意味するものです。

● ビジネス要素 = ビジネス文書っぽい内容・ワードチョイス・言い回し
● リーガル要素 = 法律文書っぽい内容・ワードチョイス・言い回し

このような整理を前提とすれば、一般的な社外向けのビジネス文書と法律文書の差異は、ビジネス要素とリーガル要素の強弱(又は有無)にあるといえ、ビジネス文書と法律文書を以下のように分類することができます。

● ビジネス100%(or とても強い)文書 ▶ ビジネス文書
● リーガル100%(or とても強い)文書 ▶ 法律文書

ここで、「ビジネス文書以上内容証明未満なレター」は、上図でいうとビジネスとリーガルの中間に位置する文書、言い換えれば、法律文書からリーガル要素を減らし、ビジネス要素を増やしたものということになります。

ところが、特に弁護士にとって、法律文書作成の機会は豊富にあるものの、社外向けビジネス文書の作成に関与する機会は通常ありません。
そのため、普段慣れている法律文書にプラスすべきビジネス要素を自分の中に十分にストックできていないことが多いのではないでしょうか。

以上から、ソフトな法律文書が苦手な原因は、ビジネス要素のストック不足 = 一般的な社外向けのビジネス文書への不慣れであると考えられるわけです。

■ ビジネス要素とリーガル要素のバランス

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さて、前述のように、「ビジネス文書以上内容証明未満なレター」は、ビジネスとリーガルの中間に位置する文書です。
もっとも、中間といっても、レターの内容によって様々なケースがあり得るでしょう。

そのため、具体的な起案に際しては、以下のポイントを検討する必要があります。

■ ビジネス要素とリーガル要素のバランス
ビジネス要素とリーガル要素のバランスは何:何?

例えば、「今回は友好的なスタンスでいきたいから、ビジネス要素を強めて、ビジネス7:リーガル3でいこう」とか、「紛争化が見えていてしっかり主張反論する必要があるから、リーガル要素を強めて、ビジネス3:リーガル7でいこう」といった感じですね。
個人的には、レターの「温度感」と表現されるのがこのようなビジネスとリーガルのバランスであり、起案者の個性や腕の見せ所の一つであると考えています。

■ ビジネス要素のストック

ここまで「ビジネス文書以上内容証明未満なレター」の苦手意識を解消するための考え方を抽象的に説明してきましたが、以下では、具体的に、苦手の原因、つまりビジネス要素のストック不足 = 一般的な社外向けのビジネス文書への不慣れを解消するための具体的な対策をご紹介します。

実はこの対策は簡単で、一般的な社外向けのビジネス文書に関する書籍を手元に置いておくことで対応可能です。

※ 一応2冊ご紹介しましたが、正直、いろいろなビジネス文書の例が掲載されている(&自分が気に入った)書籍ならなんでも良いと思います。

このような書籍では、ビジネス100%の文書が多く紹介されています。
そこで、起案に際しては、目指すビジネスとリーガルの割合に応じて、このような書籍から、ビジネス的な言い回しを拝借してビジネス要素として法律文書にプラスしてあげることになります。

■ リーガル要素のストック

リーガル要素に関しては、過去の実際の内容証明、警告書、準備書面等や、それらに関する書籍を参照することで確認可能です。
この点は皆様の得意分野だと思いますので、特別な対策は不要でしょう。

■ おわりに

さて、以上のように、今回は「ビジネス文書以上内容証明未満なレター」作成の考え方・コツについてご説明しました。
今回のnoteが皆様の悩みを解決する一助になれば、筆者としては望外の喜びです。

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