見出し画像

「ハマスホイとデンマーク絵画」展に行ってきました

 以前から気になっていた「ハマスホイとデンマーク絵画」展に行ってきました。
 美術展に行くのは数年ぶり数回目なのですが、まとまった文章でないと表現できなさそうなほど感銘を受けましたのでnoteに残しておくことにしました。

「展覧会」という形式について感じたこと

 まず初めに書いておきたいのは個々の絵画だけでなく展覧会全体として、ひとつの作品になっていることを強く感じたということです。
 ライティングや展示順・展示室の意匠だけでなく、額装や単語のひとつひとつさえ想いを込めて選ばれたことが伺える解説文、係員の方の衣装や立ち居振る舞い、そして場合によっては観覧する私たちも。
 この展覧会に限ったことではありませんが今日は特にそういう感想を抱きました。

「絵画は様々に楽しめる」ということについて

 また、絵画はいろいろな楽しみ方ができることに気づくことができました。
 例を挙げると、
・明確な、あるいは微妙なコントラストで描かれている曲線のリズムを感じてみる
・全体の構成や明暗などに誘われるままに視線を動かしてみる
・色の調和と対比を楽しんでみる
・様々な技法で作り出された圧迫感と開放感を体で感じてみる
・タッチの変化や筆の勢いに心を乗せてみる
等です。
 このように、実物であるがゆえの素晴らしい鑑賞体験をすることができ、もっと色々な絵を観たい!というモチベーションが生まれました。
 さて以下では個々の作品の感想を思いつくままに記していきたいと思います。

クプゲとの出会い

 まず「デンマーク絵画の黄金期の画家で最も優れた一人」と称されるクレステン・クプゲです。
 今回の展覧会で初めて知った画家なのですが、モチーフ・構図・色遣い・明暗のバランス・演出技法のすべてが印象深く、この記事を書くきっかけになるほど強く惹かれました。

『カステレズ北門の眺め』
 カタログでは質的に違う感覚しか得られないのですが、一目見て胸が苦しくなるくらい感動しました。
 まるでクプゲがこの絵を描いているところに立ち会っているような、または彼が今まさにそこで、様々な気持ちや意図を強く自覚しながら技の限りを尽くして絵筆を運んでいるような濃厚な印象を受けたのです。
 どのような視覚的刺激からそのような印象を受けたのかを省みてみました。
 まるで本物のような、滑らかながら柔らかに波立っている、河畔の風景や空の青を映した川面には、彼が見た風景を自分も見ているかのような、あるいは本当にそこに居るような臨場感を感じていました。
 また、灰色がかった輪郭のはっきりしない薄雲が大半を占める空に、ひとつ浮かぶ白と青で描かれた陰影に富む雲が、刻々と姿を変えつつ風に流されていくように感じられ、静的な絵画の中に時間を生み出しているように感じられました。
 さらに、その雲を動かす風が画面に静けさをもたらしているようにも思えました。
 ようやく目を離せたときには小旅行から帰ってきたときのように気持ちがリフレッシュしていました。
 隣に展示されていた『ランゲリニェと軍港を望むカステレズの風景』も、画面の3分の2を占める静かな空の中央に位置して、自然の雄大さを感じさせる雲と、画面を横切るように配置された様々な緑色の木々、それからその向こうに見える軍艦のマストの先端、さらに手前から右奥へと続く黄色の土手と道が、奥行きと開放感を感じさせてくれました。

 …と感動した勢いのままで、感じたことを言葉にしてみたら、思っていたより長くなり、書き疲れしてきてしまったので、いつか追記するかもしれない前提で、以下ではハマスホイの作品の中で強く印象に残ったものについて記載していきます。

ハマスホイの風景画の感想

『農場の家屋、レスネス』
 手前の建物の陰になっている奥の建物の右端の窓のあたりがひときわ明るい色で描かれており、自然に視線が誘導されて「その角の向こうにはどんな風景が広がっているのだろう」と思い(思わされ?)ました。

『ライラの風景』
 手前に描かれている丘の、なだらかな曲線が穏やかな気分をもたらしてくれました。
 空と丘の境界の曲線、手前から奥に続く色のグラデーションによる丘の曲線と、空の直線的なグラデーションや、横にも奥にもまっすぐに配置された群雲の対比が楽しかったです。
 また、森の濃い緑も差し色として画面に安定感を与えているように見えました。

『ロンドン、モンタギュー・ストリート』
 左手前の柵の圧迫感を避けるように視線を右に動かしていくと奥へ続く道に視点が誘導され、遠方を見渡せる開放感を味わえました。

ハマスホイの室内画・人物画の感想

 以上、思いもかけずクプゲに心を奪われたこともあり風景画の感想が続きましたが、室内画や人物画に関しては北欧独特の気品のある色合いやデザインの調度や衣類が見ていてとても気持ちよかったです。
 特に、人物の表情が見えないアングルが多いこともあり、その感を一層強めていたと思います。

展示方法について考えたこと

 また、ピーダ・イルステズの『縫い物をする少女』だったかと記憶していますが、少女と呼応するように明るめに描かれている絵の額と、とてもよく似た額に収められていて、合わせ鏡やテレビの中のテレビを見たときのような軽いめまいを感じました。
 私の受けた印象が、この額を選んだ方の意図したものかはわかりませんが、どの額縁も、鑑賞者に与える印象を計算して選ばれているのだろうということを実感を持って気づかせてくれました。

最後に

 芸術鑑賞に慣れた方にとっては当たり前すぎることもあるかと思いますが、私にとっては絵画鑑賞という行為に目が開かれたような、とても印象深い展覧会になりました。
 開会直後の平日の午前中ということもあり心ゆくまで鑑賞できましたが、多くの人が知ることになると当然ながら混雑するとのことでしたので、もし興味を持たれた方がいらっしゃったら早めに参観された方がよさそうです。

もし、ご存知でしたら・・・

 本展覧会のことをネットで調べていたら画像を貼付した記事を幾つか見かけました。
 私も記事内で紹介した絵を埋め込みたいのですが、電子データの入手先や著作権等による扱いがよくわかりませんでした。
 自分でも調べてみますが、何かご存知のことをご教示いただければ幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?