2018年9月18日公開 39分
ここからは地引網の収穫です。薄い冊子を作るイメージで自分勝手にまとめています。
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「理系、BL、AR、道具としての科学」
1. 湯葉さんを腹立たしく思ったよう先輩。
最初~4分55秒
● 理系の人間を引き付ける表現を書ける人間が、誰を主人公にしたら設定にハマるかを考えたとき、理系の大学院生しかいない。そこまで含めてズルい(いん)
● 小説や比喩表現のネタは本人の中に相当蓄積があると思う。「ちょっと書いてみよう」で出てくる量じゃない(よう)
● もしかしたら単なる天才かもしれない(いん)
(注2)
2. BLメガネで見え方が変わるなら。僕らは。
5分30秒~10分35秒
● 専門知識によって世界の見え方が違うのではないかと思う。生命科学や医学の専門知識をもっている自分たちは、そうでない人とは同じものを見ても印象や認識の仕方が違うことがあるのかもしれない。違う業界の人に話しても通じないなー、という寂しさも含んだ感情を持つことがある。(よう)
● 10年位前にBLにハマったタツオさん。今や「このBLがすごい」の選者も務めている。そのタツオさんはBLが好きになってから世界の見え方が変わった、と言っている。モノクロとフルカラーくらい違う、と。それをタツオさんは「BLメガネをかける」と表現している。我々はざっくりいうと「理系メガネ」をかけているのではないか。いっちーはどういうのがあるかな、と聞きたい(よう)
● 「重力アルケミック」でこれだけげらげら笑えるのは理系メガネをかけている楽しみじゃないのか。(いん)
●たしかに興味のない人だとよくわからなくて面白くない、という人もいるかもしれないが、それはどのジャンルでもあるかなあ、とは思う。(よう)
3. 「ブサイクメガネ」をかけたとき。
10分35秒~19分35秒
● 「塁-かさね-」という漫画の最終巻をさっき読み終わったのだが、これは「ブサイクメガネ」をかけてないと泣けない作品だと思った。(いん)
● 美しい人、かっこいい人が見てる世界を見てないんだ、という心の中の悔し気な劣等感がある人だと超絶おもしろい。多分ほとんどの人が当てはまる。どのくらいよかったかと言うと、「『シンゴジラ』を見て今年のベストだ!と思った直後に『この世界の片隅に』を見てギャーッとなった」時くらい。この場合「シンゴジラ」に当たるのは「フラジャイル」や「阿吽」。「塁-かさね-」はオールタイムベスト(いん)
●メガネをかけると世界の認識の仕方が変わるということなんだろう。この作品は外見の認識の仕方に共通点がある人は、感情移入ができるということだね(よう)
● 「塁-かさね-」はそのメガネを多くの人がかけているから、かけてない人はかわいそうだな、という話になる。「フラジャイル」は、「病理メガネ」をかけているぼくが世界で一番面白く読んでいると思うけど、病理医のなかには「フラジャイル」が嫌いな人もいる(いん)
● メガネをかけているから好きとはかぎらない。見え方が変わるだけで、作品に対する好き嫌いは総合的に決まってくる。BLメガネもBL全部をさ好きになるわけではないと思う。自分に違うセンサーが内蔵された感じで、情報が増えるということだろう。知的好奇心がある人にとっては新しいものの見方ができたってことが喜びだから。(よう)
● 知的好奇心を持つ人ばかりではないということもある(いん)
● 摂取するのが面倒だな、と思うときもあるから、常に好奇心が発動しているわけでもない(よう)
4. BLはAR!
19分35秒~21分40秒
● ARって現実の情報の上にさらに情報を乗っけるってことで、それは映像でなくてもいい。AR三兄弟っていうARのことをいろいろやってるユニットみたいなのがあって(注3)、そのリーダー的な人が「球場でラジオの野球中継を聴いてるおじさんはARだ」って言う。実況があって選手の情報や戦略の解説もあって、目の前の試合に情報が増えている。何かしらのメガネをかけて、ものの見方が変わってきているっていうのは、常にARだと思う。(よう)
5. 話題はいよいよ理系メガネ。ですが。
21分40~36分32秒
● 自分たちは息をするように生命科学や医学を仕事として扱っているから、当たり前になりすぎて、メガネをかけていない人に眼鏡越しの光景を一生懸命別の手法で説明するんだけど、なかなか難しい(よう)
● ツイッターをARのツールっぽく使えると最強で、タイムラインをうまく作れればできるんだけど、ノイズが多くて難しい。ニュースがあると、それについてそれぞれに詳しいフォロワーが一言語って去っていくようにしたい。コツはダジャレを多発するひとでまとめておくこと。外付けCPUみたいになる(いん)(注4)
● 理論物理やその周辺の共通言語は数学。数学がわからないとやってることが全然わからない。理論物理学の大栗博司先生も、超弦理論や重力について、新書なんかで相当わかりやすく書いてくれてるけど、数学言語を自然言語に翻訳しているから無理がある。ヨーロッパの歴史をやろうという人がラテン語を知らなければ話にならないように(よう)
● 同じテンションで言うと、僕がかけたいメガネはラテン語メガネ。言語メガネを通して日本語以外の文化を解釈したい。(いん)
●ブラタモリもARだし、メガネだと思う。地理的、歴史的知識がある人は現代の東京の街並みも全然違う認識をしているはず。これはメガネをかけてない人も説明されれば、おおっとなる。でも常人から一番遠いもの、最も理解しづらいのが数学メガネではないかと思う。サイエンスリテラシーが問題になるのは、専門的な教育を受けてない人にとって、メガネがかけづらいからなのではないか。歴史や文学は深い世界はあるけど、入り口が覗きやすいっていうのはある。(よう)
6. どうしてもひとこと申したい
36分32秒~最後
*************** 注 ****************
注1・最初に言っときたいことがある、と言われて一瞬身構えるヤ先生。その後ちょっとホッとしている様子がいいです。しかし最後の最後にまた言いたいことを言われて満身創痍になってしまうのがまたいいです。
注2・当時商店街近くに住んでいた(今も?)よう先輩の、家の近くでお祭りが始まり、お神輿をかつぐ音が聞こえていたらしい。録音に乗るかも、とここで懸念していたよう先輩だったが、残念ながら(?)聞こえません。
注3・勉強不足でまったく知らなかったのですが、「コルク」の佐渡島庸平さんが設立に関わっているユニットでした。しかもWikipediaによれば「過去、『AR十三兄弟 公開オーディション』で募集したメンバーが十人いる(うち、十男は菊池良、十二男はサンキュータツオ)」とのこと! すごい人たちってみんなどこかしらで繋がっててコワイです。
注4・このくだり、かなり長くて丁寧な説明をしていておもしろいのですが理系メガネの趣旨とはややズレるので大きく割愛してしまいました。大谷翔平や樹木希林の名前はこの中に例として出てきます。
注5・このツイートの連ツイに湯葉さんがリプをしています。そして続けてヤ先生がツンデレ全開になっていて大変ほほえましいので、ぜひ見てください。
************** 感想 ****************
理系メガネの話、とはいうものの、この回では「メガネ」という、物事の認識を深める知的好奇心のフィルターのような心的装置の概念の共有が話題のメインでした。
個人的にはよう先輩の「科学は道具である」という認識そのものが、先輩の理系メガネの見え方、という気がして激しく「なるほどなー!」と思いました。よう先輩は科学の内側にいる人ですが、ちょっと突き放したような、外側から見ているような科学のとらえ方がとても新鮮です。慎重に言葉を選びながら話す語り口も含めて、よう先輩の考え方が好き、と思った最初の体験だったと記憶しています。
見えないもの、見たことのないものを見たいと語ることはできるけど、当たり前のように見えていることを「これは見えてます」とことさら説明するのって意外と難しい。だから理系メガネをかけているお二人が盛り上がる内容が、理系メガネで見えているものよりも、それを持っていない人や、自分たちが持ちたいメガネのことになるのも道理だと思いました。