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オンライン講座でグレイス・ペイリーの短篇を読みました

 5月23日の夜7時半からNHK文化センターのオンライン講座「英語で読みたい!アメリカ文学」で、グレイス・ペイリーの短篇"A Conversation With My Father"を読みました。
 病床にある父親が、作家の娘に向かってあるお願いをします。自分はチェーホフやモーパッサンのような作品が好きだが、お前は奇妙なものばかり書いている。たまには小説らしいものを書いたらどうだ。そこで娘は作品を書いてみるのですが、全然父親の期待に応えられません。というか、応える気がありません。
 彼女の作品の主人公は中年の女性で、麻薬中毒になった息子との接点を持ち続けるために、自らも麻薬中毒になります。けれども息子は恋人ができ、彼女が極端な健康志向だったため、突如息子も健康志向に目覚め、麻薬中毒の母親を軽蔑して家を出て行ってしまいます。
 これは悲劇だし、もう彼女には未来はない、と言い切る父親に対して、語り手の娘が、人間は何歳からでも、何にでもなれる、と断言するところが、不思議なほど感動的な作品です。
 今回も受講生の方々はさまざまな意見を出してくれました。中でも、小説を構成する要素に一旦分解し、それをループにしてつなげる、という現代的な形でペリーが作品を書いているのではないか、という意見に深く説得されました。なるほど、そんなふうに読むと、ペイリーの作品も理解しやすくなりますよね。
 その他、英語圏の作品に出てくる冗談は、日本の感覚ではわかりにくい、という指摘もありました。確かに、日本の漫才文化とアメリカのスタンダップコメディ文化とは決定的な違いがあるような気がします。
 今回もとても楽しい時間を過ごすことができました。どうもありがとうございました。次回は6月19日で、作品はアイザック・バシェヴィス・シンガーの"The Reencounter"です。

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