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【報告】オンライン講座でローリー・ムーアの短編 "Starving Again" を読みました

 3月15日の午後7時半から、NHK文化センターの講座「英語で読みたいアメリカ文学」でローリー・ムーアの短編 "Starving Again" を読みました。
 ローリー・ムーアというと、90年代ぐらいにアメリカでも日本でも結構流行った作家で、僕はその独特のユーモアなんかがとっても好きでした。岩本正恵さんが訳した『アメリカの鳥たち』なんて本当に最高の本でした。今はちょっと人気も下火ですが、今回読んでみて、やっぱりすごくいい作家だなと思いました。
 話の内容は単純で、主要登場人物はたったの二人です。場所はマクロビオティックの自然食レストランで、中年に差し掛かったかな、ぐらいの男女がテーブルについて、ホールスタッフが注文を取りにくるのを待っています。でもこれが全然来ないんですよね。
 男性は離婚したばかりで、元妻がほかの男と付き合いだした。それが辛くてしょうがない、なんて言ってます。女性の方は彼の昔からの友達なんでしょうか、彼との仲はそこそこ良さそうですが、彼のことを男としては見ていなさそうです。
 そして恋愛の話とか、自然食の話とか、「ウィアーザワールド」の話とか色々しながら、なんとなく時間を過ごしています。男性の方は、実はちょっと女性の方に気があるっぽいですが、女性の方がそれをしっかりわかっていて流している、という感じです。
 皮肉を言ったり、冗談を言ったり、最近の話題を連想で話したりしながら、たわいもない流れがだんだんと深まり、現代の人々における精神的飢餓みたいな話に入って行き、それでも全然重くならない、というのは凄まじい実力の作家だなあと思いました。
 自己啓発とか、ニューエイジとか、当時流行っていたちょっと左翼っぽい文化をパロディ化しながら語っているところが、なんだか読んでいてすっと入ってくるんですよね。洒落ていて、心に刺さって、なおかつ重くなりすぎない、というのはアメリカ現代文学のすごく魅力的なところなんじゃないかな、と思いながら読んでいました。
 この作品を英語で読み取るのはそこそこ難しいのですが、受講生の方々はわりとノリノリで議論してくれました。本当にNHK文化センターは実力が高い方が多いですよね。こうした講座に20人以上の方が出席してくれるということ自体すごいです。
 この講座はとりあえず3月のこの回が最終回ですが、4月からは20世紀以降の作品に絞った新講座が始まります。しかも一年中、随時新受講生募集中です。ご興味があれば、会いに来てくださると嬉しいです。


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