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米中首脳会談の開催は間近の目算 対面対談を行う事自体に大いに意味がある

安倍元首相が亡くなられたことは、海外でも非常に高い関心をもって捉えられています。民主国家はもとより、権威国家からも本当に残念と追悼の声が上がっており、さらに台湾では市内のシンボルビルである台北101で「ありがとう」という日本語のネオンが装飾されました。今後、ここまで海外から惜しまれるリーダーは誕生できるのか・・・しかも、一度目は1年で退陣し、再チャレンジでの長期政権は前代未聞でした。今は、その在りし日に築かれた無形資産に感謝しつつ、参議院選挙で勝利した岸田首相には、それを最大限活かしていただきたいと願うばかりです。


世界の政治経済が揺れる中ですが、ここにきて、にわかに、対面での米中首脳会議の早期開催が現実を帯びてきたのは、朗報と言えそうです。G20外相会議でブリンゲン国務長官と王毅外相(正式には外交部長)が早期開催で合意したと伝えられています。例え水と油でも、話し合いの場を持つこと自体に大いに意味があり、不要論のささやかれるG20ですが、チャネルとしては必要だと、個人的には思うところです。



中国の場合、王氏の上位に、楊潔篪中央外事工領導弁公室(党の外交組織)主任がおり、外交の事実上のトップは王氏の前任の外交部長であった楊氏となります。楊氏は、ブリンゲン氏とは2021年3月にアラスカで丸2日間対談しています。さらに、国務長官並みの実権を持つサリバン国家安全保障担当大統領補佐官とも、2022年3月にローマで7時間に及ぶ対談、6月にも再度ルクセンブルクで対談しています。

その内容はいずれも平行線で、少なくとも冒頭においては激しい応酬だったと伝えられていますが、冒頭以降については、ブラックボックスともいえます。そのため、その場において、トップ対面対談に向けた筋道は程度できていたとみるのが自然でしょう。

米中の対面首脳会談が実現すれば、成果として期待されるのが、米国による対中制裁関税品目の削減です。トップが対面で会う以上は、少なからず成果が必要であることから、双方で最小限の合意はできているとみてよいでしょう。表向きは、両国の貿易拡大、不均衡是正をうたいますが、水面下では、安保面での対峙は平行線ということになるのかもしれませんが・・・。

他方、中国は、正確な時期は明確になっていませんが、秋(9月~10月頃)には5年に一度の党大会、米国は11月に、政権の半期通知表ともいえる中間選挙を控えています。中国側は、大きなサプライズはもれ伝えられていませんが余談は許しません、米国側は、与党民主党の苦戦が指摘されています。そのため、米中共に、大胆な妥協はお互いしにくい状況下にあることは残念です。

また、楊氏は、中国共産党の最高意思決定機関である政治局の委員ですが、いわゆるチャイナ7と言われる常務委員ではありません。楊氏が、どこまで、習近平主席と濃密な意思疎通ができているかは、外からは計り知れない部分も残っているとみられています。

米中首脳会談が対面で開催され、制裁の賦課品目数が削減されても、その後も楽観的になれる状況ではありませんが、例え、表面的な言い分は平行線でもトップ対話が行われ、今後も継続されれば、それ自体に大いに意味があります。緊張を和らげる、少なくとも、一線を越えないことを暗に示すことになるためです。

地球儀を俯瞰する外交を掲げてきた安部元首相の悲報が、民主国家だけでなく、世界的に権威主義で名を馳せている国の元首からも追悼の声が届いているのは、安部氏が手強い交渉相手だったからこそのリスペクトのようにも思えます。体制は大きく異なっても、個人レベルでわかりあえた好敵手のような部分があったのではないかと推察いたします。

最後は人と人との関係、安易な妥協はしなくてよいが懐には入って太い関係は作れ、安部前首相の無言のメッセージをそのように受け止めております。米中対面首脳会議、続いていくことが期待されます。合掌。



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