インド太平洋経済枠組み(IPEF)になぜ13カ国集まったのか? 「経済安保」の「経営安保」への示唆とは

さて、バイデン大統領が帰国されました。一番ご尽力頂いたのは、岸田総理は元より、お茶でもてなされた裕子夫人だったかもしれません。警備の皆様は寝る間もなかったのではないでしょうか。多くの方々にご尽力いただいたこと、深く感謝申し上げます。

結果的に、13カ国がIPEF(以下参照)に参加したことは、予想以上だったのではないでしょうか。無論、直前の米ASEAN首脳会議、さらにはGWの岸田総理のASEAN訪問が効いているのでしょう。

13カ国は、日米豪印のクアッド4カ国、ASEAN10カ国中、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、ベトナムの7カ国、そこに、バイデン大統領が日本の前に訪問した韓国と、ニュージーランドでした。

個人的には、インド、インドネシアは、そこまで積極的ではないのではと考えていましたし、最近隣の大国の企業の台頭が目立つタイも内心ではそうではないかと睨んでいました。

特に、インド、インドネシアは、自由貿易に対しては積極的とは言い難く、とりわけインドは、東アジアからの製品流入懸念からRCEPから離脱しています。関税引き下げのほうがまだ荷が重く、IPEFは詳細が決まっていないので、参加の障壁は相対的に低いと考えたのかもしれません。


この状況を、日本企業は静かに見つめ、今後のサプライチェーンへの影響を思案しています。そういう意味では、13カ国が集まったことは安心感を生みましたし、入っていませんが、バイデン大統領のご発言を鑑みるに台湾はそれに近いポジションなのでしょう。

他方で、IPEFに参加しなかった、カンボジア、ラオス、ミャンマーはどうなるのか?
そもそも、参加の予定が立たない隣の大国との生産分業はどうなるのか?
経済安保促進法(以下参照)が施行されるとどうなるのか?


各社では、これから簡単には答えが見つからない、重たい議論が続いていくことになります。

チョークポイントは、日本に戻そう・・・そういう議論は出てくると思われます。
そもそも、サプライチェーンは、業種にもよりますが、簡単には動かせません。
もう11年前、東日本大震災と同じ年ですが、タイで大洪水があり、サプライチェーンが寸断されたことは、中堅以上の方には記憶に新しいところかと思います。その際、自動車部品や光学部品において日本で生産ラインを再開しようという動きがありましたが、実際には、日本人だけでは、動かせませんでした。

洪水の最中、わざわざ、タイから現地スタッフを日本に呼んで、日本でラインを稼働させる企業が相次ぎました。当時、私は汐留のTV局から、なんでそういうことになっているのか、誰にでもわかるようにニュースで解説するようにおおせつかり、四苦八苦しながら説明しましたが、技術移転とは、そういうものなのでしょう。ヒトとセットです。

これば、ベテランの方が、若手・地位圏に仕事をお願いして、いざ自分でやろうとしても、どんどん無理になっていくのと同じです。

そうなると、やはり、サプライチェーンの基本は「ヒト」。「経済安保」をブレークダウンした「経営安保」的な視座からは、「ヒト」対「安保」といえます。無論、デジタル技術は一定程度「ヒト」を代替しますが、あくまで一定程度ということになるのでしょう。経営者なら、まずは「ヒト」をできる限り優先することになりそうですので、ここでの葛藤が続くことになりそうです。できる「ヒト」に対しては、国境はありませんよね。

ただし、日本の回帰の動きが、「ヒト」の育成とセットでじわりとでも進むのであれば、日本の地方にとっては、チャンスととらえることもできそうです。



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