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製造業の国内回帰は新たなトレンドになるのか

春期の期末試験の試験監督も終わり、公平かつ慎重に成績もつけましたので、しばらくは研究のほうに専念して、秋期に本NOTEは再開いたします。

また、アジアのサプライチェーンについて、みずほ銀行の法人向け刊行物である「みずほグローバルニュース」に寄稿させて頂きましたので、宜しかったら、ご参照ください。

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/globalnews/pdf/global2023_summer_01.pdf

春期最後は、日本の製造業の国内回帰についてです。
日本に居ると、平和ですし、物価高とはいえ、目が飛び出るとまではいきませんが、世界に目を転じると、経済安保で少々物騒になり、物価高というよりは、物価狂乱という国も散見されます。

そして、米中の対峙は、両岸が最前線となりそのせめぎ合いについての報道を聞かない日はなく、YCCの是正で、円高に戻る戻らないという議論をしている間に、日本みたいに安い国では働けない・・・遊びに行くにはいいけど、という風潮が生まれてしまっています。どうやら一過性で終わるという感じではありません。

そんな風潮を受けて、予想以上に、国内回帰の潮流は強まっているようです。ものづくり白書によると、国内回帰>中国移管となり、ASEANではまだ国内回帰<ASEAN移管ではあるものの、思いの他国内回帰も、多いようです(以下P17 参照)。

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf

帝国データバンクの調査を見る限り、どうやら、国内回帰は、本物だな・・・そう感じてしまいます。

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p230110.pdf

国内回帰だけだと限定的でも、国産回帰を含めると、大きな潮流になっていると言えそうです。

日本のGDPとは、すなわち、国内総生産
製造業の国内回帰は、日本のGDP増長には、大いにプラスです。

ですが、そうも簡単じゃないという声も聞こえます。
日本の製造業において、国内における最大の課題が人手不足です。
聞こえてくるのは、どこもかしこも人手不足です。人件費は上げていかざるを得ません。さらに、円安で輸入素材は高止まりしています。

経済安保で国内回帰の機運高まる。
ところが、国内もまた、もう安い人はおらず、安い素材もない。
そのような塩梅です。

ここは深堀りが必要ですが、最終消費が、日本国内であれば、それでも、国内回帰は十分あるとみます。もはや、中国などで作らなくてもよくなっている訳です。他方で、最終消費が海外の場合は、国内回帰は躊躇されるように思えます。

それでも、国内回帰が本物なら、誘致する自治体にとっては、千載一遇の機会になります。無理してでも財政支援して、企業の回帰コストを抑えれば、長い目でみれば、ペイするでしょう。

この国内回帰の動き、これまでも何度かありましたが、一過性だったのではないでしょうか。ですが、経済安保の時代に入り、安い日本の時代に入り、どうも、環境が変わってきた気配です。半導体にような国策投資は別次元としても、日本のGDP増長には、製造業は欠かせません。

ただし、日本国内は空前の人手不足。人口動態的に、簡単に解消できそうにありませんが、中央値以上に稼げるとなれば、話は変わってくるでしょう。
そうなると、国内回帰×中賃金は、現実味はありそうです。

このあたりの深堀りも夏の課題となりそうです。
皆様、よい夏をお過ごしください。
秋に、再度、お目にかかります。












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