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秋期再開 アジアのサプライチェーンはどうなる(9)

みなさま、お久しぶりです。秋期の授業再開となり、本NOTEも再開いたします。秋期は、郊外キャンパスに行く機会が減り(すっかり実っております)、都心キャンパスに行く機会が増える関係で、郊外キャンパスへの長い移動時間に当てている更新機会が減りますがご容赦ください。

さて、まずは為替ですが、3カ月連続のFRBの0.75%の利上げで、円はついにダウン、とうとう日銀総裁の日本は利上げしないという会見のタイミングという、意表を突いたカウンターパンチで単独為替介入となったことは周知の通りです。

24年ぶりの円安、実は24年前、まだ若手だった私は、初めてアジアに赴任していました。円安によって、リアルに給与が目減りすることの怖さを身をもって体験しましたが当時は、円安悲観論自体は希薄でした。むしろ、アジアでは、円安は、日本の輸出ドライブを招く脅威だと言われていました。今では、日本の不動産を買うなら、今がチャンスだ!という声の方は聞かれますが、日本の輸出脅威論はさほど聞かれず、隔世の感があります。

理論上は、インフレが続いている通貨は、弱い通貨なはず(少なくとも新興国の通貨はそう)・・・ですが、ドルに関しては例外です。なんといっても基軸通貨ですから。
そのために、世界に大きな衝撃を与えており、先進国においては日本はその筆頭になっていることは論を待たないでしょう。

日銀の介入は、単独では焼け石に水・・・かもしれません。
インフレ退治を優先する米国が協調介入する意志は希薄にみえます。
じゃあ、他に介入する役者は出てこないのか?

日本ではこのような声は、あまり聞こえませんが、米国を、インフレを輸出していると面と向かって声を上げておる国もあります。中国です。

中国は、コロナ禍が長引き、金融緩和を続けています。金融の方向性は米中は逆なのです。

そこで以下のような声も出てはいますが、人民元は管理フロート制なので、資本規制を強化する可能性が高いようには思えますが・・・

https://jp.reuters.com/article/column-forex-idJPKBN2QD001

いずれにせよ、1ドル150円、ガソリンは原油価格は下がったとはいいリッター35円の補助金がなくなると、200円が、目前になっています。円を巡る攻防が、今年最大のテーマに浮上してきたことは間違いありません。

通貨防衛といえば新興国の話・・・ではなくなったようにも思えますが、ここは、日本の当局には決意姿勢を見せて頂くしかありません。

https://note.com/koji_sako/n/nb9f13310577d


基本的には利上げ追随国が多い中、米景気鈍化で、輸出で円安も効かない。インバウンドも最大顧客の中国は動かず、マクロ的にはかなり、厳しい情勢が続きそうですが、第8派到来が危惧される日本国内とは異なり、海外では、中国を除けば、コロナは一挙に終息モードになりつつあることは朗報です。

さて、話をサプライチェーンに転じていきたいと思います。

授業が始まる前の9月は、学会の季節でして、小職も参加し、発表して参りました。これから、論文化する地道な作業が待っていますが、非常に実りの多い学会でした。学会会場を提供していた大学の皆様には感謝です。

ゲストスピーカーは、米ワシントン駐在経験が長い総合商社の経営幹部と、バンコク駐在が長い殺虫剤メーカー経営幹部の方でした。お忙しい中本当にありがとうございました。

まず殺虫剤メーカーさんのほうですが、実は、地球温暖化は、昆虫の大発生を生んでおり、世界中である意味で、バカ売れしている様子がうかがえました。確かに、基本的に気温上昇は、昆虫にとっては好都合なにでしょう。そこで、米・中・アジア・アフリカ、世界中で、同社の殺虫剤はバカ売れしているとのことでした。そこには、世界の分断の雰囲気はありませんでした。世界仲良くとさえもいえます。

もう日本の家庭であまり見なくなった○○○○ホイホイ的なものが、世界では大活躍しているようで、とても誇らしくも感じますが、昆虫と日本の知恵比べ自体は果てしなく続いていきそうで、けっこう心配にもなりますが・・・。

それに対して、対照的だったのは、総合商社さんのほうで、もう社内に冷戦時代を知る人材がいなくなりつつある中で、冷戦期に逆戻りしつつあると指摘されました。商社の稼ぎ頭は資源エネルギーであり、新たな成長分野はデジタルでしょうから、いずれも、新冷戦といわれる米欧と中露の対峙が伝搬しやすい分野です。

この両スピーカーの雰囲気からも、非機微分野はグローバル化加速、機微分野は、デカップリングに備えの雰囲気が十分感じられましたが、さまざまな議論が出る中で、非常に意見が割れたのが、データを巡る部分でした。
次回、米中のデータを巡る摩擦をどうみるか、学会での議論の要旨に触れてみたいと思います。


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