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前回の続きです。

第五に、現在多くのASEAN諸国が抱える、国内における大都市と地方農村部の格差の是正は、25年後も遅々とした進展が続く状態にとどまると予想します。

大都市圏の既得権益層は、地方振興に全面的に熱心とは言い難いためです。それでも、この25年で中国が実現したように、地方都市まで高速鉄道の整備は進み、教育・医療へのアクセスも改善するとみますが、格差是正のための財政調整は不十分なままではないでしょうか。

第六に、ASEANは、EUのような完全な経済統合は目指さないと予想します(図表4)が、シンガポール、マレーシア、タイのように、近隣国同士は、さながら1つの国のように往来が自由化し、ASEAN自由ビジネス圏が複数立ち上がることになるでしょう。

 
(図表4)地域経済統合の5段階

(出所)B.Balassa, The Theory of Economic Integration(1961)
 

最後に、25年後、日本は人口1億人割れが現実味を帯びる厳しい状況に直面しますが、それでも、日本が得意とするサステナブルなものづくりの分野では、ASEANにおいて日本へのリスペクトは根強く残り、日本国内の自由で大らかな空気が、ASEANからは歓迎される気風は続いていると予想します。

亜熱帯で自然災害の比較的多いASEAN諸国において、地球温暖化の影響に市民は敏感であり、サステナビリティの重要性は、格段に高まることになるでしょう。

現在のASEANにおける天然資源純輸出国は、25年後にはほとんどが純輸入国に転落し、再生可能エネルギーのフル活用でエネルギー自給率を高めることが大きな課題となり、日本にはASEAN友好協力の力量が問われるように思えます。

他方で、前述の通り、筆者は、米中対峙は超長期化するとみており、その狭間でASEANは揺れるがゆえに、日本とはシンパシーを感じやすいことが期待されますが、日本が過度に米国寄りの姿勢を強めると、シンパシーが弱まる懸念もありそうです。

さわさりながら、25年後の未来が、我々一人一人の双肩にかかっていることは言うまでもありません。希望が持てる方向に予想が外れることを歓迎したいところです。

日ASEAN友好協力関係について、25年後に寄稿・登壇する日が来ることを祈願しつつ、本稿の筆を置くことと致します。

(おわり)

なお、どこかのお店の一時休店のお知らせのようで恐縮ながら(先日、しばらく修行に出ているのでお休みしますというお店をみつけました(笑))、12月上旬が学会論文の提出期限のため、それまで本NOTEはお休みいたします。

ご多忙な皆様同様、大変有難いことに授業、プレゼン、面談、ゼミ、社会人集中講義、入試、メディア広報などに日々綱渡りで鋭意対応中ですが、なんとか、残り2カ月弱、自己管理力を高めて、論文を書き上げる所存です。







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