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映画レビュー

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劇場、自宅問わず鑑賞した映画で心に残った作品について書きます。
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記事一覧

PERFECT DAYS 〝こんなふうに生きていく〟ことの悲哀と影

 『PERFECT DAYS』は語るのが非常に難しい映画だ。〝映画〟としての完成度や役所広司の演技に…

石倉康司
3か月前
17

2023年の映画ベスト10

2023年に鑑賞した映画のベスト10です。良かったら皆さんの鑑賞のご参考に。今年も沢山映画見る…

石倉康司
4か月前
22

アフター・ヤン 記憶を巡る果てなき問いかけ

 コゴナダ監督の『アフター・ヤン』は、フレッシュな魅力と独創性を備えた、A24らしい作品だ…

石倉康司
1年前
1

境界線を消し、夜の街に去っていった一人の男について

 2021年も終わろうとしている。今年観た映画のなかで、とりわけ強烈な印象を残した映画に…

石倉康司
2年前
28

黒猫 (1934)

 先日、コスミック出版のDVDセット『〈ホラー・ミステリー文学映画コレクション〉狂気と幻影…

石倉康司
2年前
2

春風に酔いしれながら

 〈川〉は様々な物語のモチーフになっています。文学で言うと、まず思い浮かぶのはマーク・ト…

石倉康司
3年前
2

『凱里ブルース』と『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』

人は、「時間的」な存在者と「超時間的」な永遠なるものとのあいだに「裂け目」をみとめて、両者の橋渡しを試みる。 マルティン・ハイデガー『存在と時間』より  僕が上京して最初に住んだ街は三鷹でした。太宰治や森鴎外が眠る禅林寺のほど近く、日当たりの悪いアパートの2階に住み、アルバイトをしながら生計を立てていたのです。それから6年ほどは三鷹内で引っ越しをしながら、貧しい生活を送っていました。そのころ経験した出来事や感情、光景は僕にとって特別なものとして心の中に存在しています。バンド

コロンバス(2017)

 何もかもうまくいく、不自由のない人生。そんなものは多分ありません。誰しも、辛い時期や不…

石倉康司
3年前
14

ハーフ・オブ・イットから見える文学の風景について

めいめいが、なぜ地獄に落とされたか、そのわけを白状しない限り、僕たちは何も知ることはでき…

石倉康司
3年前
11

時は降り積もる雪のよう

 花冷えの東京。無数の雪片が灰色の空からひらりひらりと落ちてくるのを見ていると、時間の流…

石倉康司
4年前
8

流体の恐怖

 人の心とは不思議で、目に見えないけど確かに存在する、と改めて思います。何を今さら、とい…

石倉康司
4年前
8

さよなら、大林宣彦監督

 先日、TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で放送された、「さよなら大林監督。追悼特…

石倉康司
4年前
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海辺の街でつかまえて

 どいつも、こいつも、くだらない。  これは、映画『お嬢ちゃん』のキャッチコピーですが、…

石倉康司
4年前
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無限の彼方へ

 ―物語というものは決して終わらない。語り手はふつう、言葉を切るのにちょうどいい、気の利いた場所に一つは恵まれるものだが、しかし、まあそれだけのことである。―   J.D. サリンジャー 『ブルー・メロディ』  (なんか我が家の人形たちも動いてそうだな…。)  僕は今までディズニーやピクサーの映画とは距離をとってきました。僕が観る必要のない映画、と先入観を持っていたのです。悪い言い方をすると、子供向けの映画だと決めつけてしまっていました。しかし、ここ1年くらいで、この僕の