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運送業界のリアル(#1)

今回は日々接するお客様の業務ついて発信したいと思います。
前回の朴の投稿では、運送業界の置かれている現状についての概要をお伝えしました。

今回は、この数ヶ月で100社以上のお客様との会話を通じてお伺いしたことをお届けすることで、もう一段解像度をあげた情報をお届けできればと思います。

当然会社様によって状況は異なりますし、かつ私個人の解釈も含まれておりますので、あくまで1つの参考として受け取っていただければと思います。
(もし運送業界の方がご覧になられて、「うちはこうだよー。」や「こう思う」があればぜひ教えてください)。

ネットではかのピーター・ドラッカーが物流に関して「最後の暗黒大陸」という発言をされたという記事もありますが、皆さんも物流というとレガシーな印象があるのではないでしょうか?

物流の1パートである運送においても、1くくりにできないほどその業務実態は会社によって様々です。

例えば皆さんが主に接する運送業者というのは宅配(BtoC)業者様だと思いますが、我々のお客さんのほとんどがBtoB(幹線輸送・地場輸送)業者様です(以下はBtoBを想定して書いています)。

運送業者の業務

大きく運送業の業務を分解すると、

A)運行業務
1)受注
2)配車
3)運行(点呼〜乗務(荷積・荷卸し)〜点呼)
4)日報処理
5)請求処理

B)管理業務(運送業特有)
1)車両管理(売買、修理整備といったメンテナンス)
2)運転手管理/教育

C)管理業務(会社体として共通するもの)
1)人事
2)労務など

に分けることができます。
(このうち、弊社のSaaSであるトラッカーズマネージャーはA、Bの業務支援機能を備えています。)

今日はAの1部についてご紹介したいと思います。

受注


・名前からどんな業務かは想像に難くないと思いますが、文字通りお仕事を受ける際に発生するコミュニケーションです。

・案件の受注経路は、ざっくりと下記に分類することができます(細かく分けようとするともっと細分化できますが)
 ◆定常 …決まった荷主様の決まったお仕事。タイミングが固定(毎日、毎週)のものや、不定期のものも。車とドライバーを専属でつけるチャーターのような場合もある。
 ◆SPOT …固定でお取引のないお客様の突発的な仕事。

・定常案件の場合は昔ながらのお付き合いのある会社様との仕事で、弊社のお客様は定常のお仕事で成り立ってるお客様がほとんどです。
 このお仕事の場合、電話、FAX、メールと様々な方法で発注が来ます。その応答を持って受注、としているケースが多いです。

・SPOTでのお仕事は、多くは"紹介"です。荷主様の直案件だけではなく、協力会社からの受注(いわゆる下請け)も含まれます。
 紹介以外にも運送を依頼したい荷主と、仕事を獲得したい運送業者をマッチングさせるプラットフォームも多数存在します(トランコムさん・ハコベルさん・PickGoさん・トラボックスさんなど)。

・マッチングプラットフォーム経由の場合、受発注のインターフェースはシステム化されておりますが、
 運送業者からするとそのマッチングプラットフォーム経由の仕事で全てを賄っているわけではないので、レガシー(紙や電話)でのコミュニケーションがまだまだ主流で、その情報をExcelに転記する、というのが一般的です。

 ここを改善するためには運送業者だけではなく、荷主様にも働きかけが必要となってくるため一筋縄ではいかず、
 かつ、急いでるときには電話というのがまだまだUXとしては優れてる部分はあるので、一概にデジタル化すればいいという問題ではないように個人的には思います。ただ、デジタル化されてないというのが次の"配車"業務に響いてきます。

配車


・配車業務とは、受注した案件を"いつ"・"誰が"・"どの車で"運行するかを指定する業務です。

・この業務は、どんなお客様のどんな荷物を運んでいるのか?によってだいぶ難易度が変わります。
 "配車マン"と呼ばれるこの業務の担当者の職人技で差が出る領域です。
 
・固定の案件で、時間帯・荷物・ルートが変わらない場合などはあまり配車業務の負荷は少ないのですが、
 産業廃棄物輸送、海上コンテナ輸送やSPOT案件をメインでやられている会社様はこの配車業務は頭を悩ますとともに生産性、利益率に響く重要な業務です。
 例えば、少ない車両で1日により効率よく複数案件を回せれば(2回転・3回転させれば)、車両台数を減らすもしくはより多くの案件をこなすことができます。
 また、自社で手配が難しいと協力会社(下請け)に依頼した案件を、保有車両の配車組みをうまくやりくりして自社完結すればそれだけ利益率は向上します。

・会社によって難易度が高い理由としては、
 ・荷物や倉庫の制約によって運べる車両が限られる(この仕事はこの車両はNG、といった制約が産まれやすい)
 ・1日の運行回数が多い(産廃業者様など)
 ・予測できない道路や港湾の混雑状況の影響を受ける(海上コンテナ輸送業者様など)
 といったものがあげられます。
 例えば海上コンテナ輸送業者様の場合、混雑状況を港湾サイトのWEBカメラでリアルタイムに見ながら配車組みを変えています。

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↑キャプチャは港湾が閉まっている時間帯のものなので車両はありませんが、こういった形で混雑具合を確認することができます。

・配車業務の難易度が高い会社=柔軟に配車組みを変える必要がある、という背景からか、いまだに紙やホワイトボードでやられている場合が多いです(旅行行くときにも配車表持ち歩くという方も…)

・ある程度のレベルで自動的な配車組みは実現できると考えていますが、
 会社によってはそもそも受発注の情報や自社の車両の情報がデジタル化されていない現状なので一足飛びには実現できない状態です。
 運行管理システム(TMS)を導入している会社様でも「受注のたびにいちいちシステムに入力してられない」と受注管理や配車ではシステムを使わず、請求書発行にしか使っていないケースも多いです。

ここまでが受発注、配車業務の概要です。
もっともっとご紹介したいのですが長くなりすぎるので今回はここまでにしたいとと思います。

多重下請け構造について

最後に、よく問題視される"多重下請け構造"に関して個人的な見解をまとめたいと思います。

まず、同じ問題がソフトウェア開発でも発生していますが、
・ソフトウェア開発では、単価が積み上がっていく構造(最下層の単価から、マージンが足されている)
・運送業界では、単価が下がっていく構造(荷主からの単価から、マージンが引かれていく)
の違いがあるように感じます(反論もあるかと思いますが)。
このため、運送業界の方が問題として取り上げられることが多いように感じています。

そして、なぜこの問題がなくならないのか?という点に関して、現時点での浅い知識でしかないですが整理と議論のために言語化すると、

1つは、トラックの仕様や荷物の要件により、どの車両で何でも運べるというわけではないから
 荷主様からこの仕事いけるか?と依頼をもらった場合に、積載量として詰めるトラックがあればOKというわけには行きません。
 例えば飲料用の空き缶(廃棄ではなく製造のために)を運ぶ仕事の場合、匂いがついてはいけません。
 このため、他の仕事で匂いや汚れがついてしまうような荷物を運んでいる車をあてがうことができません。
 このように、自社の保有車両で全ての仕事を賄えるわけではないというのが理由の1つです。
 そこで"紹介"が発生するわけです。
 もちろん、荷主様が毎回マッチングプラットフォームを使えば下請け構造は解決していくと思います。
 ですが、皆さんもまずは普段お付き合いのある会社に聞いてみますよね?「いけますか?」って…。
 相談された会社もなんとか探そうとしますよね。

もう1つは運送業界の構造上の問題で、1990年の物流二法の施行による規制緩和で運送事業者数が一気に増加したことに起因していると考えています(その後2007年前後で頭打ちに)。
 その結果、運送会社はコンビニよりも多い6.2万社ほど存在しており、その55.0%が保有台数10台以下、97.9%が100台以下(中小事業者の目安)という構成です。
 ゆえに、小さい会社1社でまかなえる仕事の種類や量には限りがあるので、協力会社というネットワークで仕事を請け負うという商習慣が生まれているのだと思います(実際、運送業には昔から続く協同組合が多数存在し、仕事の融通やヤード・物品の共同購入などの仕組みが提供されてきました)。
 よく標準運賃以下での仕事も問題にされますが、標準運賃を荷主に求めようとしてもその値段以下で潜ってくる同業者が多いがために低い運賃のまま飲まざるを得ない、というのも同時に発生している問題です。
 近年、運送業界ではM&Aが加速していますが、健全なラインで寡占化が進めばこれらの問題は緩和されていくように思います。

もちろん、慢性的なドライバー不足もその一因ではあると思いますが、
上記2点が私がお話を伺うにつれ見えてきたポイントでした。

以上、今日は運送業界の業務(その1)でした。
今後も運送業にまつわる課題と背景にある実態をわかりやすくお伝えできればと思っております。
そして、ドラッカーさんが暗黒大陸と名付けたこの業界に興味をもった方や、変えたいという熱い想いを持ってる方がいらっしゃったらぜひご連絡ください!


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