早稲田大学入学式での祝辞挨拶

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みなさん、こんにちは。

今日は晴れて早稲田大学に入学されましたことを、卒業生を代表し心よりお慶び申し上げます。
みなさんだけではなく、ご家族や友人、先生をはじめ、今までみなさんがお世話になった全ての方が今日という日を喜んでくれていると思います。
改めてこの機会にみなさんには多くの方に感謝を伝えてもらいたいなと思っています。

さて、今日は大学の入学式の祝辞ということで、まだ41歳と若い私ですので、今後日本のみならず世界を相手に様々な分野でリーダーシップを発揮していく同志として、一緒に頑張っていきましょうというメッセージを込め、みなさんに2つほど大事にしてもらいたい考えを贈りたいと思っています。

まず最初にお伝えしたいこと、それは「自らの意思を強く持つ」ことの重要性です。

私がみなさんのように学生の頃を振り返ると、本当に意思のないごくごく普通の学生でした。何となく勉強が出来たので中高一貫の進学校に入り、中学校時代の最初のテストで成績が全く振るわなかったことで挫折し、毎日のように繰り返されるテストとその順位を張り出される日常に嫌気が差し、勉強の先にある本来の目的が感じられずにつまらない毎日を過ごしていました。

大学は指定校推薦で何とか入学出来ましたが、何のために勉強をしているのか、目的が受験に受かるためで、23年前の今日、みなさんと同じアリーナで入学式に出席していた当時の私には大きな夢や志はありませんでした。
受験勉強という他人と同じ尺度で比較されることに嫌気がありました。一方で私は私でありたい、特別なんだと言い張れるほど何も強みも特徴もない、中途半端な存在だったと思っています。

そういう中で私自身に大きな希望を与えてくれたのは大学の先輩や同級生の存在でした。ゼミやサークル、留学を始め様々な活動に没頭し、没頭しすぎて留年したりしながらも夢を追っている学友たちと触れ合うことで、没頭する何かを持っていることに憧れ、他人の目を気にせず自由で良いんだと、自らの人生に自らの意思で向き合っていくことの重要性を教えてもらいました。

今インターネット企業を経営しているのも大学時代にインターネットが大好きになり、ファッションにも興味持ち、バイトもせずにインターネットで服や靴を売買して稼いでいた原体験が大きく影響していると思っています。あの当時インターネットでものの売買をしている人はほとんどいなかったですし、好きなことを追求していたら今につながっていました。人生は必ず経験がつながって影響しあって続いていっていることを今実感しています。人生に無駄な体験などないのです。

一度きりの人生、他人と比較しない人生をみなさんには歩んでもらいたいです。みなさんが情熱を持ってやり遂げたいことはあるでしょうか?
大学時代は自らの意思で人生を歩んでいくことの準備期間でもあります。勉強からの学び、友人や先生との人間関係からの学びの中で、是非自分の意思を持ち、明るい将来を形成してもらえればと思っています。

将来に対する不安と希望が入り交じるでしょうが、自らの意思以上には何も成し遂げられないのが現実です。私はメディアなどで事業が成功することの秘訣を聞かれるケースがありますが、「あきらめないこと、向き合うこと」だと答えています。言い換えれば、それは自分の意志次第だということとも言えます。成功の定義も人さまざまだと思いますが、自らが意思を持ち納得するまで歩みを止めない強さを持ってほしいと思っています。

私自身こんな偉そうなことを話していますが、社会人1年目の23歳のときには自分の仕事の出来なさに自殺しかけたことがありました。その時は自分が死んでも何も解決しないと思い止まりましたが、29歳の頃に一番仲の良かった同僚が32歳で癌で亡くなりました。それ以来私は自分がいつ死ぬかもわからないので、自らの人生を悔いなく生きようと決意しました。生きたくても亡くなっていった友人を想うと、生きている自分はなんて幸せなんだと、私にしか出来ない人生を歩もうと誓いました。

ミクシィ社の経営から退いたときは31歳でしたが、みんなには成功しているネット企業の経営から若くして退くことにもったいないとか、様々な批判もされましたが、会社も大きくなり優秀な社員が増えていく過程で、必ずしも自分がやらなければならないことなのか自問するようになり、私は自分にしか出来ないことにチャレンジをしよう、またスタートアップ企業を立ち上げたいと思い、それが今のメルカリにつながっています。

みなさん、もう他人と比較はしなくて良いんです。他人からの見られ方や評価を気にしなくていいです。あなたの人生、あなたが自らの意思を持ち評価軸を作るときに来ています。人生を自分事化し、自らの意思を持てる、そんな強さを身につける学生時代を過ごしてもらいたいと思っています。

2つ目にお伝えしたいこと、それは「リーダーとしての自覚を持ち、行動する」ことの重要性です。

これからの社会は今まで以上に変化も速く、先行きが不透明で、将来の予測が困難になっていきています。ここ最近でもCovid19の流行から地球環境の課題、そしてロシアとウクライナの戦争など社会が混沌としてきていますが、事象の大小があれども、社会の課題を解決していくのはリーダーの存在です。

リーダーというと大きな組織のトップを想像しがちですが、リーダーシップは誰にでも取れます。政治家や経営者だけではない、例え小さな課題であっても、それを解決するためにはリーダーシップを持って課題に向き合う人の存在が不可欠です。混沌とした社会においては誰かがやってくれるのを待つのではなく、みなさんが当事者意識を持って向き合い解決していく必要があります。

恐らくみなさんは能力において恵まれているでしょう。そして、努力することも出来るでしょう。そういうみなさんに是非リーダーシップを発揮し課題解決していくことへの使命を感じてもらいたいです。

そして、同時に想像力を働かせてほしいと思っています。社会には弱者が必ず存在します。私自身、20代までは考え方が「努力したものが報われるのは当たり前。努力してないほうが悪い。」と思っていましたが、30代になりNPOなどで社会課題に向き合う友人たちの現場の声を聞く中で、社会はより複雑で簡単に解ける課題は無いことに気付かされました。それまでには見えていなかった弱者の存在や社会の課題が存在していました。
その時、自分が現実で何が起きているかの知識や想像力の欠如が起きていることに唖然としました。気づかないうちに大きなバイアスを持って社会を定義づけていたのです。

順番はまずは自分自身の成功が先でも良いのですが、必ず社会の課題解決の為に人生をコミット出来る存在になっていってほしいです。世の中に対する批判はうんざりです。想像力と行動力で社会を変革出来る、リーダーシップを持てるように学んでいってもらいたいです。

最後になりますが、4年間は本当にあっという間です。
世の中は変化し、新しいことがどんどん出てきますが、是非その変化を楽しみ、前向きにみなさんのやりたいことや夢が見つかる4年間になってもらえればと願っています。

この祝辞を書くにあたり、先日久しぶりに大学時代に足繁く通っていた原宿を散歩しながら懐かしさを感じつつ今日話す内容を頭の中でまとめていたのですが、みなさんに伝えたいことが自分自身に言ってるように感じがしてきました。
まだまだお前は何者なんだと、もっともっとチャレンジが必要ではないかと言われているような気がしました。私自身もまだまだ現役で頑張りますので、是非一緒に社会を一歩ずつ良い方向に進めていきましょう。

早稲田大学は本当に多様で懐の深い大学だと思っています。みなさんがチャレンジすることにも寛容ですし、最高の仲間が集っています。一生涯付き合える友人を作ってください。かけがえのない友人の存在は、みなさんの人生を助け、人生に彩りを与え、心を豊かにしてくれます。

素晴らしい大学生活を謳歌されることを祈念しまして、私の祝辞とさせていただきます。

本日は改めまして、ご入学おめでとうございます。


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