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寄席感想 2020/12/17 立川流マゴデシ寄席

12/17に上野広小路亭で行われた立川流マゴデシ寄席に行ってきました。お客さんは30人前後?で盛況。見えた範囲の印象では、女性が多かった気がします。最近立川流の寄席はマゴデシの方ばかり行っているので、もしかすると通常の立川流寄席とは少し客層は違うかもしれません。

私にとってのマゴデシ寄席の魅力は、チャレンジできる懐の広さと全員自分が主役という気合いの入った個性豊かな高座が見られるところです。お次のこととか基本考えてない感じ。それが許されるようなのびのびした雰囲気もいい。二つ目さんが中心の会だからと思いきや、真打ちはこしら師匠なのでむしろこの雰囲気を先導しているのも頼もしい。

演目です。

笑えもん「道具や」
花修「つる」
談洲「やおよろず」
吉笑「茶法」
談吉「持参金」
こしら「厩火事・上」

■以下ネタバレ的な部分があるかもしれませんのでご留意ください■




・花修さんは前回かなり前衛的なマクラを披露されていたので今日はどうかなと思っていたら今回もなかなかな感じでした。聞きようによってはこれをなぜマクラにしようと??と思うような内容なのですが、花修さんの話し方や表現により「えっもしかしてホラー?」と思うような不穏さがちらちらと醸されては引っ込みまた醸され最後まで妙なヒキのあるマクラでした。
 演目はつるですが、じつはマクラの後に「胴切り」がベースっぽい新作を披露されましたが途中で断念してつるに変更。前座さんが寄席で新作を披露するのはかなりレア、というか初めて見たかもしれない。高座の上では何が起きても、仮に事故っても自分がどうにか回収するしかない、誰にも頼れないという、普段意識することのない怖さを感じました。と言っても後の高座に上がった先輩達が良い感じにフォローを入れてくれていたのでそういう所も良いですね。いつかブラッシュアップされた完全版を聴きたい。

・談洲さんは新作。(現実よりシチュエーションとして)旅客機でよくある「この中にお医者様はいらっしゃいませんか」から始まります。医療系のドラマや漫画でいかにも出てきそうなキャラが勢揃い。登場人物は旅客機の乗客全員くらいの勢いで登場人物が多い多い。でもそこは芸達者で、次々にクセのあるキャラが出てくるのを一人で(そりゃそう)どんどん演じさばいていくのが楽しかったです。オチだけちょっとよく分からなかったのでもう一度聴きたい。

・吉笑さんは花修さんの高座をさらっとフォローしつつ、触発されて吉笑さんが思いついた別展開をちょこっと披露。これがまた触りだけなのにすごく面白くて(そして続きも面白くなりそうで)これはさすがなんですけど…と感嘆してしまいました。吉笑さんは常に何かを考えていていつも頭が回転してるイメージ。こういう人も時にぼんやりしたりするのだろうか。
初めて聴いた噺。舌の位置を意識し出すととたんに気になってくるみたいな。認識の足下をわずか一ミリくらい、すこーしだけ揺るがせて。会話の理屈・説明くささが最高に楽しい。

・談吉さんは「ここまで全然古典が出てない!(そしてその後も出ない!)」と言いつつ持参金。だいぶ人間離れしたおなべさん(名前違ったかも)。どっちかというと動物というかUMA感。ちょっと珍しいのは、責任を取って一緒になるという申し出を断り、「自分にも選ぶ権利があるから他にいい人を探して欲しい」と要求したところ。かといってお金目当てで自分を選んだ人のところが良いところとは…、深くは突っ込まないけど。全ての持参金、この後意外と気が合ってうまくいって欲しいな~と願う。

・こしら師匠はマクラで志らく師匠のエピソード。人による部分も大きいと思いますが、師弟関係って大変ですね。というか今更ですがあの志らく師匠にこのこしら師匠って、よく破門されず無事真打ちになってくれたという現実に感謝。他にコロナ禍に先駆けてZOOMを使いこなしていたという先見の明エピソードや、ステイホームって言うけど自分のホームはどこ??っていう師匠にしかできないギャグ(?)も。
 噺に入る前に「笑わないでくださいよ!?」と前置きしておいてからの「ちょっとアンタ、起きとくれよ!」で見事に笑う会場、いさめる師匠。美しい流れ()
 この噺については書くとそのままネタバレみたいになってしまうし、知らずに聴く面白さがあると思うので詳細は自粛しますが、イメージはバリューセットである意味大変お得な噺です。また「知ってますよね?分かりますよね?」と聞き手の気持ちをうま~くくすぐる感じがお上手です。