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未払い残業代問題に弁護士としてどう向き合うべきか?

 未払い残業代問題は、令和になった今も企業経営に付きまとっていて頭を悩ましているように思います。去年だけでも10件以上のご相談と個別案件対応をさせて頂きました。
 
 この残業代問題を相談されたときに、まず、事実・証拠関係、争点整理を行いながら、未払い残業代発生の有無と金額感を探りますが、
 解決策の提案としては、常に経営レベル、企業の利益から行うようにしています。
 一つの事件の裏には、大きなリスクを孕んでいる可能性があると常に考えるべきですし、企業側の事件対応方針と結果について、周囲のメンバー(この場合は従業員ら)に見られていると考えるべきです。
 結論としては、経営者と議論しながら、「企業の利益」から方針決定、戦略・戦術レベルに落とし込んでいくのが弁護士業務、特に顧問弁護士だと思うのです。法的な正しさと、企業の取るべき方針は常に一致させる必要はありません。それをちゃんと経営者に理解させるのが法務担当の顧問弁護士だと思います。
 
 以下はだいぶ長いので、めっちゃ暇な人、僕の思考プロセスを知りたい物好きな方、あるいは未払い残業代請求を受けている、どハマりの経営者さんは読んでみてください。
 
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 未払い残業代が発生していたと仮定したとき、企業側が取るべき戦略はその企業毎に違います。

 例えば、既に新たな防衛策を講じていて、偶然にその一人だけに未払い残業が発生している状況であるとすれば、戦略決定としては未払い金額と解決コスト(弁護士費用と自社の対応費用)だけに集中すれば足りるでしょう。
 戦術レベルとしては、従業員側の弁護士が、未払い残業代回収をウェブマーケなどで展開しているなんちゃって系であれば、その法律事務所にとってのコスパが重要なので、任意交渉で5割以下に落とせるのが実務です。他方で、コスパ知らずのゴリゴリ弁護士に当たった場合には、任意交渉の段階で、死ぬほど争点を作ったり、細かいツッコミを入れたりして、その依頼者である従業員に面倒臭いと思わせることが重要でしょう。
 戦う相手は、前者であれば弁護士、後者であれば従業員になるのです。
 また未払い額も大事ですね。弁護士もあくまで回収額から成功報酬で取ることになりますので、100万円以下だと裁判まで起こしてくる可能性がグッと低くなるので、さらにディスカウントを迫まることができますね〜。

 これに対して、防衛策を講じていない、その従業員以外にも多数の未払い残業代を抱えている従業員がいるときは徹底抗戦が基本です。

 なぜなら、簡単に支払ってしまうと、従業員らの大量退職からのぉ〜、退職金代わりに残業代請求という、最悪のループを作ってしまう危険性があるからです。もちろん、会社、従業員の関係性にもよりますが、基本的には解決コストなどは気にせずに長期戦に持っていくべきです。
 残業代請求においては、たくさんの論点が詰まっている場合が多く、徹底抗戦すれば、1年半から2年ぐらいは引き延ばせる場合がほとんどです。裁判官も、重箱の隅をつつかれたら、ジャッジするために双方に主張・立証させなければなりません。
 もちろん、その間に、今後、同じようなトラブルに合わないために、防衛策を講じておきましょう。固定残業代制度が無効にされるレベルだとすれば廃止したり、それこそ歩合制度を併用させるなどしましょう。未払い残業代の発生リスクをゼロにしなくても、3年間で100万円まで行かないレベルに持って行ければ、防衛策としては及第点だと思っています。
 そうこうしているうちに、従業員も未払い残業代問題のことなんて忘れてしまいますし、3年の消滅時効により金額感もだいぶ減っています。

 最後に、未払い残業代問題はきちんと弁護士に相談すれば、解決可能な問題であり、
 実務的には、法的監修を弁護士が行い、社労士さんにシュミレーション、実務への落とし込みまでやってもらうのがベストです!!
 昔はそもそも残業代なんて払っていないという企業が多数ありましたが、今は残業代問題に取り組み、適正に支払おうとしている企業がほとんどです。しかしながら、その防衛策が法的に不適合であったり、あるいは最新判例により防衛策として否定されたりして、「未払い」残業代とされることは少なくありません。

 「労働契約はあくまでも労働法に適合している必要があり、当事者の合意は労働者不利であれば無効とされる」
 
 ことをまだまだ経営者に理解してもらえていないのだと思います。逆を言えば、ちゃんと理解して防衛策を練れば、未払い残業代はほとんど発生しません。

 経営者の皆さん、ちゃんと対策しましょう!
 
 ちなみに僕が従業員側に回ったら、いっぱい従業員さんを呼んで来てもらって集団訴訟にします笑。ゴリゴリのゴリラ弁護士ですw。なんちゃって。 

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