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感想文『藻屑蟹』赤松利市

学校の先生には見せられないバージョン②

             こい瀬 伊音


 言葉が、浮かばない。
 ただ、自分のなかから音が聞こえる。

 古い機械のモーターが、苦しげにうなりをあげる。
 だんだんと回転数をあげていく。
 すり減って焼き切れるまで、
 ぱちんと弾けとんでしまうまで、
 これはつづくんじゃないか。

 あれから、
 美しさのなかに、汚れは溶かされ隠されている。
 例えば今日3月29日は、満開の桜に雪が降った。 
 雪で、何が隠された?
 何がおおわれた?

 自分で自分を助けて。
 それから、大切なひとを助けて。
 でもその腕はわたしに。わたしだけに。

 マスクのしたで口を開けて
 こわいと叫んで
 あなたに、触れられない春が過ぎる。

 先生の筆を想う。
 この音は、やまない。

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