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ambivalence


私の心には、二つの人格が住んでいて。

その二人に夫々、「躁」と「鬱」という名前をつけた。

二人が明確に共存出来なくなったのは家出をした頃からだったと思う。

躁はいつも私の心を傷付けた。

大事にしていたものを壊して、暴れて、全部がなくなった頃にどこかへ消えていってしまう。

鬱はいつも私の体を傷付けた。

欲を否定して、生存本能を拒否して、身体を中からも外からも壊して、私を殺そうとする。

距離を置く反面、依存したがる。

幸せになりたい反面、不幸せでいたい。

大事な反面、傷付けたい。

失いたくない反面、捨ててしまいたい。

今私の中で一致するのは、ただ消えたいという気持ちだけ。

いつもほんのり隣に並ぶ二人は私の身体を蝕みながら、支配する機会をじっと伺っている。

体調を崩した時、心に傷がついたとき、疲れた時、幸せな時、不幸せな時。

私が揺れ動く度にその隙をついて体を乗っ取ってきた。

どれだけ突き放そうと、逃げようと、隠れようと、二人は私にぐちゃりと絡まったまま、離してはくれない。

怖かった。ずっと。

乗っ取られてる間、それは私じゃない、私じゃないって叫びながら生きて、もがいて。

でも誰も乗っ取られてる事には気付いてくれない。

もう分からなかった。

鬱と躁は私ですら気が付かない間に融合して、気が向いたら離れていく。

病院に行くことも、薬を飲むことも、救われることも怖い。

二人が消えていくと同時に、二人と融合した私の欠片も一緒に消えていってしまう。

下手したら、私の存在事消えてってしまう気がして、とにかく死にたくなった。

全部丸ごと、身体ごと消えてしまえば何も思わなくて済むのに。

可哀想可哀想だって神様みたいな顔をして、君は私を救ってはくれない。

誰も私の事を救えるほどの器量も、力もない。

唯一私を救える筈の私は、二人に蝕まれて、完全に戦意喪失していた。抗う気力をなくしていた。

二人の目的なんて分からない。

突然私の元にやってきたと思えば、食い荒らして、何もかも壊して、堂々と私の中に住み着く。

出ていけよ、どっかいけよって。

どれだけ叫んだところで、届かないし、届ける宛もない。

世間一般に見れば私は精神に異常を来す、社会不適合者だった。

本当の私はこうじゃない。

でももう今更離れ離れにはなれない。

いつも相反する感情が私の何もかもを奪っていく。

こんな事になるくらいならば、生まれて来なければよかった。

躁も鬱も、私も。

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