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苦労して開催した婚活イベントに参加するクセが強い独身男女たち

婚活事業の立ち上げからの2年間を担当したが、十分すぎるくらいの実績を上げることができた。しかし、会員が満足し、多くのマッチングカップルが生まれる婚活イベントを開催するために試行錯誤の連続であった。そんな苦労して開催している婚活イベントには、記憶に残っているクセが強い独特な参加者も多くいた。


婚活事業に2年間取り組んだ結果

大成功したが失敗の連続だった

これまで述べてきたように、本県の結婚支援事業の「こいのわプロジェクト」はキラーコンテンツとして、様々な団体や施策、イベントなどとコラボして男女の出会いの場の創出を行ってきた。

取組を開始した1年目はこいのわプロジェクトの認知度を上げるためにインパクト重視でメディアへの露出を狙った戦略、2年目は増加し続ける会員の満足度を高めるために会員男女の出会いの場の増加を図る戦略として、段階を踏んだ事業戦略を明確にしてきた。

その結果、取組開始2年で一気に軌道に乗せることができ、こいのわの会員数はすぐに1万人を突破し、県主催婚活イベントだけでなく、ボランティア団体等による会員の出会いの場である婚活イベントの開催数も増加し、さらには会員の成婚数も順調に伸び続け、大きな成果を得ることができた。

しかし、ここまで来るには失敗の連続であった。

相手の番号をわかりやすくするためにゼッケンを着用した婚活イベント

婚活イベントの開催を前向きに考えるようになったきっかけ

そもそも、私自身は人前で婚活イベントの進行ができるタイプではなく、婚活イベントの効果を最大限に発揮されるよう裏で戦略を練る方が得意であった。

そんな私が婚活イベントの司会を行い、参加男女のシャッフルを行い、婚活イベント中に会話ができていない参加者に声をかけるようになるとは思ってもみなかった。

転機になったのは会員からの初めての成婚報告であった。

取組を開始した1年目はこいのわの専用サイトがなかったため、婚活イベントの告知は多くのメディアに取材してもらうように知事定例記者発表を使い、参加者の申込の受付は県庁のホームページのアンケートフォームを活用し、申込みがあった人とのやり取りは個別に電子メールで行っていた。

これらをすべての業務を一人で行っていたことから多忙を極めており、なんとかして楽になりたいと常に考えるようになっていたため、緊張する婚活イベントの進行までやる気にはなれなかった。

そんなある日、「県主催の婚活イベントに参加し、結婚することになりました。このような出会いの場を提供いただき、二人が出会うチャンスを与えていただき、知事と担当者に感謝します」という内容の電子メールが届いていた。

送信者を調べると3ヶ月前に開催した婚活イベントに参加された女性で、その婚活イベントではマッチングしていなかった。

この女性が婚活イベントに参加してから3ヶ月しか経っていないことと、そもそも婚活イベントでマッチングしていなかったことから、まったく意味不明であった。

すぐに返信し、詳しく確認してみると、婚活イベントでマッチングしなかったが、イベントの帰りの駐車場で参加者の男性グループに声をかけられて話しをして、その後、何回かのデートを重ねて、交際に発展したとのことで、出会ってから3ヶ月目にプロポーズを受けたとのことであった。

この女性が参加した婚活イベントは、我々が開催した婚活イベントの3回目のイベントで過去の失敗を踏まえて、かなり自信のあった婚活イベントであった。

この成婚報告をきっかけに、婚活イベントを行う際には、この婚活イベントで人生が変わる参加者がいるのかもしれないという考えを常に持つようになり、個人的な苦手意識を振り払い、全力で取り組むようになった。

クリスマスパーティーでの婚活イベント

1対1トークタイムでの試行錯誤

また、婚活イベントの開催にあたって、最大の効果を発揮するようなイベント戦略を常に考えていた。

例えば、婚活イベントの一番最初に行う1対1トークタイムについても実施方法だけでなく、アイテムにもこだわった。1対1トークタイムでは自己紹介カードをお互いに交換して会話を進めるのであるが、この自己紹介カードの見直しを何度も行った。

取組を始めた初期は、この自己紹介カードに個人名を書くようにしていたが、個人名から個人情報を検索する参加者がいるのではないかと考え、個人名はやめてニックネームを書くように変えた。

記入欄がもりもりの自己紹介カード

また、1対1トークタイムは1,2分程度と非常に短い時間で行うため、この短時間で自己紹介カードのすべてを確認する時間がないと考え、取組を始めた初期は、年齢や仕事、趣味、長所や短所などの必要最低限のもののみとしていた。

しかし、会員にアンケート調査を行うと、会話のきっかけとなるような出身地や血液型、星座、好きな食べ物を知りたいという声が多かったため、これらの項目も追加した。さらに、相手の仕事の休みが自分と合うかどうかが気になるという声から休日という項目を追加したり、結婚歴や子供の有無を記載する欄も追加した。

これは相手の結婚歴や子供の有無を知りたいという会員からの声もあったが、自身に子供がいることをイベントの中で話しにくいので最初から自己紹介カードにあると気が楽だという女性参加者の意見を参考に追加することとした。

また、進行についても試行錯誤を繰り返しており、1対1だけでなく、2対2やグループでの自己紹介タイムも行ったことがある。複数名での自己紹介タイムは、参加人数が多く、十分に時間が取れないときに実施したが、やはり1対1での会話は必要だといつも感じていた。

1対1トークタイムは婚活イベントの最初に行うのであるが、イベントの最後のマッチングカードの提出直前にもう一度行ってみたこともあった。

最後にもう一度1対1トークタイムを設定した場合、参加者にとって印象が良かった相手をマッチングカードを提出する直前に最終確認ができることから、参加者がマッチングカードに第3希望まで記入する割合が高まることがわかった。

そのため、県主催の婚活イベントでは、マッチングカードを提出する時間の前に、参加者を男女向かい合わせに並べて、相手の番号と顔を確認できる時間を必ず設けることとした。

参加者はイベント中に何人もの異性と必死で会話をしており、メモは取っているものの、番号や顔がうろ覚えの相手もいるため、カップルマッチング率を高めるために必要な取組だと判断した。

フリータイムでの試行錯誤

1対1トークタイムだけでなく、フリータイムについても試行錯誤を繰り返してきた。フリータイムは婚活イベントで必ず実施しており、参加者数やイベント会場の広さ、イベント時間などから、開催する婚活イベントごとに様々なフリータイムを企画した。

一般的な婚活イベントのフリータイムというと、参加者の自主性に任せて自由に動いてもらうことになるが、それはなかなか難しく、ある程度のルールがあるフリータイムの方が盛り上がると感じている。

すでに意中の相手がいてフリータイムですぐに動ける参加者は少なく、多くの参加者はフリータイムが始まった瞬間に固まる。スタッフがいくら参加者の背中を押しても、地蔵のように動かず、会場内に気になる人がいるかと聞いても、「別に」と言われるだけであった。

高い参加料を払って婚活イベントに来ているのに、積極的に動かず、マッチングにならないのは自己責任だという考え方もあるかもしれない。どうしたらいいか悩んでいる時にいつも参考にしていたのがボランティア団体のおばちゃんたちの婚活イベントであった。

おばちゃんたちの婚活イベントでは、フリータイムに入ったら男女を複数のグループに分けて、そのグループをシャッフルさせながら交流を進めていくというやり方を行っていた。

このようなやり方であれば1対1の延長のような感じとなり、フリータイムでも主催者の号令に合わせて動くことができるので、普段は固まるであろう参加者もフリータイムで会話ができていた。

おばちゃんたちも試行錯誤を繰り返しており、せっかくイベントに来たのに動けない参加者たちをどうやってフリータイムで動かすかということが一番大変だと言っていた。

ちなみにおばちゃんたちの婚活イベント会場の入口には大きな紙が貼ってあり、参加者に向けた「カップルになるためのポイント」が書いてあった。イベントが始まる前に、おばちゃんから今日のイベントの説明と合わせて、このポイントの説明もある。本当に暖かいイベントである。

おばちゃんたちの婚活イベントの5か条

また、フリータイム中に参加者の交流を深めるため、男女で協力して行う様々な企画も行った。前出の男女ペアで行う紙飛行機大会もその一つである。

マッチングでの試行錯誤

婚活イベントの最後に行うカップルマッチングについても試行錯誤を繰り返してきた。

マッチングの定番は第3希望まで記入できるマッチングカードを回収し、集計するものであるが、第3希望でマッチングした人たちのカップル継続率が低いという結果から、少人数でのイベントではマッチングカードに記入できるのは第2希望までにするなど、これまでに蓄積した様々なデータからやり方を変えてきた。

婚活イベントの参加者が200名以上の大規模イベントであったり、リアル桃太郎電鉄のような出会いのきっかけを作る街コン型の婚活イベントではマッチングは行わず、フリータイム中に意気投合した男女でお互いの番号を記入したカードを投票してもらうというやり方も実施してみた。

婚活イベントの途中で中間マッチングを行ったこともあった。イベントの最初の1対1トークタイム後にいきなりマッチングカードを提出してもらい、第一印象でマッチングしている場合は該当者にこっそり伝え、「このまま頑張れ!」と後半戦のフリータイムに向けて第一印象でマッチングしている参加者に気合いを入れていた。

しかし、この中間マッチングにはデメリットもあり、例えば、中間マッチングでマッチングしている男性が二兎目を狙って他の女性にアタックし、結局一兎も得られないということが度々あった。

これはスケベ心を出した男性参加者の戦略ミスでもあるが、実際には中間マッチングの結果を知ったところで、どのように動けばいいのかわからないという声が多かったため、中間マッチングは自然と行わなくなった。

なお、イベント時間が長く取れる婚活イベントで中間マッチングを行い、その結果を男女別の個別ブースにおいて、希望する参加者に対して、「現時点でどの異性があなたのことをいいなと思っているのか」ということを教えるという中間マッチングを行ったことがある。

これは非常に効率的な方法であり、婚活イベントでのマッチング率は高くなったが、イベント時間とスタッフ数が必要であったため、数回しか実施できなかった。

女性は浴衣限定の婚活イベント

婚活イベントに参加していた独特な参加者たち

常にイケメンに猛アタックする女性参加者

様々な婚活イベントを実施する中で、参加人数や開催場所、会場の広さ、開催時間などから最適な内容を組み合わせて試行錯誤しながら実施してきた。このように婚活イベントそのものの生みの苦しみも多かったが、イベント参加者に苦労することも多かった。

記憶に残っている婚活イベントの参加者は多いのだが、その中でも記憶に強烈に残っている参加者を紹介したいと思う。

まずは、女性会員の中で婚活イベントへの参加回数の最も多い会員のことである。ありとあらゆる婚活イベントへの申し込みを行い、何度も初期の婚活イベントに参加していたが、まったくマッチングしないという女性であった。

見た目は実年齢よりも老けて見える感じで、マッチングしないのは仕方ないのかなとスタッフ間でも話しをしていた。

でも、婚活イベントに臨む姿勢は常にまっすぐで、どんなイベントでも1対1トークタイムでは積極的に自己アピールを行い、フリータイムとなれば会場内で最もイケメンの男子に真っ先に突進していた。

そして、マッチングカードには必ず第3希望までびっしりと記入してくれる優等生であった。

スタッフ全員がいつかマッチングできるといいのだがと話しをしていたが、婚活イベントでマッチングする気配はまったくなかった。

その後、こいのわ会員が急増し、婚活イベントごとの申込者数が増えたため、なかなか当選せずに婚活イベントに参加できない状況が続いたが、そんな中でも、ボランティア団体の婚活イベントや民間事業者の婚活イベントに参加していたそうである。

そんな中、参加者の年齢層を高めに設定した婚活イベントに申し込みがあり、参加者として当選し、久しぶりに県主催の婚活イベントに参加することとなった。

スタッフ全員がなんとかうまくいけばいいと思いつつ、婚活イベント中はずっとその女性の動きが気になっていた。そして最後のマッチングタイムでまさかのマッチング。最初は、集計ミスだと思い、何度も相手のマッチングカードを確認した。

マッチングカップルの発表の時に恥ずかしそうにしながら前に出てきたことを今でも覚えている。スタッフ全員が驚き、努力は必ず報われるんだと感動した。

しかし、その婚活イベントの翌週、彼女は別の県主催の婚活イベントに申し込みを行っていた。残念ながら交際には至らなかったそうである。今でもふと幸せになっているかなと思い出すことがある。

絶対にマッチングカードに記入しない男性参加者

続いて、絶対にマッチングカードに記入しない男性参加者の話である。

この男性も参加した婚活イベント回数は多いのだが、どの婚活イベントでもマッチングカードを白紙で提出していた。

見た目は爽やかな外見に、いつも小ぎれいな格好をしていた。婚活イベントでも、しっかりと女性参加者と会話をして、マッチングの時には何度も男性の一番人気になっている。にも関わらずこの男性はどの婚活イベントでもマッチングカードに相手の女性の番号を記入しないのである。

婚活イベントで人気がある男性がマッチングカードを白紙で提出すると、女性の多くのマッチングが無効となってしまい、婚活イベントのマッチング率が下がってしまう。このため、この男性が参加する婚活イベントのマッチング率が低くなることも度々あった。

何が目的で婚活イベントに参加しているんだろうとスタッフ同士でよく話題になった。もしかしたら、学生の時に好きだった初恋の女性を探しているのではみたいなこともスタッフ間で話しをしていた。

結局、自分の知る限りマッチングカップルになることはなかった。ただ、一度だけ、この男性がマッチングカードに記入した婚活イベントがあった。

この婚活イベントではいつもと同じく積極的にイベントに参加しており、いつもと同じ雰囲気であったため、きっと今日もマッチングカードは白紙で提出するんだろうと諦めていた。

しかし、この婚活イベントの最後に提出されたこの男性のマッチングカードには、第1希望と第2希望には何も書かずに、第3希望の欄に女性の番号が小さく書いてあった。スタッフ全員が驚いた。

そして相手はどんな人なんだろうとスタッフみんなでこっそり見に行った。その相手は小柄で地味な雰囲気の女性であったが、残念ながらマッチングはしなかった。

今考えてもミステリアスな参加者であったが、彼もどうしているのだろうか。幸せになっているといいのだが。

この二人以外にも多くの変わった参加者がいた。

イベントが終わってから、スタッフに対して延々とイベント内容をアドバイスしてくる男性参加者や、いつもイベントよりも飯を食うことを優先する女性参加者、意中の女性以外とはまったく交流を図ろうとしない男性参加者、場違いな格好をしてくる女性参加者など、挙げればきりがないくらいである。みんな「こいのわ」を卒業して幸せになっているといいのだが。

県の結婚支援事業を立ち上げて、2年間、様々な婚活イベントを行い、多くの会員を確保し、その間に多くの成婚も見ることができた。

2年で人事異動で別の部署に異動となった後も、地域で婚活のボランティア団体を立ち上げて、コロナ禍になる前まで様々な婚活イベントをボランティアで実施してきた。

婚活イベントでは、まったく知らない初見の男女がいきなり自分のことをさらけ出して、1対1で勝負をするのである。

端から見ると不思議な光景であり、非日常の世界である。

コロナ禍となり、リアルでの対面が難しくなってから、婚活イベントは消えてしまったが、こうした取組は重要だと感じている。おばちゃんたちと同じくらいの年齢になったら、また仲間を集めて婚活イベントを再開したいと思う。

地域のボランティア団体での婚活イベント

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