見出し画像

過疎地域に都心部の独身女子を連れてって地元の独身男子との婚活イベントを開催してみた

過疎地域では結婚適齢期の独身男女の人口アンバランスが生じている。いわゆる過疎地域の嫁不足問題である。こうしたことから、全県的な取組として「こいのわプロジェクト」を展開し、県内の様々な地域で婚活イベントを開催してきた。今回は過疎地域の自治体とコラボして、この過疎地域に都心部の独身女子を連れてって地元の独身男子との出会いの場を作った婚活イベントの話しである。


少子化対策と地方創生

地域によって独身男女の人口に差が生じていることは、この事業を始める前に確認している。都心部では若い独身女性が多く、山間部では若い独身男性が多いことから、全県的な出会いの場の創出の取組を進めることとしてきた。

この当時、少子化対策というワードと同時に、地方創生というワードも使われるようになっており、この2つの施策は親和性が高く感じた。

特に、地域の人口減少抑制を目的とした地方創生施策では様々なことが取り組まれていたが、この施策の一つが地方自治体で行う婚活であった。本県においても、様々な自治体との共催で数々の婚活イベントを地方創生の一環として行ってきた。

過疎地域での嫁不足問題

独身男女人口のアンバランス

少子化の要因分析の中で、本県の都心部とその周辺地域に若い独身女性が多いことはわかっていた。その要因を厚生労働省の住民基本台帳人口移動報告で確認すると、本県の過疎地域の若い女性が進学や就職のタイミングで都心部に多く移動しているためであった。

過疎地域の若い男性についても同様に都心部への移動は見られるものの、女性の数と比べて少なかった。そのため、過疎地域での結婚適齢期の独身男女の人口バランスが崩れており、いわゆる嫁不足が過疎地域での大きな課題となっていた。

一方で本県の都心部においては、若い男女が進学や就職のタイミングで首都圏や関西圏などの大都市に移動していることも住民基本台帳人口移動報告で確認できた。このため、本県の都心部においても、結婚適齢期の独身男女の人口バランスが崩れている状況であった。

県内で最も過疎が進んでいる自治体での少子化対策

こうした中、本県の最北部にある全域が過疎地域であるA市において、少子化対策を目的とした独身男女向けの結婚支援事業を開始することとなった。この自治体では、対象者である独身男女が少ないことから手厚い支援が行えると考え、自治体の運営による結婚相談所を立ち上げることになっていた。

事業担当者からはどのような取組にしたらよいかと相談を受けていたが、この自治体は子供人口だけでなく、生産年齢人口が激減しているのに加えて、高齢化率が40%となっており、少子化対策の取組を始めるにはすでに手遅れで絶望的な状況であった。

国勢調査からA市の若者人口を確認すると、2010年現在の20~39歳の未婚人口は、男性2,032人に対して、女性1,148人となっており、このA市の独身男女のみで取組を進めるとこの年齢層だけでも900人の独身男性に相手がなく、あふれてしまうという状況であった。

<A市の若者の未婚・既婚人口>

こんな中、A市では結婚相談所の開設準備を進め、お見合い事業を開始してはみたものの、案の定、登録会員は男性のみであり、独身女性の登録はほとんどなかった。

そのため、A市の取組を成功させるためには、A市が設置した結婚相談所の認知度の向上だけでなく、A市だけの人口規模だとお見合いが成立しないのでA市以外から独身女性をいかに確保するのかが課題であった。よくある過疎地域での嫁不足問題である。

過疎地域の婚活イベントで参加女性の確保は難しい

県の婚活イベントにおいても県北部の過疎地域で開催することがあるが、参加者募集時の女性参加者の確保は常に課題であった。

そもそも過疎地域に若い女性が少ないだけでなく、女性の有配偶率が高いといったところから、過疎地域での未婚の若い女性が極端に少なく、婚活イベントの対象者の数が限られていた。

こうした状況を踏まえて、都心部在住のこいのわの女性会員に対して、過疎地域での婚活イベントに関するアンケート調査を行ってみた。その結果、過疎地域であっても内容が魅力的な婚活イベントであれば参加したいという回答が多かったものの、実際に参加していないのはイベント会場までの交通事情の問題という理由が多かった。

こいのわの女性会員の多くは都心部在住であるため、ほとんどの会員は車を持っておらず、郊外での婚活イベントに参加する場合は電車やバスなどの公共交通機関に乗ってきていた。

どれだけ魅力的な婚活イベントをA市において企画したとしても、本県の都心部から車で約2時間もかかるA市のイベントにわざわざ参加するとは思えなかった。そのため、この交通事情の問題に対しては、都心部から参加女性を大型バスで送迎することとした。

根本的な解決策ではないが、魅力的な婚活イベントを企画したとしても、都心部在住の女性会員に興味を持ってもらい、婚活イベントに参加してもらわないといけないので、この大型バスでの送迎も婚活イベントの一環として企画することとした。

都心部から大型バスで参加女性を送迎するので、チャーターした大型バスの定員から、この婚活イベントの女性定員を50名と設定し、女性参加者の募集を開始した。

県北部の過疎地域でのイベントとしては50名という異例の定員ではあったが、定員を超える54名の応募があり、最終的には34名の女性が参加した。男性参加者の募集についてはA市で行い、こちらも地元の独身男性から定員を超える申込みがあり、最終的には54名の男性が参加した。

地元の男子が都心部の女子をおもてなし

今回の婚活イベントのコンセプトは、「県の最北端の地で和牛などの料理で地元男子が最大限のおもてなし」というわかりやすいものとした。

開催場所はA市にある東京ドーム72個分の広さを持つ国立公園とし、園内に様々な花が咲いている時期でもあったため、園内散策を行うようなイベント内容を企画した。

また、地元の独身男性が都心部の独身女性をもてなすために提供する料理は、地元の有名な和牛のBBQをメインに、地元産の野菜や果物、地元の洋菓子を集めた。この食材については、A市の市長自ら陣頭指揮を執り、これまでの婚活イベントではないレベルの豪華な食材となった。

<和牛BBQでの地元男子のおもてなし>

参加者の地元の独身男子54名には参加者の女性が到着する1時間前に集合してもらい、地元出身のタレントによる「モテ男子になるために」という講演を聞き、これから始まる都心部の独身女性との婚活に気合いを入れることとした。

地元男子によるおもてなし婚活イベントを開催

女性参加者をバスに乗せて過疎地域へ

女性参加者は都心部の新幹線駅の中にあるバスターミナルに集合してもらい、そこから大型バスに乗り込んで出発した。今回もメディア取材を可能としていたので、この大型バスの出発するところも地元テレビ局が取材にやってきた。

婚活イベントの開催場所である国立公園に向かう車内では、2時間もバスに乗るので、今回参加する地元の独身男性の写真付きプロフィールシートを配布して、参加男性を一人ずつ紹介し、第一印象でよかった参加男性の人気投票もバスの中で実施した。

往路のバスの中では、大人女子の遠足といった雰囲気で非常に盛り上がっていた。

地元の独身男子によるおもてなし開始

イベント会場の国立公園では参加者の地元の独身男性54名がお出迎えし、到着後すぐに地元の市長からの歓迎の挨拶の後に、公園内の管理棟で1対1トークタイムを行った。女性たちはバスの中ですでに参加男性を確認しているが、地元の男性参加者にとっては初めてのコンタクトであった。

1対1トークタイムのあとは管理棟の近くの芝生広場に移動して、和牛BBQを食べながらのフリータイムを行った。

ここで地元の参加男性がしっかりと女性参加者をもてなすために、54名の男性参加者が8つのグループにわかれて、それぞれのグループでBBQの火を起こして肉や野菜を焼き、同じく8つのグループにわかれた女性参加者が焼き肉のタレが入った皿を持って男性グループを回るという形でのフリータイムとした。

地元自治体で集めた男性参加者はイベント前のセミナーの成果なのかテキパキと動き、女性との会話も積極的に行っていた。また、地元の参加男性は平均年齢が29歳と若く、イケメン揃いであった。

地元自治体の担当者から聞いた話だと、地元で頑張って男性参加者を集めたが、40名が限度で、残りは市役所で選抜した若手職員の動員であった。なお、この動員された職員の1名が後に県庁に出向し、私の部下となるという不思議な巡り合わせもあった。

広大な公園内でのフリータイム

和牛BBQの食事が終わってから、園内散策のフリータイムとした。男女グループで公園内の散策を楽しんでもらいつつ、男女二人っきりの時間も楽しんでもらうために、公園側のご厚意で、園内の池に二人乗りのボートも登場した。

ただ、男女が向き合って漕ぐボートだと思っていたが、まさかの男女が同じ向きで縦に並んで漕ぐタイプのボードであった。しかし、このボートは公園の雰囲気にマッチした遊具であり、多くの男女が誘い合って乗っていた。

<二人乗りボートでのお出かけ>

また、BBQを行った芝生広場の近くの管理棟に地元のスイーツやフルーツを大量に並べて、フリータイム中に自由に食べられるようにした。

長時間のイベントとなったが、公園に到着してから帰るまでの間、イベントに参加する女性にとっては地元のおもてなしを最大限に感じられるイベントとなり、最後のマッチングタイムでは地元の市長によるマッチングカップルの発表があり、15組のカップルが誕生した。

残念ながらマッチングしなかった参加にはイベントの最後に、地元自治体で始めた結婚相談所の紹介も行い、会員登録のお願いももちろん行った。

<過疎地域×こいのわイベントの進行>
  9:30 新幹線駅バスターミナルからバス発車(女性のみ)
     バス車内での参加男性の人気投票
 11:00 男塾開催(男性のみ)
 12:00 イベント開始~市長と地元タレントによるオープニングトーク
 12:20 1対1トークタイム
 13:30 BBQフリータイム
 14:30 絶品スイーツ大試食会
 15:00 2人乗りボート体験
 15:45 マッチングカード提出
 16:10 市長によるマッチングカップル発表
 16:20 市の婚活事業の会員募集の宣伝
 16:30 イベント終了

<地元スイーツでのおもてなし>

市町村とのコラボイベントが活性化!

過疎地域の自治体との地方創生事業の船出としては大成功の婚活イベントとなった。このイベントも多くのメディアに取り上げられ、地元自治体が始めた結婚相談所の認知度があがるだけでなく、我々のこいのわ会員からの認知度も大きく上がることとなった。

本県のこいのわ専用サイト内のシステムで婚活イベントを掲載し、イベントの参加者を集め、地元で婚活イベントを開催し、地元の取組をPRするという過疎地域の自治体のモデルケースになった。

過疎地域の自治体が単独で婚活イベントを行う場合に参加女性が不足するという問題があり、その問題をクリアするためには、独身女性が多い都心部にアプローチする必要がある。

しかし、都心部での広報プロモーションには相当な広告費が必要となり、イベント予算が膨らんでしまう。その問題を本県のこいのわ専用サイトを活用して婚活イベントの告知を行うことにより、1万人を超えるターゲット層に直接アプローチができる。

こうして浮いた広告予算を婚活イベントのブラッシュアップに使うことができ、参加者の満足度だけでなく、参加した男女のマッチング率の向上につなげることができる。

専用サイトの活用という形で後方支援を行うことにより、過疎地域の自治体やボランティア団体が地域での婚活イベントを積極的に開催してくれるようになれば、県内各地に独身男女の出会いの場が多く創出されることにつながる。

本県としても、婚活イベントの開催経費をかけずに県内各地で独身男女の出会いの場を増やすことができるというメリットがあり、こうしたイベントの申し出は積極的に受けることとなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?