「本を出したことがある素人」から卒業する。
こんにちは。古池ねじと言います。こいけねじ、と読みます。間違えられることが思いのほか多く…まあ私も「ふるいけ」と打って変換してますが…。
長いことウェブで小説を書いてきた人間です。2018年に一冊書籍化することができました。
これです。「カクヨム」というKADOKAWAがやっている投稿サイトのコンテストに応募して、賞はもらえなかったんですけど拾い上げてもらって書籍化しました。
私も詳しいわけではありませんが、ウェブからの書籍化、しかも受賞していない、というタイプだと、あまり「デビュー!」という扱いをされないんですよね。書き手を拾い上げるというより、作品を拾い上げて書籍化する、という意味合いが強いからでしょうか。
なので私も本を出してからも、あまり自分が「デビューした」という感覚がありませんでした。「書籍化経験あり」という感じ。正直、そのあとばりばり依頼が来たりしたなら話は別だったかもしれませんが…。
本を出していろいろ感想をもらったり、ウェブに載せていたときから小説を読んでくれている方がよろこんでくれたり、という経験はあっても、あくまでその本にまつわる…という感じで、自分が小説家であるという感覚は薄かったです。
一冊目を出してから二年五か月たって、先月二冊目の本を出しました。
これです。
依頼を受けて、相手の要望を聞いて、レーベルカラーなども考えて、一から書下ろしました。
発売後いろいろと感想を検索して見ていたのですが、ある方のツイートを見つけて、驚きました。私の好きな出版社の編集者の方の、この本の感想でした。
「デビュー作に引っ掛かるところがあったのでこちらも読んでみた」
と、そのツイートにありました。そのときふと、
「あ、あの本で私はデビューしたんだ」
と、二年半遅れて実感しました。それまでなんとなく、自分の本は私の考える枠の中にあって、その中で読まれている、と感じていました。でも実際、私の本を「新人作家のデビュー作」という認識で手に取り、読んでいた人もいたのでした。大きな賞を取ってデビューした本と、私の本、同じ書店で売られて、同じ分類のものとして、手に取る方もいるのでした。そして当然、同じ高さのものとして読む。
頭ではわかっていたし、忘れないようにしようと思ってはいたのです。でも、仮定の上での心構えでした。極端な状況を設定することで平時でも問題がないようにする、というか……。それが、不意に現実としてそこにあったことを知らされました。
「書籍化経験がありますが、素人です。」そういう意識は謙遜というよりまごうことなき自分の実感だったのですが、甘えでもあったのだと思います。そして、もう捨てなくてはいけない甘えだと思います。私はもう、そんな意識でものを書くべきではない。
今日からちゃんと、こう言うようにしたいです。本当はずっと、こう言うべきだったし、そう言いたかったのかもしれません。
古池ねじといいます。こいけねじ、と読みます。
小説家です。
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