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少女漫画における主人公の変化〜ドジっ子からフェチ子まで〜

少女漫画の主人公とは、時代を反映するものー。

突然思い立ちまして久々のnote更新です。
今年4回目の年女を迎えたワタクシですが、歳を重ねた女だからこそ見えてきた少女漫画の主人公について勝手ながら語らせていただこうと思います。

まず、私が初めて出会ったラブコメが80年代を代表する少女漫画『ときめきトゥナイト』であることを前提として、ここからの系譜を見ていこうかと。

この作品は、吸血鬼属性の女の子が主人公なファンタジー系ラブコメなんですが、
・天真爛漫なドジっ子
・クラスのアイドルに比べて地味な私
・故にコンプレックスを抱えている
といった「落ち込むこともあるけれど私は元気です」な主人公とイケメンという王道のラブコメの関係性を持っており、主人公が一途に片思いをし続けイケメンに「おもしれー女」を刷り込み粘り勝ちしていきます。

90年代、メディアにも進出した『イタズラなKiss』を見ると、やはり上記の条件に当てはまっておりますね。

そしてこちらも粘り勝ち(という言葉が本当にしっくりくる!)の成就。
ちなみに、この作品は「気になるアイツと同居〜!?」といういつの時代も愛されてきた王道ジャンル(今作がその後のムーブメントを起こしたとも言えそう)も含んでおり設定としてもド直球なんですが、多田かおる先生の類いまれなるクセとスピード感で唯一無二な作品に昇華しております。


そして2000年代、『君に届け』の存在が新たな少女漫画主人公像を打ち出したと思っています。

他人の評価も自己評価も低く一歩引かれているネガティブな(自分のこと以外はポジティブな)主人公という今までの系譜をハードにした感じなのですが、その主人公の良さにクラスの人気者がいち早く気付いていく、要するに「俺が見つける」流れなんですよ。
作者自身も「孫のようにかわいい」と述べていたように、同性の読者的にも「愛おしさ」を感じる主人公でした。
主人公がなかなか恋を自覚しないというのもポイント。時代と逆行した(新たな潮目を迎えた)「ウブ」の魅力に脚光を浴びせた作品でもありました。


以降、クラスに溶け込めてない、ネガティブ思考、ひとり遊びが得意、な主人公と光属性男子の組み合わせが増えたように思います。


その系譜の発展形として、
漫画好きやアイドル好き、妄想癖、フェチありなど自分の好きを隠さず猛進しているオタク気質の主人公が増えてきました。「人と違う」がポジティブに加速したわけです。
変態性を隠さない主人公の溢れんばかりの生命力に、モテることに辟易とした淡白なイケメンがほだされていくという流れが出てきました。

例えば、2010年代『恋わずらいのエリー』、2020年代『顔だけじゃ好きになりません』(※ヘッダー引用)あたりがそれでしょう。

ここで特記すべき面白い点は、イケメンの方がネガティブであるということ。
「コンプレックスと捉われがちな好きなものを好きと言える」主人公に、「人が羨むようなことがコンプレックス」なイケメンが心を開いていく流れが多いように思います。
さらに興味深いのが、主人公よりイケメンの方が好きの自覚が早い。早期の矢印が逆のパターンが多いです。
主人公は自分の好きなことに忠実で輝きそしてオタク気質ゆえ思慮深いので、イケメンは早い段階で主人公に惹かれていきます。しかしなかなか成就しません。
なぜなら、いい感じの雰囲気になると主人公たちは「尊い…!!ありがとうございます!!!🙏✨」とオタク解釈になってしまうのでなかなか恋(両思い)を自覚してくれないのです。
「少女漫画でいい感じの二人がなかなかくっつかない醍醐味」がこういう形で成立していることがとても興味深いところです。

話が逸れますが、私は人が「好き」を語っているのを見るのが好きで、様々なジャンルのファンダムの様子を覗き見るのですが、「熱狂的な好きは後ろ指さされることではなく、自分自身の幸福である」というオープンなポジティブ思考が浸透してきていると感じています。
その世相が少女漫画の主人公にも反映されている部分があるのではないでしょうか。


ひとつ言えることは、時代によって変化しつつもイケメンにとっての主人公は「おもしれー女」であることには変わりなく、そして「気になるアイツと同居〜!?」の設定はこれから先も元気に生き残りそうです。

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