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プラグマティックメディスンの概略

 以前、ここで少し発表した「プラグマティックメディスン」という概念とその具体像について少し書いてみたい。

 この体系は具体的には、従来の伝統医学・代替医療と親和性を持つものであることが多い。つまりCAMそのものか、そこに接続する医学的・科学的概念をあわせて対象にしている。

 従来のいわゆる解剖生理を基礎とする「西洋医学」的知識は、要素還元主義に基づいた分析的方法により得られた知見であることは言うまでもない。それは原理原則に基づいた分析的知識であり、何らかの行動の「事前」にデータとしてわかっている知識ともいえる。(それゆえに基礎医学と称されるのだろう)

 これに対して理論面がブラックボックス化しているが、知識体系が存在する。現時点ではその結果が評価されて再認識されたり、世に認められたりすることで出現してきたもので、伝統医学や代替医療、いわゆるCAMであると見ることができる。つまり事後の結果が重視された領域である。
 当然、CAMとされるそれぞれの分野においては、純粋な教条主義的立場も展開されるが、現状としては、学問理論として成長発展している主なものは科学的知見であるので、この科学とCAMの比較においては、いわゆる科学側からの接近が現実的かつ、学問的、説得的であるといえる。
 そしてこれが成し遂げられつつある、もしくはそれを目的とする医学領域を「統合医療」として理解することも可能である。

 だとすれば、統合医療において展開される医学は、多分にブラックボックス化した医学体系に接近する正統科学からのベクトルを有するものとならざるをえない。
 すると、現代科学的な方法論をベースとしつつも、結果を重要視する伝統医学・代替医療的(CAM的)なものへ接近する医学を、事後の結果を重要視する方向性の医学として、プラグマティックメディスン、ないしはプラグマティズム指向型の医療(POM)と表現することも可能かもしれない。

 プラグマティックメディスンに分類されうる概念は、いろいろと挙げることが出来ようが、ここではとりあえず、ファシア・ポリヴェーガル・マイクロバイオ―タ等を挙げておく。その他に、皮膚の新知見から見たケラチノサイトや、脳科学におけるグリアの機能などもこうした領域と考えられよう。いわゆる従来「学際的」といわれる領域ともいえる。
 こうした領域を、統合医療という枠組みからだけでなく、プラグマティックメディスンという視点から再認識することで、これらのさらなる再評価につながるのではないかと考えている。

 これが統合医療を別角度から表現した用語でもある「プラグマティックメディスン」の概略となる。この分野は、特定のCAM、代替医療への思い入れの強さからその方法論のアピールや、医学論一般からの典型的全体論という無難な議論が展開されることがほとんどである。そうした中で、治療においての選択の方向性を示す、プラグマティズムという概念の導入は、新たな視点を提供することになる。哲学的な思考に慣れない向きからは、難解だとの批判を受けることも多くなるだろうが、ケアの分野における「中動態」概念の導入が新たな展開を迎えつつあることも鑑み、心ある多くの医療者に考えてもらいたいテーマである。

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