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統合医療診療の実際

 本年は、統合医療の診療における実例を求められることが多いので、ここでもご紹介しましょう。

 60代女性の血液疾患の方。
 当院の受診歴は2年ほどで、大学病院での診療を受けながらの統合医療併用を希望されて来院されました。化学療法と併用する形で、栄養補充のサプリメントと漢方処方に加えて、体調管理を目的とした鍼灸治療を行っていました。

 化学療法の進展や、健康状態の変化に伴い、様々なアプローチを行ってきましたが、最近は、白血球、血小板の大幅な低下を伴う汎血球減少により、鍼灸などの侵襲的な治療が行えずにいました。ご自分でも何か健康に良いことを、ということで、食べ物などの工夫に加え、腰腹を中心とした身体の温めを丁寧に行っておりました。

 そうした中でも、化学療法との併用、並びに原疾患による体調の変動が激しく、お自分で行っているセルフケアの方法に不安を抱えるようになってきました。当院でも非侵襲的な治療を中心に行っていたので、何か、現状を肯定する方法はないものかと思い、久しぶりに良導絡を奥から引っ張り出してきました。治療法としても有効ですが、経絡(良導絡)の様子を知るには簡便で、とても良い方法です。

 ファッシアの研究や勉強をするようになって、さらにこの良導絡の意味するところが明確になっていたので、理論的に再評価していたところでもありました。(まあ厳密にファッシアということであれば他にもっと良い計測方法はあるのでしょうが、昭和の定番「良導絡」はやはり不滅です)

 計測すると肝経(F2) 胃経(F6)の高値と、腎経の低値ならびに左右の乖離が測定されました。腹診においても胃部と胸脇部が固く触れる所見で、刺さない鍼である打鍼により軟化するものの、良導絡の測定結果を示すものとして捉えるができます。

 ご家庭で常に温めているところを中心にお灸などで温め、瘀血が疑われところに軽めのカッピングをかけるなどの非侵襲的なアプローチを行い、施術後に再度、測定を行いました。
 これにより、施術前の値が落ち着きデータの左右差の改善も認められ、セルフケアにおける腎への温めの効果も肯定的にとらえることができ、大変喜んでおられました。

 いろいろな検査機器はありますが、こうしたセルフケアをサポートする役割もとても大切なものです。当然こうした電気的な変化は病態把握にとっても重要な情報ですが、日々の治療やセルフケアの再評価としても、見直す良い機会にもなりました。

(なお本例は、年齢性別など複数のエピソードを融合させた典型例ですので、特定の個人のエピソードを示すものではないことをお断りさせていただきます)

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