豆腐の話(1) 絹ごしドウフ
豆腐は中国で生まれた。
「え、日本の伝統的な食品でしょ?」と言う人が実は意外と多い。
で、そんな逸話の書かれた本から引用。
岡本太郎著「今日の芸術」のなかの、「新しいこととは、何か」という章の「根のない日本主義」という項で書かれた一節。
古くから輸入されていたものには、昔からあったもののように安心しているのに対して、新しく輸入されたものは、軽いもの、流行りものと一蹴されるてしまうのだという例え話である。
絹ごしドウフ
ここでちょっと違う視点かと思うのだが、私が着目するのは岡本太郎氏がわざわざ「絹ごしドウフ」と言ったところ。
中国にも、日本の木綿豆腐、絹ごし豆腐のように、北豆腐(běi dòufǔ) と 嫩豆腐(nèn dòufǔ)という区別がある。
北豆腐は、老豆腐(lǎo dòufǔ)とも呼ばれ、硬くて、弾力のある豆腐で、日本で言う木綿の中でも堅豆腐という感じ。凝固剤は、海水やにがり盐卤(yánlǔ)=塩化マグネシウムを入れて作る豆腐である。
一方、嫩豆腐は软豆腐(ruǎn dòufǔ)とも呼ばれ、にがりの代わりに石膏で固める。豆腐のきめがより細かくなり、滑らかな舌触りが生まれ、日本の絹ごし豆腐のような豆腐ができる。石膏と書くと、?と思うかもしれないが、日本で言う「すまし粉」で、化学的に言うと硫酸カルシウムである。
京都に代表される絹ごし豆腐もすまし粉を使うので、あのきめ細かい豆腐ができる。あまり知られてないが、にがり=凝固剤のスタンダートというわけではないのだ。
そもそも、最初に内陸部で誕生した豆腐のルーツは、凝固剤として石膏(すまし粉)を使っていたのではないかという説が有力である。だって内陸部で海がない所なのだから。
ちなみに、呉(すり潰した大豆汁)を、絹で濾すから絹ごし豆腐と思っている人もいるが、それは大きな間違いで絹ごし豆腐は「まるで絹で濾したように滑らか」だからというのであって、本当に絹で濾しているわけではない。
つまり、岡本太郎氏の見た絹ごしドウフというのは、つまり嫩豆腐であったのだなって話でした。
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