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丹下左膳

最近、東映時代劇YouTubeチャンネルで、『丹下左膳 決定版 大友柳太朗生誕110年記念特集』と言うタイトルでアップされてまして。過去に何度も見てるんですけども、つい見ちゃうんですよねぇ。(期間限定公開につき、終了しています)


丹下左膳ってほんとたくさんの人が演ってるみたいで、大河内伝次郎、月形龍之介、坂東妻三郎、丹波哲郎、中村(萬屋 )錦之助等々と、錚々たる面子。一番有名なのは大河内伝次郎版でしょうか。「しぇぃは丹下、名はしゃぜん」って、元ネタは知らなくても、よくモノマネで知ってるやつね。時代的に私が一番馴染みがあるのが大友柳太朗版なんですよね。と言っても生まれる前の作品ですけども。

てなわけで、そう言えば昔こんなこと書いてたなぁと思い出しまして、以下、2004年に書いてたブログを元に加筆・修正してみました。

『丹下左膳』

なんつーか、左膳って普通の時代劇と違って、主人公は、片目だし片腕だし、勧善懲悪のヒーローってわけじゃない。ちょっと悪い人でふらふらしてる。でも悪党じゃないみたいな設定はたまらんのです。原作だともっとニヒルな剣客なんですけど、どこかコミカルで親しみやすくしてしまったのは、山中貞夫と言う監督の仕業。と、その話は後で。

そもそも「丹下左膳」は、昭和二年に林不忘が毎日新聞に連載していた小説「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」に脇役として登場したのが最初だったんだそう。

挿絵にはすでに黒衿に白い着物で描かれていて、その強烈なキャラに人気沸騰。翌年には、東亜、マキノ、日活の三社が競って映画制作。そん時のタイトルは「大岡政談」だったそうで、小説の方は昭和八年に「丹下左膳」として続編の連載開始となったんだって。

サブキャラがメインの話になるのは、今で言うスピンオフってやつですな。

林不忘の丹下左膳は二話しかないそうで、最初に書いたのは前述した「新版大岡政談・鈴川源十郎の巻」。いわゆる「乾雲坤竜」と呼ばれるエピソードで、名刀乾雲丸坤竜丸という大小を廻って争奪戦が繰り拡げられるという話。ここでの左膳は刀剣マニアの主君に、その刀を探し出すよう命ぜられる役どころ。

次に書いたのが「丹下左膳」で、「こけ猿の壷」と呼ばれるエピソード。今度は柳生の隠し財産の秘密が仕込まれているという壷を廻る争奪戦。ここでの左膳はぶらぶらしてる浪人で、ひょんな事からこの壷に関わってしまう役どころ。

「こけ猿の壷」の話が映画化されたのは昭和八年の「丹下左膳」伊藤大輔監督作品。大河内伝次郎初のオールトーキー作品という事で大ヒットしたそうな。

二年後、伊藤監督が死去したので、山中貞夫監督に完結編が依頼された。ところがこの人はその依頼を無視して「百万両の壷」をコメディー仕立てにしてしまった。それを観た原作者林不忘は大激怒。それでも原作者のクレジットを入れない事と、タイトルを変更する事で公開を許された。だから「丹下左膳【余話】・百万両の壷」となってる。ところがこれが大ヒット。その後の左膳がなんとなくコミカルになったのは山中監督のせいなんですねぇ。

この山中貞夫監督作品『丹下左膳余話百万両の壷』(1935)は、DVDを購入して観たんですけど、まー面白いっっ!私が数多観た映画の中でもダントツで面白い。展開から何から小気味いい。難しい事は抜きに、本当に映画らしい映画とはこのこと。

ただ、何しろ戦前のトーキー映画になったばっかりのやつだから、まだ無声映画のなごりがあるのか、やたらサントラがうるさい。台詞が聞こえないくらいうるさい。そこはDVDなんだから、今の技術で聞きやすいバージョンを入れてもよかったんでない?あ、日本語字幕がついてるから音声を絞って字幕で見ろってか?

ちなみに山中貞夫監督は、二十二才の若さで監督デビューして五年間で二十六本の映画を撮ったのち、召集されて戦地で病死してしまいます。現在まとまった形で残された作品はわずか三作品で、これがどれも秀逸なんですわ。そしてこの三作品のDVDが、誰に貸したかも覚えてないんですけども、果たして今どこにあるんでしょう?

『丹下左膳』は、何故片目片腕になったのか等々色んな話が書かれ、何本も映画化されましたが、決局原作の二作にはかなわないんですね。特に「こけ猿の壷」は最も映画化されています。

で、実はその山中作品の完全リメイク版としてこの夏(※2004年の話です)、豊川悦司主演で「丹下左膳・百万両の壷」が公開される。それを受けて、テレビでは中村獅童で「丹下左膳」が放映されるというわけ。う~む。どうなんでしょうか?どっちも観てからの話ですけど…。

~後日~ 獅童版『丹下左膳』を鑑賞。

先日録画しておいた獅童版『丹下左膳』を観ました。八分。タイトルが出るまでのわずか八分間でもう降参しました。無理っす。肝心の左膳役の中村獅童、タンカもキレがなけりゃ殺陣もキレがねー。ほんとに歌舞伎俳優なのかしら?

追い撃ちをかけるようにお藤役のともさかりえ、たどたどしい江戸っ子ぶり…勘弁してください。なんか涙出てきた。

最後まで見てないのであれですけど、資料によりますと、エンディングテーマがTHE BLUE HEARTSの『僕の右手』て、、、。あぁ、最後まで見なくて良かった。ブルーハーツは悪くないよ。選んだ監督、プロデューサー、みんなまとめて廊下に立ってなさい!

〜その後すぐ〜 柳太朗版『丹下左膳』を鑑賞。

口直しと言ったら叱られるかもですが、どうしても昔のが観たくなって借りてきました。大友柳太朗のと錦之介の二作品がありましたけど、ここはやっぱし大友左膳って事で。(※冒頭に出てきた映画の話です)

あーやっぱ面白いね。キモは蒲生大軒(がもうたいけん)役を大河内伝次郎が演ってるとこ。改めて見ると二人の殺陣が見られるなんてすごい事よ。源三郎役が大川橋蔵(超人気若手俳優)だったり、その妻が美空ひばり(超人気歌手)だったり、ちょび安が松島トモ子(超人気子役)だったりと豪華スター競演。それだけに、少々娯楽性が強過ぎる感も否めないけども、まぁ娯楽大作だから。

~そのまた後日~ トヨエツ版『丹下左膳 百萬両の壺』を鑑賞。

トヨエツ版左膳を、やっと見たので感想を書きます。獅童版が脳裏にあって不安を抱きつつ観たら、予想を大幅に反してすげー面白かったんだなぁ。和久井のお藤はもう少し色気が欲しいところだったけども、トヨエツはなかなかどうしてハマってましたよ。ちょび安もかわいかったし。

この映画、監督・撮影・編集が津田豊滋、製作・脚本が映画評論家でもある江戸木純。脚本は戦前の山中貞夫監督のもので完全リメイクしているのだそう。

山中オリジナルと津田リメイク版を見較べると、大河内左膳と大友左膳のイイトコを抽出したものになってるかなと。ただ最後の殺陣はいかんです。相手役の用心棒(豊原なんとか)があんまりだわ、、、の動きでした。ちゃんちゃん。


便利な世の中になりまして、気軽に見れちゃうんですよねー。ありがたい。
↓山中貞夫監督作品『丹下左膳余話百万両の壷』(1935)

↓着色バージョンなんてのも。


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