見出し画像

ネルソンの量子力学

ネルソンの理論では、量子的な粒子の動きは、あるバックグラウンドによって、ブラウン運動をしているという描像をとります。粒子の座標は確率変数$${x(t)}$$に置き換えられ、その時間発展は、次の確率微分方程式に従います。

$${dx(t)=b\left(x(t),t\right)+dw(t)}$$

ここで、ドリフト項$${b\left(x(t),t\right)}$$は、量子力学における基礎方程式であるシュレーディンガー方程式

$${i\hbar\frac{\partial\psi(x,t)}{\partial t} = \left( -\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+V(x,t)\right)\psi(x,t) }$$

の解$${\psi(x,t)}$$と次の形で関係している。

$${b(x,t) = \frac{\hbar}{m}\nabla(\mathrm{Re} +\mathrm{Im})\ln\psi(x,t)}$$

また、$${w(t)}$$はガウス型のホワイトノイズで、バックグラウンドによるゆらぎをあらわします。その統計性は、次のようになります。

$${ \langle dw_i(t)\rangle=0}$$、$${ \langle dw_i(t)dw_j(t)\rangle=\frac{\hbar}{m}\delta_{ij}dt}$$

確率微分方程式に従う運動をする粒子の確率分布は、フォッカー・プランク方程式

$${\frac{\partial P(x,t)}{\partial t}=-\nabla\cdot \lbrace b(x,t)P(x,t)\rbrace+\frac{\hbar}{2m}\nabla P(x,t) }$$

に従います。そして、その分布関数$${P(x,t)}$$は、

$${P(x,t)=|\psi(x,t)|^2}$$

の形でシュレディンガー方程式の解$${\psi(x,t)}$$と結びついていることを示すことができます。

ネルソンの量子力学は、確率過程から量子力学を導くものですので、ネルソンの確率過程量子化法ともよばれます。確率過程量子化法として、もう一つPari-Wuの確率過程量子化法がありますが、Pari-Wuの確率過程量子化法は、虚時間上での確率過程であるのに対し、ネルソンの確率過程量子化法は、実時間での確率過程になります。それゆえ、時間について定量的に評価しやすいという特徴があります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?