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「自分を大切にして、楽に生きる」坊主ストリッパー清水くるみさんが真剣に性と向きあう理由

「ストリッパー」と聞くと、どんなことを想像しますか?「男性向けのエンターテインメント」いうイメージだけで止まっている女性は多いのではないでしょうか。

実は、それだけではありません。ストリッパーとして働く女性の考え方やスタンス、彼女たちが本当に伝えたいことの中には、私たち女性が自分らしく生きていくためのヒントが詰まっていました。

今回、インタビューに答えてくださった、坊主ストリッパーの清水くるみさんは、「自分のことをよく知り、楽に生きる」ためにこの道を選んだと言います。

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【清水くるみさん】
1988年生まれ。「坊主」というヘアスタイルと「ストリップ」に魅了され、現在は「坊主ストリッパー」として活躍。美術大学を卒業後、会社員を経て、2016年に坊主ストリッパーへ転身。活動の場はストリップ劇場のみにとどまらず、イベントでのショーパフォーマンス、モデル、barの日替わりママと多岐に渡る。

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相反して見える2つの要素をあわせ持つ彼女が、坊主ストリッパーという活動を通して伝えたいのは、「自分を1人の人間として尊重する大切さと、自分を知り楽に生きること」だと言います。

今回のインタビューでは、清水さんに「自分という人間を尊重すること」「自分のことをよく知って、楽に生きること」をテーマに、自分との向きあい方についてお話しいただきました。

「坊主ストリッパー」は、私の理想の姿。

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早速ですが、坊主になったきっかけを教えてください。
美大生のころ、卒業制作の一環で坊主にしました。もともと坊主に対する憧れはあったんです。でも、なかなか挑戦する機会がなくて。卒業制作にかこつけて、ついに実現することができました。坊主に対する憧れのルーツを辿れば、中学生のときに仏教美術に興味を持ったことがきっかけだったかもしれません。

坊主になって、周りの反応はどうでしたか?
友達から「似合うね」「イカすね」と言ってもらえることが多かったです。自分でもすごく気に入りました。大学卒業後は会社員になったので、一応世間的なことを考えて髪をのばしたのですが、「やっぱり坊主で生きていきたいな」という思いが消えなかったんです。2016年の12月に「断髪式」というイベントを開催して再び坊主になり、現在に至ります。

ストリップとの出会いはどのようなものだったのですか?
いわゆる「エロ」と言われるようなジャンルにはもともと興味はあったのですが、ストリップとの出会いは、池袋の劇場で偶然見かけたストリップのステージがきっかけでした。その時の演目の内容がどんな風だったかは覚えていないのですが、「これだ!」と思ったことははっきり覚えています。なので、坊主ストリッパーは私の好きなものと好きなものの掛けあわせです。

自分の価値は自分で決める。自分という人間をちゃんと大切にすること。

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写真集に掲載されているエッセイの中で、坊主ストリッパーになった理由の1つとして「人を尊重しない社会への怒りのようなもの」を挙げられていましたが、活動を通して実現したいことは何ですか?
時系列で言うと、先に坊主ストリッパーになって、後からその理由を深掘りした感じです。坊主ストリッパーとしてしばらく活動してみて、あらためて「どうして私は坊主ストリッパーとして活動しているんだろう?」と考えてみたんです。そこで、社会の中にある小さな差別や偏見に対するモヤモヤした気持ちが根源にあるな、と気付きました。私の活動の先に、人の尊厳が守られる優しい世界があればいいなと思っています。

現在の清水さんの活躍の場は、イベントでのショー出演やモデル、barの日替わりママと幅広いですよね。それぞれに共通する思いはありますか?
「無理をしない自分でいること」です。無理をして相手に合わせにいくと疲れてしまうので。
坊主ストリッパーとしてデビューしてから1年ほどは、全国各地のストリップ劇場で踊り子として活動していたんですけど、劇場で踊ることは自分に合ってないと気が付きました。
私はフリーで活動しているので、劇場からスケジュールや報酬の面で無茶を言われてしまうことも多かったんです。納得いかないことでも、「私はまだストリッパーとしての実績がないし、フリーだからしょうがない」と思って頑張っていました。今考えると、無理してたなと思います。
劇場で踊りつづけていましたが、だんだん「いや、そうじゃなくない?」という思いが強くなって。「自分の価値は自分で決めるべきだ」と思い、劇場を降りる決心をしました。
ちょうど劇場で踊ることに悩んでいた時期に恋をして、「自分のことをもっと大切にしよう」と自分の価値を再認識できたことも大きかったです。恋愛で悩んだ結果、仕事に対する答えを出すことができました。恋愛は成長の場ですね。

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個性が発揮できない環境で働くのはつらいという気持ち、よくわかります。
無理するのは本当によくないなと実感しました。ストリップ劇場で踊ることにこだわるのをやめたら、心が健康になりました。現在行なっているイベントでのパフォーマンス、モデル、barのママは、環境やスケジュールや報酬など、すべて納得して活動できています。自分という人間を尊重できると、楽に生きられますね。
あとは、劇場にストリップショーを観にくるお客さんの需要と、私が表現したいものの間にもズレを感じていました。お互いの需要と供給で、共通しているのは「脱ぐこと」だけじゃないか?と(笑)

自分の性と向きあうと、自分のことがよくわかる。それが心身ともに健康であるコツ。

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清水さんが「脱ぐ」以上に求めているものとはどんなことですか?
もっとパーソナルな部分で勝負したいと思ってます。ストリッパーという仕事において、脱ぐだけではお客さんを楽しませることができないことも実感しているので。
いわゆる男性の求めているものというよりは、「文化的なエロ美しさ」を感じてもらいたいと思っています。私のファンの方って、半分くらいが女性なんですよね。もちろん、純粋に「裸を見たい」と思ってくれるのもうれしいのですが、私の背景や思想や人柄も含めて魅力を感じてくれたらと思っています。単純なセクシーさでだけではなく、脳で感じるとれるエロスというか。

たしかに、清水さんの放つセクシーさは健康的でナチュラルですよね。女性でもとっつきやすいなと思います。
そう言ってもらえるとうれしいです。ひと口に「エロ」と言うと、恥ずかしいこと、下品な話、と片付けられてしまいがちなんですけど、自分の性に関わることなので、みんなもっと真剣に向き合えるといいですよね。なので、私は坊主ストリッパーとして、男性からの期待に応えたいというよりも、みんなのエロの範囲を広げたいと思っています。

その先にはどんなことが待っているのでしょうか。

みんなが楽に生きられる世界になると思います。エロは「性」と直結するので、みんなもっとラフに、建設的にお互いのエロの話ができるようになれば、気持ちが楽になるんじゃないかなと。恥ずかしいことだとフタをして1人でモヤモヤするのではなくて。「性」と「生」はとても近しいものなので、自分の性に関わる部分で負う傷は深くなりがちじゃないですか。みんながエロと真剣に向きあえたら、お互いに傷つけたり傷ついたりすることが減ると思うんです。

たしかに、「性」に関わる部分って自分のコアに近いですよね。
生きることそのものだと思うんですよね。エロと真剣に向き合うと、自分のことをよく知れるんです。それが心身ともに健康でいるコツじゃないかと。 

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女性はとくに、そういう切り口で自分の性と向きあう機会が少ないように思います。苦手意識が強い方もいらっしゃいますよね。
私自身、20代後半まで1人でモヤモヤしていました。興味はあるけど、どう昇華していいかわからなかったり、そういうものに興味を持つご縁になかなか恵まれなかったり。そうすると、自分の性に向きあうスタート地点に立てないんですよね。私はストリップとの出会いがきっかけになりました。
エロには学術的な側面があると思っていて、何か1つに興味を持てると「じゃあこれは?」「このことについてもっと知りたい」となり、さらに知ることで、もっと知りたくなる。探究心が出てくるものだと思っています。これが自分と向きあうことにつながるんです。月の暗い部分がどんどんなくなって満月に近づいていくように、自分のことをよく知れるんです。

最後に、清水さんの将来の夢についておしえてください。
坊主ストリッパーになる前から、barのママになることが夢です。どんな人のどんな話も聞けて、包みこんであげられるようなママになりたいですね。現在の活動もその糧になればと思っています。あとは、学校の性教育みたいな専門的指導とは異なる、真剣なエロを若い人たちに教えていく役割もできたらいいなと思っています。自分の性と向きあえると、生きるのが楽になるよと伝えていけたらうれしいです。

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