なぜストーリーを知ることが重要なのか
はじめに
長年、レストランで仕事をしてきて、ワインスクールやセミナーの講師をしてきて、常に思うことは、ワインというのは、その背景を知ることで、全く味わいが変わる飲みものであるということ。
ただグラスに注がれてもってこられたワインよりも、目の前でボトルをプレゼンテーションされて、心を込めて説明をされ、エレガントな所作で、そのワインにあったグラスに、しっかりと考えられた温度で供されたワイン。
全く同じ銘柄のワインだとして、果たしてどちらが多くの人に美味しいと思ってもらえるでしょうか。
何のために知識を得るのか
何のためにたくさんの知識を得るのか、何のためにテイスティング能力を磨くのか。
ソムリエとしてワインを学ぶ上で、原点の確認はとても重要。
職業人としてワインを学ぶということは、誰かの役に立って、初めてその学びは生きてくる。
大量のインプットは重要ですが、アウトプットがなければ、そのインプットは使わずに貯め込んだ貯金と同じ。
お金も知識も技術も、使ってこそ初めて価値が生まれる。
モノからココロの時代へ
モノがなかなか手に入らなかった時代から、溢れる時代へと変化し、断捨離という言葉が生まれ、シンプルな空間、考え方が望まれるようになった。
良いものがあって、それに対して、より良い価値を与えるためには、心が動かされるかが重要なポイントとなる。
そのためには、ストーリーが語られているかどうかが、大きな要因になる。
その背景をしっかりと伝えることができれば、良いものの価値を初めて活かすことができ、その伝え方次第では、価値を無限に高めることができる。
感動体験とは、心が動かされた瞬間に起きるもの。
そう理解した上で、何を勉強するべきか、どういった発信をするべきかを考える必要があるのです。
ストーリーを知ること、背景を知ること
物事の背景を語ること、ストーリーを伝えることの重要性はますます高まっています。
ストーリーを語れる人は、モノの価値を高め、人の心を動かすことができる。
心を動かすコンテンツを生み出すことができる人が、人を豊かにし、そうすることで、その人自身も豊かになれる。
そのための努力をすることが重要だと考えています。
ソムリエは、なぜワインや飲料の勉強をするのか。
資格やコンクールだけをゴールとして考えるのではなく、さらにその先にある目的をはっきりとさせることで、その努力は成果を生み出すことに繋がっていく。
今、我々がストーリーを語る場は、レストランやバーの現場だけではなくなりました。これはプラスに考えると、アウトプットの世界が無限に広がったとも言えます。
「おいしかった…」
この一言が発せられる瞬間が、お店だけでなく、たとえご自宅であったとしても、その時間のきっかけをつくることができたとしたら、それはとても幸せなことです。
心からおいしいと思える時間と空間は、人に生きる喜びと大きな活力をもたらしてくれる。
たとえどんな状況になったとしても、それを増やし続けることが使命だと考えています。
ワインディレクター 田邉 公一
最後までご覧いただき、心より感謝いたします🥂