マガジンのカバー画像

○日本語教育・日本語教育学評論

58
日本語教育と日本語教育学などで折々に感じたことを発信しています。
運営しているクリエイター

#日本語

日本語教育の参照枠の下で行動中心のアプローチでやっているとクラス授業はできない!?

 日本語教育の参照枠に基づく教育課程策定の議論では、たいてい、「一人ひとりの学習者によってニーズは異なる」だから「それに対応するためには一人ひとりの学習者のニーズを反映した(テーラーメイドの)教育課程を企画しなければならない」という議論の流れになってしまっている。  これって、(1)クラス授業否定であり、(2)「教育課程開始に先立ってニーズがわかる」主義だし、(3)「日本語学習者は実用的に必要な言語活動ができる日本語だけやればいい」主義、だよね。先の発信や、この3点、皆さん、

文化庁の日本語教育の参照枠と標準的なカリキュラム案を再考する① — 「生活」の中に「人と交わってお互いのことを話し人生を分かち合うこと」が入っていない!

 文化庁は、日本語教育の参照枠と標準的なカリキュラム案の路線で、いよいよ教育モデルの策定を進めようとしています。しかし、これまでの参照枠でもカリキュラム案でも、そこで言われている「生活」は実際的な必要を満たす生活上の行為等のみに限定されており、「生活」の中に「人と交わってお互いのことを話し人生を分かち合うこと」が含まれていません。つまり、生活上で対応しなければならない実用の日本語ばかりが注目されて、人と交わってお互いに自分のことを話して人生を分かち合いながら生きていく交友の日

言語教育(日本語教育)を企画するときにまず認識しておくべきこと

 標記のこと、箇条書きで書いてみたいと思います。 1.学習者の第一言語(あるいはすでに習熟している言語)と目標言語の距離  2つの言語を考えた場合に、「兄弟言語」(や「親戚言語」)か、「他人言語」かをまず認識しなければなりません。ヨーロッパの諸言語は、端的に「兄弟言語」か「親戚言語」です。Language distanceの研究では、ヨーロッパ言語間ではざっくり言って、類似しているものも含めて語彙が70%重なっているそうです。  ヨーロッパ言語話者だけでなく、アジアやアフリ