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「逃亡」の原因も不明確、その後の調査もせず〜「入管法上の課題」の「逃亡者」数の不自然さ

2023年2月20日、出入国在留管理庁が「現行入管法の課題」を公表しました。

これに対する反論は、論座で書かせて頂いたとおりです。

この「課題」の中で、仮放免中の「逃亡者」が増えているとの記述があるのですが、何をもって「逃亡」とするのか、その後彼らはどうなったのかなどについて、共産党の本村伸子議員が質問をしてくださいました。

その回答は、以下のとおりです。

2023年2月24日付出入国在留管理庁回答

これを見ればわかるとおり、「逃亡」とは何かという質問に対しては、入管法55条1項の「逃亡」と入管当局が認定して仮放免を取り消した人数だ、ということだけです。
また、追跡調査については統計を取っておらず、お答えすることが困難です、とするのみです。

逃亡者が増えた、増えたと言っておきながら、なぜ増えたのか、具体的な原因も説明できず、法律の条文を挙げるだけ。その後の追跡調査についても答えられないのです。

「現行入管法の課題」によれば、速報値として令和4年末で「逃亡者」が1400人とされています。令和3年末が599人ですから、800人増えていることになります。従来の倍以上の人が逃げるような事情があったでしょうか?これが、2週間で仮放免延長をしないで再収容する2019(令和1)年や、コロナが収まって再収容方針を示した2021(令和3)年であれば、まだ増える理由もわかるのですが、なぜ2022(令和4)年に前年までの累積の倍以上に増加したのでしょうか?

どこかに数字のトリックがあるような気がしてなりません。引き続き、この点は追及していきたいです。

そして、この資料の公表は、明らかに国会への提出を目論んでいる入管法改定案の布石です。この法案は、2021年に廃案になった入管法案とほぼ同様の内容と目されています。2021年法案には、仮放免者が逃亡した場合に刑事罰を科す罰則規定の新設が含まれていました。

しかし、逃亡者の実態、原因がわからないのに、どうしてその防止のための対策が立てられるのでしょうか。違反者が多いから刑事罰を科せば良い、というのは非常に単純で稚拙な政策というほかありません。本当に「逃亡者」が多いのであれば、その原因を分析し、その改称のために効果的な対策を立てる必要があるのではないでしょうか。

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