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入管法の成り立ちに関する論文
知り合いの方から、非常に貴重な文献を教えてもらいましたので、ご紹介します。2005年のものです。
冷戦と戦後の入管体制の形成 テッサ・モーリス・スズキ(2005年4月1日 季刊前夜 61頁)
現在の入管法に連なる、昭和26年出入国管理令の成り立ちについての論文です。
今の入管法の目的が、外国人の破壊活動分子を排除することにあり、それが70年経った今でも脈々と受け継がれているのが、現在の姿だということがわかりました。
2020年9月22日、読売新聞朝刊では、収容代替措置として、「監理措置」なる制度を入管が検討しているということでした。
相変わらず、外国人をモノとしてしか考えていない、入管らしい揺るぎない発想だなと思っていたのですが、そもそもが、破壊活動分子の排除のための法律なので、一貫していると言えば一貫しています。
コンメンタール出入国管理及び難民認定法2013を執筆しているときに、退去強制事由を定めた入管法24条4号オ、ワ、カ、ヨで、暴力的憲法秩序破壊者がしつこく何度も列挙しているのに大変な時代錯誤感を覚えたのですが、出発点がそこだったのですね。腑に落ちました。
以下、論文で印象に残ったことを引用します。
70年前にも、この収容のあり方はおかしいとに声をあげてくれていた方々がいらっしゃったのですね。
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P.68下段
出入国管理、なかでも退去強制の問題については、日本の当局者の内部のみならず、SCAP(注:連合最高司令官)内からも異論が起こっていた。1950年10月には、例えば、SCAP法務局のリチャード・アップルトンが詳細な覚書を書き始めており、新たに創設された日本の出入国管理庁に託される「過剰」で「恣意的」な退去強制権限を懸念する記録を残している。とくに彼は、入管当局者が、司法の監督もなく、不法入国者と思われる人物を拘留できる権限を与えられた点を強調し、裁判所が個人の自由へのそうした制限をチェックできるとする憲法の要求事項に違反しているとした。アップルトンはまた、入管政策が(司法による議論ではなく、行政による)「政令」の活用によって生み出されようとしてる点を懸念しており、議会によって適正に審査される入管法の導入を主張していた。
P.71 上段〜下段
治安を脅かすと考えられる外国人を、たとえ追放の基準に合致しなくても、「長期間」拘留できるような項目を、出入国管理令の中に含めることをめぐっても、議論が交わされた。しかし、これはSCAPのニコラス・コットレルからみて行きすぎであったため、(彼もまた「朝鮮人破壊活動分子の危険性」を懸念していたにもかかわらず)この提案は「明らかに違法であり、まったくひどい」と批判した。
P.72 下段
コレアは、退去強制制度への司法の介入に強く反対し、裁判所が退去強制命令の発動に責任を持つべきだとする日本の当局者の提案を拒否した。
P.74下段
この法律は、1950年代という時代背景を考慮しても、イデオロギー性が強くて非現実的な、冷戦下の破壊活動に対する不安によって生み出されたものであった。(中略)この制度は、グローバルな移動の時代における日本の社会的・経済的ニーズに合致していないし、入国者の権利の適切な保護を約束するものでもない。戦後日本の出入国政策の根本的な見直しの機は、間違いなく熟している。
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