koichi_kodama
「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q1・2(収容部分)のいい加減さ・無責任さ

「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q1・2(収容部分)のいい加減さ・無責任さ

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今日、出入国在留管理庁が「そこが知りたい!入管法改正案」をリリースしました。

突っ込みどころがたくさんありすぎるのですが、収容関連について。

収容するか否かを裁判所が判断する仕組みを設けなかった理由として、・実際に収容を行う入国警備官とは別の上級の主任審査官が慎重に判断する・行政訴訟ができるので十分適正に行われると考えられます、としています。

監理措置は上級の入国審査が慎重に判断することとしている?

これ、今の法律と変わらないのですよ。今の法律でも収容令書を発付するかどうかは入国警備官の請求によって主任審査官が判断するのです。仮放免するかどうかも主任審査官または収容所の所長です。

あんたらの内部でやっているから公正さが期待できないと批判されているのに、いや、平社員が上司の決裁とってるから大丈夫ですなんて言い草通らないですよね。

さらに、2021年3月6日に亡くなった名古屋のスリランカ人女性の仮放免を不許可にしたのは、この「主任審査官」なのです。

行政訴訟ができる?

Q&Aは「退去すべき外国人は,収容されることに不服があれば,行政訴訟を提起して,裁判所の判断を仰ぐことができます。」としています。

行政訴訟の平均審理期間って、ご存じでしょうか。

15.7か月です!!!

助けて欲しけりゃ、1年4か月くらい裁判やれって言っているんですよね。

市民的、政治的権利に関する国際規約(自由権規約)9条4項は、逮捕又は抑留によって自由を奪われた者に対して,裁判 所がその抑留の適法性を遅滞なく決定し,かつ,その抑留が適法でない場合にはその釈放を命ずることができるように,裁判所において手続をとる権利を与えています。

ここでの抑留には、入管収容も含みます(以下の自由権規約委員会一般的意見35・「40」)。

15.7か月では、「遅滞なく」とはとても言えません。

で、刑事事件で勾留されると、知り合いがいなくても国選弁護人を選任する仕組みが制度上確立しているのですが、入管収容はそういう仕組みもないのです。

在留資格がないと、法テラスも使えません。総合法律援助法という法テラスについての法律は、適法在留外国人に対象を絞っているからです。

収容を争いたければ、自分で弁護士探して、自分でお金払うか、自分でやれと言っているのですよ。これは。

15.7か月かかる行政訴訟と同時にできる「執行停止」というのもありますが、執行停止で収容をストップできたのは、私が調べた限りではこの10年間で1件もないです。私、この分野はかなり詳しいつもりで論文も書いたりしていますので(以下の本の「第11章 行政事件訴訟法改正後の収容執行停止 児玉晃一」)、まず、間違いないと思います。

なので、入管の言っていることは

・平均15.7か月かかる裁判ができるよ

・この10年間で1件も認められなかった執行停止もあるよ

・弁護士は自分で探してね

・弁護士費用は自分で払ってね

・それが無理なら自分で裁判やってね

ということなんですよね。無責任。無責任。

2021年3月31日付の国連特別報告者による共同書簡によれば、恣意的拘禁作業部会による改定審議結果第 5 号、付属書、A/HRC/39/45には、

「出入国管理関連の理由による拘禁を含む 全ての拘禁は、それがどのような形態であっても、裁判官あるいはその他の 司法当局によって指示および承認されなければならない。」
「出入国管理関連の理由による被拘禁者は、速やかに司法当局のもとに連れてこられる必要がある。その収容が必要的、比例的、合法的、 非恣意的であり続けることを確保するため、その収容につき被拘禁者に自動的で定期的な審査へのアクセスが与えられるべきである。」

とあるとのこと。

この恣意的拘禁作業部会の改定審議結果によれば、事後的な行政訴訟や執行停止ではダメということですね。

収容の上限を設けることは適切ではない?

Q&Aでは、収容の上限を設けると、上限を超えた人全員の収容を解かなければならない、そうなると退去を拒み続けることを誘発し、退去強制がますます困難になる、としています。

あれ?

収容・送還に関する専門部会に入管が提出した資料によれば、少なくとも米・仏・独は収容に上限を設けていますよ?

これらの国では、強制送還できなくなっているのでしょうか?

入管の人に直接質問できる機会があったので、この3カ国では収容の上限超えた場合にどうなるんですか、当然調べているんですよね、教えて下さいと聞きました。

入管は回答できませんでした。調べていないんでしょうか?

事前司法審査がないのは国際標準から外れているのでは?

「アメリカ、イギリス、オーストラリア及び韓国においては、収容について裁判所が事前に判断する仕組みはないとのことでした。」

とあります。

でも、アメリカは収容期限の上限あるんですよね。

イギリスは事前判断の仕組みはないですが、裁判所による保釈制度があります。保釈申請は収容施設内からもFAXでできて、請求があったら3営業日以内に公開法廷で審理がされます。私も何回か傍聴しましたが、基本的にはその日に保釈するか否かの決定がされて、即日解放されているケースも見ました。

で、オーストラリアをあげて、「国際標準」といいますか!!

オーストラリアの入管収容制度は日本に良く似ていて、規約人権委員会から何度も恣意的拘禁であるとして自由権規約9条1項違反の指摘を受けています!こんなの比較に出して、国際標準に外れていないと言っている。恥ずかしい!

詳しくは、「判例紹介 難民申請者の全件収容と自由権規約 : オーストラリアの個人通報ケースをめぐって : A.自由権規約委員会 2013年7月26日見解,B.自由権規約委員会 2013年7月25日見解. 国際人権 : 国際人権法学会報. 2014. 25. 116-119)」参照。


韓国も事前司法審査は確かにないのですが、「日韓における外国人収容施設の比較検討」(呉泰成 2019)によれば、平均的な収容日数は15日間、難民申請者はその10倍ということで、日本より圧倒的に短く、入管当局による自制が働いているのでしょう。

上限がないのが国際標準?

Q&Aでは「イギリス,オーストラリア及び韓国においては,法律上の収容期間の上限はないとのことです。」としています。

ですが、イギリスでは、1983年12月13日のHardial Singh事件で、以下の原則が打ち立てられ、判例法上も確立しています。

1 所管大臣は、当該人物を送還することを意図しなくてはならず、また、その目的のためだけに収容を用いることができる。

2 被送還者は、あらゆる状況から見て合理的な期間のみ収容される。

3 もし、合理的な期間満了前に所管大臣が合理的な期間内に送還をすることができないときには、収容の権限を行使しようとするべきではない。

4 所管大臣は、送還を達成するためには、あらゆる注意と迅速さをもって行うべきである。

この事件では、1983年7月20日から約5か月間収容されていた外国人について、上記判断を示して、合理的な期間を超えるとして、解放を命じました。


また、イギリスの収容データがこちらに出ています。2019年で収容期間6か月未満が98%!

日本は2020年12月末現在、退去強制令書による収容をされている人の7割が6か月以上で全然比較にならないじゃないですか!

画像1

韓国では、2018年2月、 憲法裁判所の9名の裁判官中、5名の裁判官が期限のない収容の規定を違憲と判断しています(ただし、6名以上でないと違憲無効にはならないそうです)。

オーストラリアが参考にならないことは先に書いたとおりです。

一部のみ取り出しているのはどっち?

「そもそも,各国の出入国在留管理制度は,これを構成する個々の制度が相互に密接に関連し,制度全体で適切に機能するよう設計されており,制度の一部のみを取り出して日本の制度と比較することは適切ではありません。」

とあるのですが、今まで述べたとおり、イギリスなら事後的に迅速な保釈手続があって実際に6か月未満が98%であること、合理的期間を超えたら解放せよという確立した判例があることを取り上げず,事前の司法審査がないことと上限が法定されていないことだけを取り上げています。

韓国憲法裁判所で、上限がないのは憲法違反としたのが多数を占める判決が出たとか、日本に似ているオーストラリアの収容制度が何度も恣意的拘禁としてダメ出しされていることも言及無し。

制度の一部のみを取り出して比較するのが適切ではない、という言葉は、そのままお返ししたいです。

アメリカの制度が手本?

Q&Aでは、「なお,日本の入管法は,戦後,出入国の管理を目的として制定され,その体系を維持して現在に至っているものであり,アメリカの法制度を基礎としているものです。」とあります。

どういう趣旨かわかりませんが、制定過程でも恣意的拘禁であるという指摘がされていたことは以前以下に書きました。



以上、Q&Aの書いていることは全く理由になっていないことがお分かり頂けたのではないかと思います。



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東京生まれ、ほぼ東京育ち。早稲田大学卒。1994年弁護士登録。2009年から代々木上原で法律事務所経営 http://milestone-law.com/ Photo by Kanako Baba