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入管の精神科嘱託医が拘禁性うつ病で仮放免相当と意見を述べたのに仮放免不許可にしたのを違法と判断した裁判例


入管に定期的に来ている精神科の嘱託医が、仮放免すべきとの所見を述べたのに無視して仮放免を不許可にした事件で、平成30年8月28日東京地方裁判所は仮放免不許可処分を違法と判断しました(東京地方裁判所民事51部。清水知恵子裁判長)。判決は国側の控訴なく、一審で確定しました。

精神科の医師が拘禁性うつ病で仮放免相当という意見を出したのに無視した事例で、ウィシュマさんのケースとの類似していますよね。全然教訓にしていないのですね。


11頁1行目以下

「同月2 8日に実施された3回目の診察において,原告の精神状態は悪化してお り,原告を仮放免により出所させることが望ましいと判断し,診断後に おける処遇担当職員との打合せにおいてもその旨の意見を述べた。」

13頁5行目以下

「さら に,J医師は,3回目の診察(平成29年3月28日)において,原告 の症状につき仮放免を相当とするものであると判断し,処遇担当職員に対しても同旨の意見を述べているところ,こうしたJ医師の診断や意見 は,原告が訴える心身の不調の内容や程度はもとより,原告の収容が同10 日の診察時点で既に収容開始後約1年8か月という長期にわたっていることや,原告が過去に本件自殺未遂行為を行っていることなどの事情を踏まえ,原告が収容されていることそれ自体がうつ病の主たる原因とな っており,その治療のためには,原告を収容から解放することが必要かつ相当であるとするものと解される。」

14頁10行目以下

以上のとおり,原告については,本件処分時において,仮放免をするか否かの判断に当たり不利な情状として考慮される上記(1)イの事情が存することは否めないものの,他方において,上記(2)のとおり,拘禁性うつ病に罹患しておりその治療のためには収容を解くことが医学的に見て必要かつ 相当であったと認められるから,病気のために収容に耐え難い状態であったと評価されるものであり,人道的配慮の観点から身柄の解放を相当とする場合に当たると認めるのが相当である。そうすると,原告については, 不利な情状である上記(1)イの事情を踏まえても,上記のとおり人道的配慮 の観点から身柄の解放を相当とする場合に当たることを考慮して,仮放免をすべきものであった。それにもかかわらず,東日本センター所長は原告につき仮放免をしない処分(本件処分)をしたのであるから,このような同所長の判断は,全く事実の基礎を欠き,又は,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきであり,その裁量権を逸脱し又はこ れを濫用したものといわざるを得ず,本件処分は違法というべきである。

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